@_h_japan さんの「自殺率の規定要因分析」

@_h_japanさんの「自殺率の規定要因分析」研究ツイートのまとめ。 かなり詳細に研究プロセス・結果を記述なさっています。   (関連まとめ) 清水康之さんの自殺対策支援活動:http://togetter.com/li/72533
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h @_h_japan

長期成長率と失業率の交互作用を入れると、失業率の変化率は非有意となり、左記交互作用は5%有意に正となる。つまり「日韓のような高度成長経験社会では、失業が自殺に結びつきやすい」ことが示された。またそれとは独立に、住宅補助給付と積極的労働市場政策支出が0.1%有意に自殺率を抑制した。

2010-10-27 00:55:33
h @_h_japan

この研究の新たな貢献は、「高度成長経験社会では(さまざまな社会保護制度が未整備のため)失業が自殺に結びつきやすい」ことと、「積極的労働市場政策だけでなく住宅補助も自殺を予防する」ことを、示したことだろう。

2010-10-27 01:01:51
h @_h_japan

重要なのは、前者(高度経済成長による社会保障制度の遅れ)の効果と後者(住宅補助・積極的労働市場政策)の効果が、独立しているということだ。日韓のような高度成長経験社会にあっても、住宅補助・積極的労働市場政策などのピンポイント社会政策で、自殺率は下げることができそうだ、ということだ。

2010-10-27 01:06:17
h @_h_japan

なお金子ほか(2004)は、「自殺率の減少が日本の経済に与えるプラスの経済効果」を試算している(http://bit.ly/bXBjy9)。しかしほんとうに経済効果があるのかどうかは疑わしい。むしろ注意すべきは、「自殺した人と親しかった人々」に刻印される悔やみや悲しみではないか。

2010-10-27 01:16:21
h @_h_japan

「自殺した本人の苦悩」とは別に(なぜなら自殺によってその苦悩は消えるとも言えるから)、「残された人々が抱える(傾向がある)苦悩」を考えれば、社会政策で防ぎうる自殺は、防ぐべきではないか、と思っている。その社会政策は、同時に、本人の苦悩を軽減させる方向にもつながるだろう。

2010-10-27 01:21:45
h @_h_japan

「パットナム的ソーシャルキャピタル」と「自殺率」との正の相関は、高齢者率などによる擬似相関かもしれないけれども、果たしてそうなのかどうか、検証する価値があると思う。誰かやってくれないものか・・。日本の都道府県別ソーシャルキャピタル指数のデータとかあればぼくでもできるのだけど・・。

2010-10-30 11:06:57
h @_h_japan

かなり前のツイートだけど共感してRT。 RT @poe1985 日本もヨーロッパみたいに20代のうちは失業状態が当たり前で、教育と労働の世界を行ったり来たり、その中でギャップイヤーとして世界一周してきたり、そういうのが当たり前の社会になればいいんだけどね。

2010-11-09 23:32:34
h @_h_japan

で、さきほどのRT(20代のうちは失業状態が当たり前な社会)に関連して。先日の学会で発表した分析結果によると、失業率の短期的上昇は自殺率の短期的上昇につながるけど、その効果とは独立に、失業率が安定して高い社会では自殺率が低いんですよね。このパラドックスはどう説明できるかというと→

2010-11-09 23:55:19
h @_h_japan

→失業がありふれた社会では、失業が社会心理的プレッシャーにならずに、自己叱責や抑鬱に(比較的)結びつきにくいのだろうと思います。ただしいずれにせよ失業率短期上昇は自殺率短期上昇に結びつくので、「失業率が高くて変動が少ない社会ならば、自殺率は安定的に低いだろう」と言えそうです。

2010-11-10 00:22:22
h @_h_japan

ちなみに、失業率と失業率短期上昇率との(自殺率への)交互作用が気になったので、検定してみたら、(この文脈では不要な長期経済成長率という変数を除いた場合)p>0.1で非有意でした。つまり、失業がありふれた社会であっても、失業率の上昇は自殺率の上昇につながる。安定が大事なんですね。

2010-11-10 00:30:16
h @_h_japan

そうですね、特に上昇は自殺率を上げるようですねえ。ベックさんの妻ベック‐ゲルンスハイムさんに学会発表の概要を話したら、「圧縮近代はアノミー的なのね…」といったようなご感想でした。RT @tasano 失業率の短期上昇のお話、デュルケームのアノミー型自殺を連想させますね。

2010-11-10 01:00:04
h @_h_japan

来週、とある研究会で研究発表をさせていただけることになってるので(しかももう一人ご発表される先生は政治思想でとても有名な大先生…)、いろいろ追加分析をしている。データをいろいろ追加できたおかげで、いろいろ分かってきた。→

2010-11-21 02:24:02
h @_h_japan

→年金・積極的労働政策・住宅補助は自殺率を下げ、家族支援支出は自殺率と正の関係。①貧困家庭の多い社会では自殺率が高いのか、②家族を国がケアすれば親は自己本位的自殺をしやすくなるのか。①は、家族支援支出と相対的貧困率が負の相関-0.73を得ることから否定される。よって②が残る。→

2010-11-21 03:22:15
h @_h_japan

→②以外の説明ができないなら、②は家族支援支出の意図せざる結果だ。公的家族支援が親の自己本位的自殺を許してしまうのかもしれない。

2010-11-21 03:23:31
h @_h_japan

積極的労働市場政策にプラスなのは労組率、マイナスなのは左翼政党の短期的議席率。住宅補助にプラスなのは(少数者の声を反映しやすい)比例代表制、マイナスなのは労組率と左翼政党長期議席率。左翼政党は年金や家族支援といった普遍主義的ケアにプラスだ。小選挙区制(多数派反映)も年金にプラス。

2010-11-21 03:34:36
h @_h_japan

概して、左翼政党や小選挙区制(多数派主義)は、年金や児童手当などの「普遍的」公的ケアを実現している。対して、労組や比例代表制(少数派主義)は、失業者向け職業訓練(アクティベーション)や貧困者向け住宅補助などの「特殊的」公的ケアを実現している。これが今日の分析から分かったこと。

2010-11-21 03:51:00
h @_h_japan

これを来週の研究会で発表することにしよう。ちなみに、政治学と社会学の違いは、おそらくクリアだ。政治学は現政策状況の原因を権力アクターと政治制度に求める。社会学は権力アクターや政治制度が形成されてきた長期的な歴史的過程を明らかにする(とりわけ意味論的に宗教に着目したり)。

2010-11-21 03:56:40
h @_h_japan

ちなみに、人類学は、その「宗教」が、どのような交換構造や親族構造によって成立しているのかを、明らかにしている気がする(トッドとか)。なので、政治学→社会学→人類学、という順で、社会現象のより深層へと潜っていくような気がする。どれも面白い。

2010-11-21 04:01:12
h @_h_japan

ちなみに、経済学はそれ以前の思考プロセスであって、経済学で説明できない「非合理」な社会現象を、政治学・社会学・人類学が説明しようとしているのだと思う(間違ってるかもしれないけど・・)。やはりどれも面白い分野だと思う。

2010-11-21 04:05:07
h @_h_japan

やっと今週末の研究会のための分析が終わった・・。明日は理論的な結論を書こう。しかし、米国でのソーシャル・キャピタルと自殺率の正の相関は、年齢調整自殺率で見ても、あまり散布図が変わらなかった。どうやら年齢による擬似相関は小さそうである。気になるところだ。

2010-11-23 03:09:06
h @_h_japan

たとえば、他者信頼度の高い国では自殺率が低いが、それと独立して、「悲しい気持ちになることが多い」と答える人が多い国でも、自殺率が低いのだ。> http://www.springerlink.com/content/e457837r1272u87r/fulltext.pdf

2010-11-23 03:12:15
h @_h_japan

「悲しい」という気持ちを抑圧しない社会、つまりローテンションな社会では、自殺率が低いのである。これは、「市民活動などのソーシャル・キャピタルが活発な社会では自殺率が高い」ということと相似的だと思われる。

2010-11-23 03:15:48
h @_h_japan

なお、隣人関係が豊かな社会では、自殺率が低い(http://bit.ly/aclsi6)。「市民活動」と「隣人関係」は別モノだ。隣人関係はローテンションでもOKだ。しかし市民活動は大きな団体になればなるほどハイテンションが求められる。

2010-11-23 03:19:41
h @_h_japan

公的福祉支出や他者信頼感やローテンションな隣人関係は、自殺率を下げる。他方で、ハイテンションな地域活動・団体活動は、日常における「悲しい」という素直な気持ちを抑圧するとき、自殺率を高めてしまうだろう。真に幸福な「コミュニティ」とは何か。コミュニタリアンな風潮のいま、重要な問いだ。

2010-11-23 03:25:09
h @_h_japan

昨夜寝る前に読んだら気になって寝るのが遅くなってしまった論文。p.485のTable.VIIの右半分が結論。50ヵ国で、自殺率に対して、市民団体参加・失業は非有意で、他者信頼・政府信頼・信仰・緯度(寒さ)は有意に正、離婚は有意に負。やはり市民団体よりも他者信頼・政府信頼が大事だ。

2010-11-23 12:27:52
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