「なに言ってるの一くん。 今日は豆腐の日なんだから、それでいいんだよ」 総司は冷蔵庫からたまごを取り出しながらにやにやしている。
2014-10-02 22:56:11「そう。10月2日は、豆腐の日。朝からメールで教えてあげたでしょ」 「!!」 あの妙な文字が、豆腐だというのか。
2014-10-02 22:56:35「さすがに湯豆腐だとちょっとつまらないかな、と思ってすき焼き。 一くんの好物の豆腐はいっぱい用意してあるから、どんどん食べて。豆腐を」
2014-10-02 22:56:59「沖田さん、やっぱりちょっと多すぎるような気がします」 そう言って振り向いた千鶴の向こうには、山と積み上げられた未開封の豆腐が見えた。
2014-10-02 22:57:37鍋をつつき始めた平助と総司にその声は届かず、俺は千鶴を招き寄せて、取り皿によそってやった。 「明日は湯豆腐だな……」 俺の呟きに、平助が形相を変える。
2014-10-02 22:57:54「ちょっと一くん、早く豆腐取ってよ。 肉を入れるスペースがないじゃない」 総司が箸で豆腐を寄せ、空けた部分に牛肉を押し込み始めた。 「待て、豆腐を入れると温度が下が……」
2014-10-02 22:58:42俺の言い分が通ることもなく__、 俺の取り皿に盛り上げられた豆腐を口に運ぶと、 さすが千鶴が手直ししただけあって、しっかりと味がついていた。
2014-10-02 22:59:15「あ、一くんがにやにやしてる」 平助が俺を見て、自分もにやにやとする。 「みんなで食べると、美味しいですね」 千鶴の嬉しそうな笑顔を見ていると、こちらまで笑みが浮かぶ。
2014-10-02 22:59:30「やっぱり豆腐入れすぎたね」 総司のその台詞は聞き捨てならない。 俺は豆腐がいかに優れた食材であるかをこんこんと説明し、
2014-10-02 22:59:51味がないようで、味わい深い豆腐は、人間関係の始まりを形にしたもののようにも思えてくる。 俺の豆腐に対する情熱は、次の機会に譲り、今はこの楽しいひと時に酔いしれようと思う。 (了)
2014-10-02 23:01:20