とうふの日

綺羅さん(@kiraboshi219)による薄桜鬼の創作小説第17弾。 更新しました。 第1弾「黒と白~斎藤一~」http://togetter.com/li/587101 続きを読む
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🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

違和感を覚えて、煮え立つ鍋を凝視すると、 鍋の半分を占めているのが豆腐だと気付く。

2014-10-02 22:55:47
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「総司、豆腐が多すぎるのではないか。 もっと他の具材もバランス良く入れるべきだろう」

2014-10-02 22:55:59
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「なに言ってるの一くん。 今日は豆腐の日なんだから、それでいいんだよ」 総司は冷蔵庫からたまごを取り出しながらにやにやしている。

2014-10-02 22:56:11
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「豆腐の日?」 首を傾げると、総司が俺の手のひらにたまごを乗せて、席につくように促した。

2014-10-02 22:56:25
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「そう。10月2日は、豆腐の日。朝からメールで教えてあげたでしょ」 「!!」 あの妙な文字が、豆腐だというのか。

2014-10-02 22:56:35
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「さすがに湯豆腐だとちょっとつまらないかな、と思ってすき焼き。 一くんの好物の豆腐はいっぱい用意してあるから、どんどん食べて。豆腐を」

2014-10-02 22:56:59
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「うまそうだな、でもこれ総司の味付けなんだよな」 「さっき千鶴ちゃんが調整してくれたから、大丈夫だよ」

2014-10-02 22:57:14
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「沖田さん、やっぱりちょっと多すぎるような気がします」 そう言って振り向いた千鶴の向こうには、山と積み上げられた未開封の豆腐が見えた。

2014-10-02 22:57:37
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

鍋をつつき始めた平助と総司にその声は届かず、俺は千鶴を招き寄せて、取り皿によそってやった。 「明日は湯豆腐だな……」 俺の呟きに、平助が形相を変える。

2014-10-02 22:57:54
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「えっ、そんな味気ない!」 「平助くん、うちに美味しいぽん酢があるから、それ使ってみたら?」

2014-10-02 22:58:11
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「ちょっと一くん、早く豆腐取ってよ。 肉を入れるスペースがないじゃない」 総司が箸で豆腐を寄せ、空けた部分に牛肉を押し込み始めた。 「待て、豆腐を入れると温度が下が……」

2014-10-02 22:58:42
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

俺の言い分が通ることもなく__、 俺の取り皿に盛り上げられた豆腐を口に運ぶと、 さすが千鶴が手直ししただけあって、しっかりと味がついていた。

2014-10-02 22:59:15
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「あ、一くんがにやにやしてる」 平助が俺を見て、自分もにやにやとする。 「みんなで食べると、美味しいですね」 千鶴の嬉しそうな笑顔を見ていると、こちらまで笑みが浮かぶ。

2014-10-02 22:59:30
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「やっぱり豆腐入れすぎたね」 総司のその台詞は聞き捨てならない。 俺は豆腐がいかに優れた食材であるかをこんこんと説明し、

2014-10-02 22:59:51
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

やっと総司を納得させてから口にした肉は、火が通りすぎて、すっかり固くなっていた__。

2014-10-02 23:00:23
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

大切なひと、仲間と過ごす時間はかけがえのないもの。 俺の好物を覚えてくれていたことが、本当は何より嬉しかった。

2014-10-02 23:00:49
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

味がないようで、味わい深い豆腐は、人間関係の始まりを形にしたもののようにも思えてくる。 俺の豆腐に対する情熱は、次の機会に譲り、今はこの楽しいひと時に酔いしれようと思う。 (了)

2014-10-02 23:01:20