魔の階 最終対話 『豪奢なる広間の場』

左右と中央、三本の上り階段から繋がる場。ありとあらゆる贅を尽くされた調度の並ぶ広間に、動くものはただ三人。
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《狼》ウィス @StairwayWis

「私情の約束を守ってお前が《蠍》を殺して他の『烙印』も殺して『魔王』になった後。お前と《蠍》のその繋がりは何になる?」「私情、感情に流された奴が五人を殺して『魔王』になったからといってそれに左右されないと言い切れるのか。お前の周りには誰もいない孤独しかない中で言い切れるのか?」

2014-10-20 00:01:39
《狼》ウィス @StairwayWis

「初めての友人だと言ってたけど」月は赤を見たまま逸れもしない。「初めての友人を手に入れた。それを殺した。『魔王』になった独りに戻ったそのあとに、お前が『友人』を求めて感情に屈する可能性を考えれば、俺はお前には任せられない」月は丸く赤を見据える。 「感情が無駄とは言わない」

2014-10-20 00:04:25
《狼》ウィス @StairwayWis

「だけど感情に左右されるのであればそれを手段として扱えないも同然だ」 「《蝙蝠》が人間ならそれで良いと俺は言う」 「《蝙蝠》が《蠍》との約束を『選定』に関わる条件だと言ったのなら俺はお前に任せて降りても良かった」 「だけどお前は、自分に制御出来ないものがあると公言したんだ」

2014-10-20 00:06:37
《狼》ウィス @StairwayWis

「『烙印』を殺して土台にすることは、お前が言うように『約束があるから殺す』のであれば結果でしかないと俺は考える。俺は、《狼》は、お前の私情の道連になるつもりはない」 「感情は無駄じゃない。考える事も無駄だとは言わない。ただそれに固執しているところを見て、任せようとは思えない」

2014-10-20 00:12:54
《狼》ウィス @StairwayWis

「俺が《蝙蝠》から聞いたのは、『魔王』になれば《蠍》を殺してやれるから、だ」 「……俺が聞き逃してたのかもしれない。でも、お前、一度も『魔王』になるから《蠍》を殺す、とは、言ってないんじゃないか」

2014-10-20 00:15:54
《蝙蝠》音成カイ @teudev

「どうして他に友達を求めることになるんだ?」 月を受けて赤がまばたく。 「魔王となること。魔王であること。そうなることと感情の利害として一致していたから約束できた。実行可能だと思わない約束はしない。そうあり続けられる自信がなければ魔王となる意思を示すこともない」

2014-10-20 01:27:36
《蝙蝠》音成カイ @teudev

「魔王になると約束をした。約束した以上俺は生きているかぎり魔王であり続ける。逆にいえば固執しなければ魔王であり続けられないがその感情の固執を揺らがせられるとしたら《蠍》ただ一人だ。ああ、これは俺が他に友を求めないと言い切れる理由の答えにはなるか?」

2014-10-20 01:29:59
《蝙蝠》音成カイ @teudev

「アガルを殺すことは烙印の持ち主を殺すことだ。魔王となることは魔王であり続けることだ。思いいれを抜きにすれば優先度は全部同じラインの上にある」 右手の指先が弦を押さえるようにあごを触れる。 「アガルを殺すために魔王になるのも、魔王になるためにアガルを殺すのも同じことだ」

2014-10-20 01:31:58
《蝙蝠》音成カイ @teudev

「──魔王となれば意思にもとづいて魔王となりただ役割としてこなすだろう。だがそうあれるという心の確信を伝えるすべが俺にはないな。俺の魔王であろうとする意思はすべて感情から来ている。俺の経験の中で築き上げてきた俺自身の確信でしかないからだ」 視線を上げた。

2014-10-20 01:36:39
《蝙蝠》音成カイ @teudev

「どんなに俺に確信があっても伝えられないならば証明できないのとかわらないな」 首をゆるく左右に振った。 「方法が異なるだけで二人のどちらにも魔王であれる力があると思っている。俺はどちらのやりかたでも構わない。おのおのの方法でうまくやるだろう」

2014-10-20 01:47:21
《蝙蝠》音成カイ @teudev

「アガルを……《蠍》を俺と共に殺すならばその時には最初に殺してほしい。五人のうち一番最初に、なるべく苦しくないように。あいつは自分の死ぬ順番を待てないといっていた。まして俺の死に際など見たくないだろうから」

2014-10-20 01:53:30
《狼》ウィス @StairwayWis

目を伏せる。向けていた目を閉じる。自然口が笑った。 「そういうのが聞きたかったんだよ」息を吐き出す。目を上げる。《蛇》と《蝙蝠》の二つを見た。「俺は二人が俺より優れて『魔王』に相応しいとは思わない」「だからって俺より劣って相応しくないとも考えない」背後のテーブルに腰掛ける。

2014-10-20 02:09:33
《狼》ウィス @StairwayWis

「この場で証明しろとは言えないな。俺自身にできない事を要求するつもりはないし俺は全ての証明と満了は『魔王』として死んだ時にって思ってるからな」腰掛けたテーブルの上では足が浮く。片膝を持ち上げてテーブルの上に立てる。その上に頬杖をつく。 顔は笑っていただろう。

2014-10-20 02:11:56
《狼》ウィス @StairwayWis

「《蝙蝠》が抱えたそれに振り回されてないんだったら」息を吸い込む。「《狼》は《蛇》も《蝙蝠》も認めると宣言する。どっちも俺の要求とヤチの欲求両方満たしてくれそうだしな」《狼》が殺す事が『約束』の主眼ではない。『魔王』が憎めばとあの夜の空の色をした花は言った。

2014-10-20 02:14:28
《狼》ウィス @StairwayWis

「だから後は二人のそれだな。俺は降りるとは言わないけど認めるとは言った。二人が誰を認めて誰が『魔王』になるかだ」『烙印』が認めれば道は開く。「出来れば俺は自分で約束を満了したいけどそれは俺の欲やらの話でヤチの求めるものとは違うしな」 「さて。どうする?」声すら笑っていただろうか。

2014-10-20 02:19:35
《蛇》 @SatanaDio

「さてはて、これは平行線かな」 二人の問答を肴にワインを飲み干す。グラスから垂れた一滴を舐めとり、そうだね、と頷く。 「私も降りるとは言えまい。だが、二人の確かな決意は認めよう。──これを認めずして、とも言うがね」 緩やかに酒気を帯びた息を吐く。

2014-10-20 03:29:35
《蛇》 @SatanaDio

「カイ。もしも私が《魔王》となった暁には、《蠍》を最初に殺すコトを……そうだね、約束しよう」 柔らかに口元を歪ませる。笑い声は立たないが、それは確かな微笑み。

2014-10-20 03:34:26
《蝙蝠》音成カイ @teudev

上がった月色にシグナルレッドが見開いた。熟考から呆けたように顔の輪郭がゆるむ。 「……これまでずいぶんと的外れな答え方をしていたようだ。すまないウィス、感謝する」 《狼》の笑みに眉を下げた。あご先に当てていた手がマフラーをわずかに下げる。のぞかせた口元の微苦笑。

2014-10-20 13:10:25
《蝙蝠》音成カイ @teudev

「ウィスに人間を導く力が確かにあると感じている。お前が今俺にしたような誘導を始めとしてだ」 月から深緑へ。 「ディアは人間の欲のありようも知っているのだろう。人間の意図を読み拾う分だけ誘導を行える」 深緑から月へ。

2014-10-20 13:16:20
《蝙蝠》音成カイ @teudev

「役割を受ければ果たすだろうことも確信できる。《狼》と《蛇》のどちらも認めている」 交互。 「俺は同じようにはできない。できないが、それも知りたい。知って俺なりに使いたいと思った」

2014-10-20 13:18:23
《蝙蝠》音成カイ @teudev

「二人の知る全てなぞることは無理だろう。だが俺はお前たちがそれを得た過程もそのなかで知った視野も知りたい」 思考に赤が空中と瞳を揺れるように行き来する。 「これからのことだ。魔王として人間を眺めながらそれをしていくことになる。だがそうすれば全員の願うかたちに近づけられるかと」

2014-10-20 13:33:22
《蝙蝠》音成カイ @teudev

「すべて引き受けたい。何を使ってでも成し遂げる。やってみるんじゃあなく、やると」 焼けおちる蝋燭のリタルダンド。消えてくすぶる煙の残った空気を吸う。 「そのやり方が赦されるのであれば──俺を魔王にさせて欲しい」 顔を上げる。拳に力がこもる。二人を正面にすえた。

2014-10-20 13:35:24
《蛇》 @SatanaDio

「人はほんの少しの時間で、眼を見張る成長をするのだね」 片の深緑が弧を描く。柔らかな高音は優しく言葉を紡ぐ。 「──なれば、カイ。《蝙蝠》の烙印を持ちし少年」 『少年』という響きにどこかからかいを含ませながらも、《蛇》は赤を真っ直ぐ、見詰める。

2014-10-20 13:49:16
《蛇》 @SatanaDio

「私は一つ、注文を付けよう」 いいかね、とは問わない。ワイングラスを揺らし、中で揺れる深紅越しに、見詰める。 「《欲の宴(これ)》の似合う魔王になってくれたまえ」 そうでなくては、殺されてやる訳にはいかないなぁなどと、まるで嘯くように囁き笑う。

2014-10-20 13:49:26
《蛇》 @SatanaDio

「私は私の《欲》と、彼女の《宴》を少年に託そう」 ──有効活用してくれたまえ。 そう言い足して、月に視線を向ける。 「さて、《狼》。貴方は?」 肩を竦め、ワイングラスを揺ら揺らす。

2014-10-20 13:49:30
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