ラバウル少佐日誌:狂信者と殺し屋編エピローグ

艦これ二次創作小説です。 一部艦娘のキャラ崩壊・過去捏造注意です。
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檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

スィフィルライアル村は静寂に包まれていた。 いや……。 正しくは、 昨夜の惨劇を以て、沖の海中へと居を変えたスィフィルライアル村は、真の滅びを得たといった方が正しいだろう。 (2)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 22:31:47
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

そう、数年前に、この浜辺にあった村は打ち捨てられたのだ。 今は朝潮と名乗るかの少女が村を去って1年も経たぬ内に、深海棲艦と人間との戦いの渦中に呑まれたこの村は滅びの危機に瀕した。 たかが海賊達に艦娘を倒せる訳も無く、生業が成り立たなくなってしまったのだ。 (3)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 22:50:06
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

村はたちまち貧困の底辺に陥り、飢餓地獄と化した。 輸送船を守る艦娘達は、確かに先進国の人々にとっては命を繋ぐ救世主であった事だろう。 だがこの発展途上国の孤島、海賊業で何とか日々の暮らしを立てていた一寒村にとっては、打ち倒すべき神獣に等しかったのだ。 (4)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 22:57:10
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

そんな時であった。 村の浜辺に、真白な肌をした女が流れ着いたのは。 (5)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 22:57:55
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

――――――あれから数年が経ったこの村に、一人の女が未だ住み続けていた。 彼女は村が海中へ引っ越した数年前のその日、運悪く置いて行かれた祈祷師の娘であった。 彼女は成長して魔女となり、そして昨晩までずっと、捨てられた村から沖を見守り続けていた。 (6)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 23:05:28
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「私はこの村を、滅ぼしたようなものね」 後ろから声が聞こえた。 魔女はこの声の主を知っている。 数年前に村の男達が間違えて襲った、日本の修学旅行生の乗っていた船。 その場で海賊への仲間入りを選び、乗っていた全ての人間を殺した、悪魔の少女……。 (8)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 23:11:54
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「アサシオ、だったっけ?今の名前」 「聞いてたのね……」 「そりゃまあ、あれだけ派手に暴れてたら、聞こえるわよ」 「変でしょ?」 「ううん、かっこいいじゃない」 二人は海の彼方へ視線を向けながら話し続ける。 魔女は、朝潮の方を振り向かない。 (9)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 23:14:23
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「呪いがやっと解けたような気分よ」 「あなただけ深海棲艦にならなかったのは、どうして?」 「タイミングが悪かったの。こっちに置いてかれちゃって」 「そう……」 朝潮も、彼女の前へわざわざ回り込む事もしない。 (10)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 23:17:08
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「あんまり思い詰めないで。私だって村の奴等に疎まれてたワケだし」 「これからどうするつもり?」 「さて、どうしようかしら。エジプトにいるっていう母さんの師匠を頼ってみようかなって思ってる」 「あなたは心が強いわね」 「それだけ多くの死を見てきただけよ」 (11)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 23:22:56
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「何!?今お前何と言った!!?」 二人の間へ無粋に割り込んできたのは、先日の昼に朝潮が吹き飛ばした筈の少佐であった。 「エジプトに師匠がいるといったか!」 魔女は、朝潮の方へ妙な表情を浮かべて振り返った。 「お前まさか、ブードゥーの呪術に詳しいのか?」 (12)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 23:47:44
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「アサシオ……?」 「今の新しいボスよ。ホンモノの魔術師みたいで、何回殺してもケロっと生き返るの」 魔女はゲンナリとした表情で、少佐へ向き直った。 「何がお望みで?」 「そのエジプトの師匠とやらを紹介してはくれんか?ミイラ粉の取引を問屋無しでしたい!」 (13)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 23:52:17
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「……長旅になるでしょうね」 「大丈夫だ、私は日本海軍の少佐であるが故な。多少の道理、無理で動かせない事も無い……!そうと決まればだ、朝潮!」 「は、はいっ!?」 きょとんとした目で、朝潮は少佐を見上げる。 (14)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 23:55:34
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「紅海を上り、スエズを目指すぞ……!そこから陸路でカイロへ至り、情報を掻き集めるのだ!」 「しかし提督、とってある有給はあと2日しかありません」 朝潮と少佐の間に割って入った大淀が、ずれた眼鏡を直しながら神妙に進言した。 が。 (15)#ラバウル少佐日誌

2014-11-10 00:03:30
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「何が欲しい?」 「リビアングラスとアラバスターを」 「良かろう」 「やったぁ!」 はしゃぐ大淀。 「宝石趣味とか見た目以上にババ臭いわね、アンタ」 愚痴る五十鈴。 (16)#ラバウル少佐日誌

2014-11-10 00:06:55
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「そういう事だ、すまんな荒潮。もう少しだけ旅行は続くぞ?」 「私、もう疲れちゃったのにー」 和気藹々と話し合う三人を、朝潮と魔女は少しばかり笑った。 「今度のボスは良い人そうね、アサシオ」 「どうかしら。人を疑って掛かる癖があるのよ」 (終わり)#ラバウル少佐日誌

2014-11-10 00:12:03