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kj8mousooo
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85 驚いた顔の私に、 『…ただいま』 無愛想に佇む彼。 「…お、おかえり」 バタッ! 机の上に置いたそれ 「何これ…」 『いいから、ほら…』 開けてと、顎で示されて、 そっとそのケースを開ける。 「っ!!」
2014-10-17 15:30:58![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
86 「……え」 そこには 私の大好きな バイオリンが入っていた。 「……ありがとう」 泣目で笑った私に pic.twitter.com/7QiyW1SdCE
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87 照れたようにそっぽ向く彼。 彼のことを少しずつ… 少しずつ知れてきた 『……おん。』 きっと 彼は 不器用な親切屋ーーー pic.twitter.com/jnHV3NJMgr
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88 『弾いてみれば…?』 「…でも」 『こんな森の中、俺以外誰も聞いてへんて…』 「……そうじゃなくて」 なんでこんなことしてくれたの? そう聞いても、彼は何にも言わないだろうと感じ取って 久々にバイオリンを肩に乗せる
2014-10-21 15:56:33![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
89 弓を引くと、大好きな音。 〜〜♪〜♩ 心地よい空間 あのね… 背筋が自然に伸びて 音が身体を包んで… そんなバイオリンを弾いてる私が 1番好き。 『……ええ曲やなぁ』 頬杖つきながら微笑む貴方は そんな私を 『…楽しそうやな』 わかってくれた
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90 そんな貴方が愛しくて …愛しくて 弓を下ろすと小さく手を叩く彼 そんな姿が恋しくて 「好き…」 全部置いて彼の元に行く。 「……好きなの」 いずれか逃げて行ってしまうかもしれない。 でも、それなら今だけ 今だけでいいからと
2014-10-21 15:56:42![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
91 ーーー力強く抱きしめた いらないなら離して。 そしたらもう2度と会いに来ない 全部ここのことも、 貴方のことも忘れるわ。 早く…… 止まらなくなるよ… 突き放されたらもう… 全部ーーーー
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92 『……俺も…俺もやねん』 「…え」 強張った背中を 優しい手が包む 『…お前』 段々と背中が熱く きつく 『…でも…俺いつどうなるか……覚悟あんのか?』 ……そんなの 「だって…もう……手遅れよ」 もう貴方に溺れてるのーーー
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93 私はその夜、 初めて彼に 〝抱〟かれた 彼と交わしても熱くて痛くて そんなSEXじゃなくて 暖かくて…心地よくて 「ん…ゆぅく……ぁっ」 『はぁ……はぁ…すき…痛ないか?』 「私も好きよ…」 pic.twitter.com/e2EERmKH5e
2014-10-23 13:51:22![](https://pbs.twimg.com/media/B0myzvWCMAAepvI.jpg:medium)
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95 ーーー森の中でふたりっきり まるでこの世界でふたりきり そんな気持ちで過ごしていた 「裕くん!何してるの??」 『……何って』 「それ何…?」 『これ…お花摘んできてん!』 だんだんと彼の心が見えてくる pic.twitter.com/TqzCk9NBjN
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96 『このご飯硬ない…?』 少し細かくて 『俺のプリンしらん?』 少しケチで 『もう…眠いねんてばぁ』 少しわがままで 『おっぱい…やらかいな♡』 すんごくエッチで 『……そこ、危ないで。こっち来てみ』 ほんのり優しい
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98 「…そこ、ちょっとどいて〜」 少し強引で 「こんなんでいいでしょ?」 少しガサツで 「ネクタイ!新しいのにしなよ!」 少しお節介で 「……すき」 ものすごく素直で 「………おやすみ」 そして何より優しくて愛おしい 『…幸せって俺でも感じれんねやーーーー
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99 ーーそんな些細な日々の中 俺は1人道端を歩いていた すると目に入った紙切れのたば 『…音楽……コンクール』 そこには、昨年の入賞者の写真と 今年の募集の要項が書かれていた それを一枚とって 折りたたんでポッケにいれるーーー
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100 彼女side 「…なにこれ」 『いや…、今年もでるんちゃうかなって思って……ほら、ここお前載ってるで』 封じ込めていた思い出が ーー〝所詮2位なのね〟〝まぁ、お前はそんなとこだもんな〟 振り返してくる 「…もう、出れないよ」
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101 『でも…大切な…』 「どうせ1位にはなれっこないし。 今更家族のために涙を流すのも嫌… そもそも…音楽に順位なんてつけられるの嫌いなの…」 吹っ切れた声で言うクセに 「……もう1年か」 名残惜しそうに去年の自分をみて 一つため息をつく。
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102 『……』 彼女の見えなかった心が ーーー見えたような気がした 『…まぁ、それでええならええんちゃう』 「うん…」 彼女はきっと ーーー踏み出せずにいる pic.twitter.com/BynPF81H4H
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103 彼女side 少しモヤモヤした気持ちを抑えながらも 家事をして、少しバイオリンを手にして ……そして昨日の紙切れを手にする 1位をとるのは夢だった。 唯一私を認めてもらえる手段で。 お母さんだけじゃない。 みんなが、いつか 私の音を認めてくれたら
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104 どんなに幸せなんだろう 「あなたがいればそれだけで」 そんな幸せも手に入れた今。 それなのに、 欲は新たに重なって 過去の夢を思い出しては 「…もう終わったの」 自分に言い聞かせた
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105 〜♩ ーーー〝なぁ…ヒナ〟 “うん…” 〝あいつ、今まであんなに必死になったことあるか?〟 “…あんなあいつ、知らんで俺” 〝あんまチョロつくと捕まってまうでって言ってんけどなーーーーーー pic.twitter.com/8kjuIwNRtk
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106 裕side そのコンクールとやらゆうやつは 管楽器、打楽器、弦楽器 の順で3週間に渡って行われるらしい。 ーーーーあと二ヶ月 その2ヶ月を彼女のために懸けようと トランペットを握る 『…なぁ、教えてくれよ』 「いきなりどうしたの…? いいよ!」
2014-10-28 12:05:35![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
107 なにも知らずに笑う笑顔 その笑顔がもっとみたくて お前が踏ん張れないなら 乗り越えられずにいるなら ーーー俺がやってやる pic.twitter.com/ew7qWOoXHv
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108 彼女side 「…そう!もう少し頬に力入れて! 手には入れちゃダメ!そう。足に重心おいて」 〜〜♩ 音楽の森で2人っきり トランペットの音が響き渡る あれっきり裕君は、毎日のようにトランペットを握って ただ音楽に興味を持ってくれたのが嬉しくて
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109 誰のために吹いてるの? とか 何かあるの? とか そんな疑問は全くなかった。 ただ、彼が興味を持って 音楽を楽しんでいるように思えた だから、なにも気付けずにいたの 私のためなんて…知らなかったよーーー
2014-10-28 12:06:02