大学と国家予算

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高橋浩太朗 @kaminarufuyu

本日政策コンテストの評価会議の結果が公表され,主として評価やパブコメの対応を巡り,TLの大学関係者の呟きが散見される。触発され,思うところをまとめてみる。先程帰宅途中に覚書をいくつか書いていたが,連ツイとして再構成。テーマは「大学と国家予算」,全12ツイート。

2010-12-02 02:27:53
高橋浩太朗 @kaminarufuyu

(1)大学に問われて居るのは何故大学に国費を投入せねばいけないのか。まず経緯の概括。これは、国家が大学を設立するようになった背景を考えねばならない。混同されがちだが中世期の大学モデルはここでは役に立たない。その時点では権限の保証が行われていたに過ぎず、国費投入はもっと後。

2010-12-02 02:28:05
高橋浩太朗 @kaminarufuyu

(2)産業革命前後で国家の発展のためには高等教育の振興が有効、という政策判断により官立大学が勃興。殖産興業モデルとでも言えばいいか。日本の大学の出発点はここから。ただ、これが既得権化する事で有効性が国内的に認知されないまま、他国などを見ていつしか「有効」が「必要」にすりかわった。

2010-12-02 02:28:28
高橋浩太朗 @kaminarufuyu

(3)日本の戦後の発展に大学がどれだけの役割を果たしたのか、その成果が検証される事なく、文部省と大学により「大学は必要であり国家が支援する事は当然」という合意が形成されて来た。経済発展が進展し、毎年度使える国費が増える状況ではそのロジックで十分であったが故。

2010-12-02 02:28:39
高橋浩太朗 @kaminarufuyu

(4)時が流れ政府予算の有り様が問われることとなった今日、文科省にも大学にも「何故大学への国費投入が必要か」という問いに対する論理は存在していなかった。大学予算に国費が投入されることは「当然」で議論をする必要がなかった上に、社会発展に寄与する有力な効果検証もなかった。概括終わり。

2010-12-02 02:29:00
高橋浩太朗 @kaminarufuyu

(5)現状。忘れてはいけないのは,社会的な合意に至らぬままに「有効」から「当然」へのロジック転換が行われている点。大学セクターの都合に過ぎないままに大学への国庫支出は「所与のもの」と扱われている。ここにはまり込んでいる事が一つの隘路ともいえる。

2010-12-02 02:29:14
高橋浩太朗 @kaminarufuyu

(6)国家予算にとって「所与のもの」は国防や外交に代表される義務的経費を指す。しかし義務的経費は本質的にはCostであり,財政事情が苦しい際には削減の対象となりえるもの。このフィールドで戦うという前提なら,削減は「所与の条件」として受け止めるべきものである。

2010-12-02 02:29:25
高橋浩太朗 @kaminarufuyu

(7)今後どうしていくべきか。来年度予算についてはプロセスを経て筋道がついてしまっているので流れに任せるしかない。一番考えねばならんのは,同じ形で来年や再来年も高等教育予算が減らされかねないというケースへの対策。これを怒りが収まらない内にやらねば駄目だ。

2010-12-02 02:29:38
高橋浩太朗 @kaminarufuyu

(8)大学の目的は「教育研究を通じて知見を持った人材を育成し社会の発展に寄与」すること。教員,職員問わず,まず大学人はこの意識があるのか問い直すこと。加えてデータでも事例でもOBインタビューでも良いので,「大学が社会の発展に寄与」しているエビデンスを整理することが必要。

2010-12-02 02:29:50
高橋浩太朗 @kaminarufuyu

(9)平たく言えば「大学は要らない」との社会からの声に対し,社会の側で「いやいや大学は必要だよ」と言ってもらえるだけの情報を発信していくこと。シンプルに「大学って凄いんだ」「大学ってやっぱ役に立つよね」という声を増やしていくことができれば良いのだ。味方を作れ。

2010-12-02 02:30:07
高橋浩太朗 @kaminarufuyu

(10)同年齢の5割が「大学に行かない」あるいは「行けない」社会で,大学が「苦しい」と主張したってもっと経済的に苦しい人は一杯居るのだ。その主張では譲らざるを得ないのだ。超人的な努力をしている大学関係者を何人も知っているが,それでも敢えて言わざるを得ない。

2010-12-02 02:30:20
高橋浩太朗 @kaminarufuyu

(11)来年の予算要求に向けても時間は足りないが,大学は,国に予算を如何に確保してもらうかという発想ではなく,この国の発展の為には大学への「投資」が必要だ,という主張が社会のコンセンサスを得るような行動を取らねばならない。

2010-12-02 02:30:37
高橋浩太朗 @kaminarufuyu

(12)その為に自分達が今,何ができるかを本気で考えて欲しい。6万の声を100万にするのに必要なこと,社会の役に立っていると胸張って言う為に必要なこと,何でもよい。社会に「大学は必要なんだ」と言って貰える様に力を合わせたい。以上,一大学関係者としての思い。(了)

2010-12-02 02:30:52