「第一話! 非道! 波動拳地獄! デブ田デブ夫の野望を打ち破れ!」

『世紀末ゲーセン黙示録 東京芸夢」第一話。芸夢は小学五年生の元気な男の子。趣味はゲーセン通い。ハマってるゲームはストリートファイター2だ! 感想は#ckworksタグにて。
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架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

『世紀末ゲーセン黙示録 東京芸夢』 「第一話 非道! 波動拳地獄! デブ田デブ夫の野望を打ち破れ!!」

2014-11-28 22:36:37
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

よぉ! オレの名前は東京芸夢(とうきょうげいむ)! みんなはオレのこと芸夢くんって呼ぶぜ! 趣味はゲーセン通い。いまハマってるゲームはもちろんストリートファイター2! 行き付けのゲーセン『みらの』がオレを呼んでるぜ! あっ、向こうからクラスメイトのメガネが駆けてくるぞ。

2014-11-28 22:45:18
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「どうしたんだ?」「ふぇ〜ん、助けてでヤンスよ、芸夢く〜ん!」「男のくせにピーピー泣きやがって」「クラスメイトのデブ田デブ夫のヤツがあこぎなやり方でストリートファイター2を占拠してるんでヤンスよ〜」「なんだって!!」

2014-11-28 22:48:57
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

何を考えてやがるデブ田デブ夫! 見た目だけでなく心も薄汚いやろうだ! ストリートファイター2は過酷な受験社会に傷付いたオレたち小学生みんなのオアシス! それを独り占めなんて絶対に許さねえぜ! 「行くぞ、メガネ! デブ田デブ夫をとっちめてやる!」「待ってでヤンスよ、芸夢く〜ん!!」

2014-11-28 22:52:19
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「オリャー!」バリーン!! 「みらの」の窓ガラスを割り砕きオレは颯爽とゲーセン内に飛び込んだ。こういうのは勢いだ! 「ウォーッ、出てこい! デブ田デブ夫! おまえがあこぎなことは知っている!」「ブヒッ、ブヒヒーッ!」薄汚いやつの姿はゲーセン奥にあった! 見てるだけで反吐が出るぜ!

2014-11-28 22:59:00
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「あこぎだなどと、大層な言い掛かりでごわすな」「なんだとこのやろう」「おいどんは公正なルールの下、ゲームを楽しんでいるだけでごわすよブヒーッ!」「うるせえ!」「まずはおいどんの話を聞くでごわすよ」ふざけやがって、このゴミクズやろう!

2014-11-28 23:03:42
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「いいから話を聞くでブヒーッ! ルールはこうでごわす。対戦ルールにて勝負し、負けた方は席を立ち100円を置いて行く。勝った方はそのままストリートファイター2を続け、さっきの100円を入れて続けて対戦プレイ。勝ち続ける限り何時までもゲームができる公正なルールでブヒーッ!」

2014-11-28 23:08:30
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「何を言ってやがる! 許せねえ!」「芸夢くん! デブ田デブ夫はずっとストリートファイター2を勝ち続けて、ずっとゲーム台を占拠してるんだ! 卑怯なくずやろうだよ!」「弱者の戯言ブヒ。強者がたくさんゲームを遊べる。これは公平なルールでブヒーッ!」「ウォーッ、断じて許せねえ!!」

2014-11-28 23:13:07
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

なんという自分勝手なやつだ! なにが公平なものか! そんなルールでは下手なやつは一生下手なまま、ろくにストリートファイター2を遊べないじゃないか! 100円で3本勝負をして、勝っても負けても次に待っている二人に譲る。それがストリートファイター2の自然な遊び方に決まっている!

2014-11-28 23:16:47
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「おや、芸夢くん。まさか怖いでブヒか? 芸夢くんともあろうものが、おいどんを恐れて勝負できないブヒか?」「ちがう。おまえの卑怯なやり方に付き合う気はないだけだ!」「ブヒヒーッ、おいどんの定めた勝ち抜き戦ルールが怖いでブヒね?」「そこまでいうならやってやるぜ!」「ブヒーッ!」

2014-11-28 23:20:37
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「だが、デブ田デブ夫! おれが勝ったら金輪際その卑怯なルールの押しつけをやめろ!」「押し付けだなどと失礼な話ブヒね? だが、いいでごわすよ。代わりにおいどんが勝ったら二度とおいどんのやり方に口を出すなでごわすよ」負ける訳にはいかない! このゲーセンの未来はオレの手にかかっている!

2014-11-28 23:25:52
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「ウォーッ!」オレはデブ田デブ夫の隣の席に座った! クソッ、狭い! デブ田デブ夫の体がデカすぎる! あと体臭もすごい! ムカつくぜ! 「ウォーッ!」湧き出る怒りを抑えてオレは対戦モードを選択! 「ブヒヒーッ!」勝負はもう始まっている!

2014-11-28 23:31:14
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「ああーっ、芸夢くーん!!」「ブヒーッ!」「し、しまったーァ!」出遅れた! デブ田デブ夫にリュウを取られてしまった! オレは仕方なくケンを選択する。「いや、案ずるなかれ!」「き、キミは、ゲーセンの貴公子の異名を持つクラスメイトの家杉くん!」メガネが叫んだ。

2014-11-28 23:34:49
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「なんとなくリュウの方が強い気がするが、リュウとケンの強さは実際同じだ!」「なんだって!」「ブヒーッ!?」「けど、いつも使っているリュウを取られた芸夢くんの精神的ダメージは大きい! あの金髪やろうじゃ十分に感情移入できない!」メガネの懸念ももっともだ! それでもやるしかない!

2014-11-28 23:39:07
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「ウォーッ! 不本意だが、ケン、お前にすべてを託したぜ!」「ブヒヒーッ、粋がっていられるのも今のうちブヒよー!」デブ田デブ夫の指先が妖しく動く! 「これが数多の挑戦者を血の海に沈めてきたおいどんの必殺技ブヒよーっ!」「う、うわーっ、なんだあれはーっ!!」

2014-11-28 23:43:12
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

(波動拳! 波動拳! 波動拳! 波動拳!) それはおぞましいまでの波動拳の連打だった! デブ田デブ夫の凶暴な波動拳が次々と芸夢を襲う! 「な、なんていう精度だ!」「五回に一回しかアッパーパンチに化けないぞ!」「ブヒヒヒ、おいどんはこの戦法で数限りない勝利を重ねてきたブヒよ」

2014-11-28 23:47:45
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

だが、芸夢も百戦錬磨の強者だ! 「ウォーッ、負けてられるかーッ!」「すごい、芸夢くん! 垂直ジャンプで次々と波動拳をかわしている!」「ブヒヒヒヒ」しかし、デブ田デブ夫が邪悪な笑みを崩さない! 「そんな対策を取るやつなどごまんといたでごわす。ブヒヒーッ!」「ああっ芸夢くーん!!」

2014-11-28 23:52:46
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

どうしたことか!? 突然、芸夢のケンが波動拳にぶつかり始めたのだ! 明らかにタイミングを見失っている! 「芸夢くん、落ち着いて! リズミカルなジャンプを心掛けて!」「分かってる! だが、何かがおかしいぜ!」「……ハッ!」ゲーセンの貴公子、家杉が何かに気が付いた!

2014-11-28 23:56:04
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「デブ田デブ夫の手元を見ろー!」「な、何ーっ!?」なんということか! デブ田デブ夫は時々大ボタンでなく中ボタンや小ボタンを押しているではないか! 「分かったぞ! 中ボタンや小ボタンを押している時は大ボタンの時より波動拳の飛ぶスピードが遅いんだ!」ゲーセン貴公子の観察眼が冴え渡る!

2014-11-29 00:00:15
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「ブヒヒヒ、これがおいどんの無敗の秘密でごわす! 名付けて、幻朧波動拳!」「何が幻朧波動拳だ! ただのバグじゃねえか!」「卑怯者!」「勝てばいいのかよ、デブ田デブ夫!」会場はブーイングの嵐だ! 「ブッヒヒヒ! 勝てば正義でごわすーっ! ごわすーっ!」芯まで腐り切っている!

2014-11-29 00:05:51
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「芸夢くん! 垂直ジャンプ戦術はもうむりだ! 波動拳で迎え撃つしかない!」「ウオオーッ、やってやらあ!」芸夢の波動拳! 相殺! 波動拳! 相殺! 波動……い、いや、違う! これは大アッパーだ! 「ウワーッ!」被弾! 芸夢の体力が残り少ない!

2014-11-29 00:08:58
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「だめだ! 五回に一回しかアッパーにならないデブ田デブ夫に対し、芸夢くんは三回に一回アッパー! 波動拳対決ではジリ貧だ!」「ブヒヒヒ……」「芸夢くん! 波動拳を打ちながら前に進むんだ! 距離を詰めないと勝ち目がないぞ!」「無茶を言うなよ! ウオオーッ!」たが、その時だ!

2014-11-29 00:12:25
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「!?」会場にいる全員が一瞬息を呑んだ。ゲーム画面上のケンが……ありえない動きをしたのだ。プレイヤーに背を向けて、思い切り上方に飛び上がったのである! デブ田デブ夫の波動拳はなぜかケンを素通りだ。「な、なんでごわすか、今のは……ブヒーッ!?」恐慌状態に陥るデブ田デブ夫!

2014-11-29 00:16:41
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

「ま、まさか、今のは……」「知っているでヤンスか! 家杉くん!」ゲーセン貴公子の声が震えている。「まさか……伝説の……昇竜拳なのでは?」「昇竜拳!?!?」メガネが素っ頓狂な声を出す。

2014-11-29 00:19:34
架神恭介/作家・ゲームデザイナー @cagamiincage

昇竜拳は幻の奥義だ! インストカードにその名はあるものの、コマンドが難しすぎて誰一人成功した者がいないからだ! 「あ、あれが昇竜拳……??」メガネが落胆した声を出す。彼の気持ちももっともだ。

2014-11-29 00:22:40