稲川淳二のつぶやき怪談　2014年11月28日投稿分

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「へえ…何？」 「へぃ、あの音がずーっとしてるんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

亡くなったヤタさん、 よく用があると壁叩いたり、テーブル叩いたりして私の事呼んだんですよね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

どうやら、私の事呼んでるらしいんです」 「へえ？」 そこにいる皆は、ゾーっとしたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「馬鹿野郎、そんな事ある訳ねえだろ」 「でも、ずーっと叩いてるんですよ」 「じゃあ、行って見てみようか？」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

って言うので、 「オイ、止めとけよ」 って、皆言ったんだけど、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「大丈夫だよ、そんな事ありゃしねえよ」 と、ある役者が行っちゃったんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

仕方なく、他の役者も付いてったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

隣の小部屋の前、入り口のフスマの所に立って、皆黙ーって耳を傾けていると、中から、 ”コーンコンコン、コーンコンココーン、コンコンコン…” と音がしてる。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

『うわ～』 と思いましたが、 「開けるよ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と、ツーッ、 っとフスマを開けたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

中は暗いんです。 ひやぁ～っと冷えた空気が流れて来た。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

夏で遺体が傷んじゃいけない、という事で、 クーラーが無いもんですから、タライに氷を入れて扇風機を回してる。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

”ブウゥゥゥ～ン” と回ってるんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

暗い部屋の、中央の、布団の上に、丁度白い布を被せた、ヤタさんの遺体が横たわっている訳です。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

”コーンココーン…コーンコンコンコーンコーン” って、また音がして、 「うわあ～…」ってなったんですが。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

『え？』 よく見るとその扇風機、丁度中心部くらいから、虫を追い払うテープが、 ずーっ、と伸びていたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そのテープの先に、ボール紙の筒が付いていたんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それが風に吹かれて、 ”コーン、コンコーンココーン…” ベニヤの壁に当たっていたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「何だこりゃ。見ろよ、お前、これじゃねえか？」 「ん？…そうか…なーんだ、そうだったんだ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

つまり、暗～い部屋の中で、 ”コーン、ココーン、コーン、ココーン” ってボール紙の、その筒がぶつかっていた音だったんですね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

すると誰かが言ったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「…おい、その上見てみな」 「ん？」 丁度それが、 ”コーンココーン” と当たっている、すぐ上。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そこに亡くなったヤタさんの、舞台衣装が掛かってたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「おい、やっぱりヤタさん、舞台出たいんだろうな…」 「ああ…」 って話になったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その翌日の事です。 舞台は既に終盤です。