「プルトニウムが柏・横浜の間に集中的に降下」のブログ記事、しかし原論文見たら柏も横浜も検出限界割れ
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@SW83A 元のブログ記事amba.to/164LheA に引用されているこの写真bit.ly/1AddloZ 実際はプルトニウムの酸化物を吸引させたサルの肺のオートラジオグラフィーなのですが、バズビー氏が由来を伏せて引用し流布しているものです
2014-12-10 12:40:31@SW83A この写真bit.ly/1AddloZ の由来をつきとめたいきさつについてはこちらbit.ly/1k0M2UX にまとめました。こういうものを平気で引用するブログはあきれたブログbit.ly/1guiO2S に殿堂入り
2014-12-10 12:47:02@parasite2006 ありがとうございます。 発信元のブログもツイッターも変わりないです。このまとめを見てデマが減る事を願います。
2014-12-10 15:55:52なぜかとんでもなく曲解amba.to/164LheA されてしまった3.11後の環境試料中のプルトニウムの微量測定の論文bit.ly/1wbohUN の日本語解説bit.ly/1qvJKqR より少し引用します(続く)
2014-12-11 01:34:09発表概要前半:1. 2011年12月に福島第一原子力発電所正門前をはじめとして、主に20 km圏内の環境試料を採取しました。2. 福島第一原子力発電所事故由来のプルトニウムについて、加速器質量分析計(AMS)を用いて分析しました。
2014-12-11 01:39:48発表概要後半:3. 分析の結果、原発正門前で採取した植物片から、原発由来のプルトニウムを確認しました。4. プルトニウムの分析は社会的関心が高い一方で、正確な分析を可能とする環境が極めて限られていることから、国際チームを組んだ上で迅速に定量及び公開を行いました。(以下略)
2014-12-11 01:46:35これまで日本国内で行われてきたプルトニウムの分析(たとえば2011年6-7月の福島県下での大規模土壌調査の測定bit.ly/1dpXW9O )は、α線測定に基づいて行われてきましたが、この方法ではPu239とPu240を別々に定量することが難しいため(続く)
2014-12-11 02:04:27(続き)冷戦時代の大気圏内核実験の際に放出されたものと2011年3月の福島第一原発事故の際に放出されたものを区別するための同位体比の計算はPu238/(Pu239+Pu240)で行われてきました。(計算した同位体比の値が事故前の全国平均0.031を越えれば原発事故由来と判断)
2014-12-11 02:14:04これに対しこの論文bit.ly/1wbohUN ではPu239とPu240を分離して微量定量できるチューリッヒ工科大学の加速器質量分析計を使い、同位体比Pu240/Pu239が0.2を下回れば大気圏内核実験由来、0.2を越えれば原子炉由来と判定(考察の項参照)
2014-12-11 02:42:04分析した試料は20検体(土壌13、植物7)bit.ly/166zEDW サンプルコードA-Gは福島第一原発から20 km以内の旧警戒区域内、H-Jはそれより遠くで採取されたもの(H=原発から30 kmの南相馬市内、土壌2;I=柏市、土壌1;J=横浜市、土壌2)。
2014-12-11 03:00:0320検体の分析結果が表2 bit.ly/166AeS8 この表ではPu239が検出限界越えでもPu240が検出限界割れしてPu240/Pu239の実数値が得られない場合、同位体比の上限値が不等号「<」と星印「*」つきで表示。両方が検出限界割れなら「n.d.」と表示
2014-12-11 03:14:55表2 bit.ly/166AeS8 でPu240とPu239が両方とも検出限界越えしてPu240/Pu239を算出できたのは20検体中3検体だけ。Pu240/Pu239が0.2を越え、原発事故由来と判定されたのはA=第一原発正門前とG=南相馬市小高区の植物だけ(続
2014-12-11 03:36:19(続き)AとGはいずれも第一原発から20 km以内の旧警戒区域で採取した試料。もう一つPu240とPu239が両方とも検出限界越えしてPu240/Pu239を算出できたのはI=原発から30 kmの南相馬市内の土壌。これはPu240/Pu239が0.2ぎりぎりなので核実験由来と判定
2014-12-11 03:44:49(なおこの論文bit.ly/166AeS8 では土壌試料を1カ所あたり1-2 gしか採取しておらず、測定値もBq/kg単位。おそらく表面をごくわずか掻きとっただけでしょう。これでは深さ5 cm掘って最終的にBq/m2に換算した大規模土壌調査の結果と比較できません)
2014-12-11 03:55:46表2 bit.ly/166AeS8 にはα線測定(Pu240とPu239の分離定量不可)によりPu240とPu239の合計量を調べた結果(土壌試料のみ)も出ていますが、どれも数値の左側に不等号「<」がついており、検出限界割れしたことを示しています。
2014-12-11 04:23:44ここでI=柏市とJ=横浜市(2検体)で採取された土壌のアルファ線測定結果(Pu239とPu240の合計量)は表2 bit.ly/166AeS8 ではどうなったかというと、< 0.532*, < 0.405*, < 0.426*。(続き)
2014-12-11 07:19:04(続き)どうやら「プルトニウムが柏・横浜の間に集中的に降下」amba.to/164LheA と書いたブログ主は表2 bit.ly/166AeS8 のα線測定のすべての測定結果の数字についている不等号「<」の意味を理解できず、実数値と勘違いした模様
2014-12-11 07:29:43土壌のガンマ線スペクトル測定の検査成績報告書の結果一覧表に出ていた検出限界値を表すための不等号「<」の意味を理解せず、勝手に不等号をはずした一覧表がネットにアップされた「八王子の土壌からアメリシウム検出」騒ぎbit.ly/quJArT といっしょですね。
2014-12-11 07:38:43【余談】
表2 http://bit.ly/166AeS8 のα線測定結果の欄の左側に不等号「<」がついた数字をよくみると、右側に「*」印がついているものといないものがありますが、これは検出判定の2通りの考え方(http://bit.ly/rdQ6nx お急ぎの方はページの終わりのFAQをどうぞ)を区別するためのものです。
1)試料の測定値がバックグラウンドの測定値の変動範囲をはずれていれば検出と判定する=Kaiser法(いわゆる3σ法)
2)バックグラウンドの変動範囲と測定値の変動範囲の重なりがある限度より小さい場合に検出と判定する=Currie法(ISO11929)
ISO11929 http://bit.ly/1umtrrI では1の考え方による判定基準を「検出限界」(detection limit)、2の考え方による判定基準を「決定しきい値」(decision threshold)と呼び、表2では後者に「*」印をつけています。
前者は測定値も変動することを考慮に入れておらず、「たまたま1回測定した結果がバックグラウンドの変動範囲をはずれていただけでも検出判定されてしまう」という批判から後者の考え方が出てきました。後者の方がより厳密で、誤って検出限界越えと判定される可能性がより少ない判定法です。この2つの違いについてより詳しい説明が、この日本語論文に出ています。
上本道久. 検出限界と定量下限の考え方. ぶんせき 2010;5:216-221
http://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2010/201005nyuumon.pdf