小選挙区制と民主主義を考える

「小選挙区制は死票が多いからダメ」なのか?英米二カ国の制度を紹介し、有権者は民主主義の為に何が必要なのかに関するnoiehoie氏の論考です。
4
菅野完 @noiehoie

「小選挙区制度は死票が多いからダメ」と公言する政治家には要注意ですよ。 裏を返せば、「自分に投票しなかった有権者の意見なんか聞く耳持たん。それは死票なんだから」って言うてるようなもんです。

2014-12-18 17:38:36
菅野完 @noiehoie

「小選挙区制度は死票が多いからダメ」っていう自民党の衆議院議員が少ないから、この意見の異常さに気付けないだけで、もし自民党の議員が「小選挙区制度は死票が多いからダメ」って言うたと想定してみ? 「うるさいボケ。有権者の意見聞いてこい」としか言いようないでしょ。

2014-12-18 17:40:41
菅野完 @noiehoie

英米二カ国は厳密な小選挙区制度として有名ですが、当選した後の議会での議員の立ち居振る舞いが全然違います。 イギリスはマニフェストでがんじがらめにするので、ほぼ全ての法案がマニフェスト通りに出され、全件党議拘束かけられます。これは、「選挙は有権者との契約」ってことの表れです。

2014-12-18 17:43:34
菅野完 @noiehoie

一方の米国は、ほぼ全ての法案に党議拘束らしき拘束はありません。したがって、下院議員は、ときとして自分の所属する政党の政策と違うことを承知の上で「地域代表」として振舞います。

2014-12-18 17:44:49
菅野完 @noiehoie

同じ小選挙区制度でも、イギリスの議会に党議拘束があり米国の議会に党議拘束がないのは、そもそも、議院内閣制と大統領制の違いというのが最も大きい理由です。しかし、結果として、議員の立ち居振る舞いが「英国は公約を契約として振舞う」「米国は地域代表として振舞う」と違ってきます。

2014-12-18 17:49:18
菅野完 @noiehoie

マニフェスト選挙というものが日本でもありました。あれはイギリス流の選挙を日本にも持ち込もうという試みでした。 しかし日本ではうまくいかなかった。 いかなかった原因は、「公約に違反することをやっても追求できない/しない」という風習があるためです。「風習が仕組みを腐らせた」好例ですね

2014-12-18 17:54:35
菅野完 @noiehoie

マニフェストの母国イギリスでは、「マンデイト」と解釈されます。そして、(議論は多いのですが)「与党はマニフェストの実行を有権者から命令されている」と解釈されています。なので逃げようがない。実行せざるを得ない。

2014-12-18 17:56:40
菅野完 @noiehoie

もちろん、どんなにしっかりしたマニフェストを作っても、すべてを実行することは不可能です。なので、結果的に、マニフェストは「現実的」でありながらも(日本と違い)「数値目標等設定しない」、「達成可能」な状態で、有権者に提示されます。

2014-12-18 17:58:14
菅野完 @noiehoie

乱暴なまとめ方をすると、イギリスの場合。。。 「与党はマニフェストの実行を命令されている」と解釈する→与党は逃げられない→選挙前に提示されるマニフェストは「現実的」かつ「モデレート」なものになる→公約通りの政策が実行される という循環が生まれます。 しかし、日本は。。。

2014-12-18 17:59:44
菅野完 @noiehoie

日本のマニフェスト選挙は 「そもそも公約違反に甘い文化」が存在している→与党も全部実現するつもりなんてさらさらない→だからみんな荒唐無稽なことまでマニフェストに書く→結果としてなんも実現されない という悪循環が生まれます。 これじゃ、機能しませんよね。

2014-12-18 18:01:34
菅野完 @noiehoie

またイギリスの場合は、日本の参院にあたる(厳密にはだいぶ性格ちがいますけど)貴族院は「民主的正統性がない」という理由から、「庶民院の決定を否定しない」という不文律があります。 なので、与党の政策はそのまま実施されやすい。 有権者も安心して見てられる。

2014-12-18 18:03:29
菅野完 @noiehoie

ここからは事実の記述ではなく僕の意見になりますけど、日本のマニフェスト選挙がうまくいかない理由は、「制度設計として、参院がイギリス型でなくアメリカ型だから」ってとこにあるとおもいます。

2014-12-18 18:06:47
菅野完 @noiehoie

せんだって、アメリカで中間選挙がありました。中間選挙は「上院のうち1/3と下院の全部」が改選される選挙です。で、なんの「中間」かというと、大統領任期の真ん中である二年目に実施するから「中間選挙」といいます。

2014-12-18 18:08:31
菅野完 @noiehoie

なんでこんなややこしい手間のかかる選挙をアメリカがやるかというと、アメリカの選挙は「一回の選挙で、国がガラッと変わるようなことがあれば民意の暴走で国がおかしくなるから制度的に暴走を止めよう」という制度思想で設計されているからです。「熱狂で国が左右される」を防止しています

2014-12-18 18:10:28
菅野完 @noiehoie

アメリカ人が作成に関与したからかどうかはわかりませんが、日本の衆参両院も憲法の規定的には、ちょっとアメリカに似ています。 参院は1/2を三年に一回改選し、衆院に意見を付託し、イギリスと違い、衆院の意見を否定することがあります。

2014-12-18 18:12:07
菅野完 @noiehoie

先ほど、「アメリカの議員は小選挙区制度といえども党議拘束がないので党代表というより地域代表として振舞う」と書きました。 アメリカの議会は、「一回の選挙でガラッと変わることを防止している制度」と「地域代表としての議員」が合わさり、合議に合議を重ねないと、議会が前に進みません。

2014-12-18 18:14:01
菅野完 @noiehoie

ここで日本の議会の特殊性が明らかになるかとおもいます。 つまり、「議院内閣制」というイギリス型のエートスを保有しているのに、制度設計的には、「合議を重ねないと本来的には議会が前に進まない」という「英米ミックス」な制度になっているのです。

2014-12-18 18:15:48
菅野完 @noiehoie

僕たちが、与党がどの政党であれ、日本の議会をみていてイライラするのは、まさにここにあるのかとおもいます。「イギリス型の議員内閣制というエートス」と「アメリカ型の合議前提の会議制度」が混在してて「バン!と決めりゃいいのに決められない」と「合議せんといかんのに合議しない」が混在してる

2014-12-18 18:18:17
菅野完 @noiehoie

で、話があちこちいきましたが。。。 「与党は付託を受けたんだからドンドン政策を実行すべきだ」とおっしゃる方がいらしゃいます。しかし、日本の与党はどの政党であれ「明確な政策項目」を提示して選出されるわけじゃない。しかも、公約違反を懲罰できない。これでドンドンやられたら困ります

2014-12-18 18:23:05
菅野完 @noiehoie

「公約違反を事後にでも懲罰できない」という風習があり続ける前提であれば、やはり日本の政党は、マニフェストなんか提示せず、「理念ベースのゆるい集合体」として機能し、憲法の規定から不可避になっている「合議前提の議会運営」を行なっていく必要があるとおもいます。

2014-12-18 18:26:29
菅野完 @noiehoie

そのためには、なによりも「有権者側の忍耐」が必要です。 憲法の規定は、「与党がバシーンと決める」を前提としていません。あくまでもアメリカ型で「民意の暴走を防止する」よう制度設計されています。だから合議し続けなきゃいけない。合議には時間がかかります。これに僕らが耐えなきゃいけない。

2014-12-18 18:28:23
菅野完 @noiehoie

「決められる政治」とかいいますが、「決めるな」と憲法は言うているのです。 なので、僕たち有権者も「決めるなよ」といい続けなきゃいけません。 仕組みで規定された通り、ちゃんと合議に合議を重ねろと。議論に時間かかるのしゃーないよと。我々は待ってるから。。。と。

2014-12-18 18:30:00
菅野完 @noiehoie

その忍耐強さを有権者が持てば、気の遠くなるような話ですが、「郵政民営化ごとき一法案の賛否で解散総選挙をする」などというポピュリストを排除できるでしょうし、「アベノミクスなる呪文を唱えるのみの政治家」という低脳を排除できるようになるでしょう。

2014-12-18 18:32:02
菅野完 @noiehoie

そして、有権者としては議会の議論で時間がかかることを甘受しまたそれを要請しつつ、選挙と選挙の間にある長い長い議論の時間を当然視し、その間、自分の地元の議員にどんどん意見や注文をつけ、選挙以外でも意思表示しつづけていく。

2014-12-18 18:33:22
菅野完 @noiehoie

選挙は終わりました。野党は善戦したものの自公連立政権は信任を得た格好です。 僕たちは、誰に投票したかにかかわらず、有権者の責務として、「お前らちゃんと議論しろよ。与野党ともに議論しろ」と言い続ける必要があります。そして絶望せず、声を上げる必要があります。

2014-12-18 18:36:33