ハン・ソロ艦長はなぜレイア姫にああ答えたのか

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It happens sometimes @ElementaryGard

know を辞書で引くと「知る」と訳語が当てられています。しかしながら実際には「知っている」の意で使われることのほうがずっと多いのです。

2014-12-24 17:34:15
It happens sometimes @ElementaryGard

例えば『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』のここ。ソロ艦長が帝国軍の手に落ちて冷凍人間にされる直前。元祖ツンデレプリンセスのクラリ…レイア姫が "I love you." と打ち明ける。艦長はこう返す。"I know." pic.twitter.com/yLD6jgt03u

2014-12-24 17:39:04
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動詞は大雑把にわけると「動作動詞」と「状態動詞」の二つがあります。これはどんな言語でもそうです。本当はもっと区分できるけどここでは単純化します。

2014-12-24 17:41:20
It happens sometimes @ElementaryGard

know は動作動詞というよりは状態動詞寄りに感じます。レイアはずっと前から艦長が好きで、除隊するはずだった彼を「今は基地の外は大ふぶきだから閉鎖しました」とかなんとか理由をつけて行かせない。基地の皆さんはこの二人の微妙な関係を心得ているので今さら誰も驚かない。

2014-12-24 17:43:47
It happens sometimes @ElementaryGard

処刑の直前にようやく姫は思いをことばにします。艦長は「知ってるよ」とクールに、しかし情感いっぱいに答える。そんなことはずっと前からわかっていたよ、と。

2014-12-24 17:45:39
It happens sometimes @ElementaryGard

もうひとつ実例を紹介します。『アマデウス』から。自信作がさっぱりうけなくて腐るモーツァルトに、主人公が「君のオペラは客席のウケの取り方がわかってないから拍手が来ないんだ」と諭し、モーがこう答える。"I know." pic.twitter.com/vJW3maNw4h

2014-12-24 17:54:33
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これも「んなこたー承知だよ」の意ですね。つまりハン・ソロ艦長も神童モーツァルトもknowを状態動詞として使ってるわけです。

2014-12-24 17:55:49
It happens sometimes @ElementaryGard

するとknowには動作動詞としての用法はないのかというと、あります。例えばこのシーン。オペラの主役歌手がモーに花束で平手打ち。モーに既に婚約者がいると知って嫉妬と怒りが爆発。 pic.twitter.com/YeYHbTlCz3

2014-12-24 18:00:41
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"At that moment l knew. He'd had her." (その瞬間にわかった。あいつ彼女に手を出してたんだ) pic.twitter.com/derQo2ejb3

2014-12-24 18:04:38
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It happens sometimes @ElementaryGard

この場合は at that moment (その瞬間に)とあって、それによってknow(の過去形)が状態動詞から動作動詞にスイッチが切り替わった、と解釈していいと思います。

2014-12-24 18:16:19

訂正。これは at that moment に I didn't know から I knew に「状態」が切り替わった、と解釈したほうがすっきりします。赤信号が青信号に切り替わった、みたいな。

It happens sometimes @ElementaryGard

どんな言語についても当てはまるのですが、母語でない言語を学ぶとき、どうしても母語の土俵で相手を解釈しようとするわけです。一度母語というホームグラウンドを離れてアウェイで戦ってみないと、ジャイアンツも自分たちの本当の実力はわからないのですが。

2014-12-24 18:27:10
It happens sometimes @ElementaryGard

アウェイの言語と、ホームグラウンドの言語のどちらの引力圏にも属さない、ラグランジュ点みたいな中間エリアから、双方を相対的に眺められるような教育カリキュラムを国の威信をかけて開発しなくてはいけないのに。

2014-12-24 18:30:27
It happens sometimes @ElementaryGard

言語にもいろいろあるのですが、その傾向をチャート図にするには、時制や相や動詞の活用といった軸を使うのが有効です。中国語には現在過去未来を言い分ける文法つまり時制がなくて、それでも相はあるんだ、とか。

2014-12-24 18:32:39
It happens sometimes @ElementaryGard

世界にはいろんな言語があって、いくつかの分析軸で立体分布図を作ると、ああ中国語はこのあたりで、ドイツ語はこのあたりで、日本語はこのあたりなのか、なるほど、と視覚的にわかる。自分がこれから習う言語は日本語からみて…うわ14万8千光年も離れているのかこれは大変だぞ、と覚悟ができる。

2014-12-24 18:35:08
It happens sometimes @ElementaryGard

「国語」だと自分たちが使っていることばを客観視できない。銀河系のどのあたりに太陽系があって地球があるのかを眺めるには、銀河系全体の模型図がいります。それが「日本語」。そういう教科を新たに設けるべきです小学校に。「国語」とは別に「日本語」を。

2014-12-24 18:39:31
It happens sometimes @ElementaryGard

knowは「知る」なのか「知っている」なのか論から、またとんでもなく大きい話になってしまいました。

2014-12-24 18:41:58
It happens sometimes @ElementaryGard

次はwearでやってみます。また後で。

2014-12-24 18:42:25