rsbs日誌#39

レズボス日誌。第三九巻 ツイ鎮SS
2
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「…さいご、に…あえる、なんてね…にげなさい…いえ…にげ、て…りゅうじょう、せんぱいが…ひなんゆうどう…してる、から…」「何が、何があったんですか!瑞鶴さんたちを、こんなに酷いことしたのは!?」ぼろぼろとヒスイから落ちる涙に、瑞鶴は「嗚呼…雨かな…」などと呟いた。

2014-12-28 16:20:33
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「えりーと…よ…しんかい、せいかん、の…あいつ、ら…みなみに…いった、から……おねがい…いき、て…?」ひた、と血で濡れた片腕で瑞鶴はヒスイの頬を撫で…ゆっくりと事切れた…小波の音は耳に届かず、ただポタポタと死んだ瑞鶴の顔を叩く己の涙の音ばかりが、ヒスイに届いた…

2014-12-28 16:28:12
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 嗚咽も漏らさずヒスイはそっと立ち上がる。駆逐艦の魚雷を拾い上げ、殺された二人の幼馴染みの薙刀と太刀を拾い上げ、彼女は誰の物とも解らない血濡れたスカーフを鉢巻き代わりにきつく結んだ。こぅ…と呼気が彼女の口元から溢れ出る。何時しか頬を流れる涙は…赤い紅い血涙と化した…

2014-12-28 16:38:46
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 轟!と人ならざる咆哮がヒスイの喉から飛び出した。獸と化した彼女は音もなく駆け出し、林の中へと姿を眩ませる。彼女を止める事は最早出来ない…全てを討ち倒すか…己が討ち倒されるか…何方かに一つしか無いのだ…渦巻く風が…ざわつきを増した…黄昏時が深くなる…影が溶ける程に…

2014-12-28 16:47:49
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「一体何が起きたと言うんじゃ。おい、せっつくでない、烏殿」肩に止まり、泣きわめく白烏に妖艶な少女は辟易としていた。烏の言葉は兎に角着いてこい、の一点張りである。しかし態々坊之岬に向かっている己の戦艦を引き換えさせるのは時間も掛かる…仕方がなく、水上機を飛ばした。

2014-12-28 16:55:47
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「ねぇ提督ー…まだ着かない?しんどいんだけど」「もうちっと待っておくれ隼鷹」二重反転ペラを装備し、改造されたスーパーマリン スピットファイアMkーVbが島へと近付いた時…もうもうと立ち上がる煙が見えた。「不味いのう…襲撃があったと見える」「マジで!?ヤバイじゃん」

2014-12-28 17:12:26
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「対空砲火を食らったら洒落にならん。高度を下げるぞ」「あ、ちょっ!待って待ってあぁぁぁぁっ!?」鋭く高度を下げるスピットに隼鷹は悲鳴を上げた。幸いにも、対空砲火は一発も上がらず、比良坂は静かにスピットを着水させ、接岸した。「大丈夫かや?隼鷹」「ぅー…少し酔った…」

2014-12-28 17:18:42
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「仕方あるまい…ほれ」グロッキィと言わんばかりの隼鷹の頤を指で上げると、比良坂は接吻をした。ちゅ…と柔らかい音が小さく響き、口の中の清酒が優しく注がれる。最初こそ突然の接吻に驚いた隼鷹であったが、大人しく口移しを受け入れた。体内に吹く爽やかな風が、体を楽にする…

2014-12-28 17:26:13
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「今の、何なの?提督」ぽかん、と惚けた隼鷹が己の体を確かめながら問い掛けた。「キスには魔力が籠っておるでな。そこにシルフの作った清酒を飲ませてやったのよ。体が清められたであろう?」「つまり、姫様のキスとお酒様様って訳か…」隼鷹の言葉に小さく苦笑しながら二人は歩いた

2014-12-28 17:32:44
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 その時、不意に駆け寄る人影が在った。「誰か!」比良坂は鋭く短く声をかけ、懐からランタンを掲げた。すると影は立ち止まり、大きく腕を振った…「敵じゃありません!護衛艦隊の者です!」成る程、よく見ればそれは妙高型の羽黒であった…「羽黒かや。一体島で何があったのじゃ?」

2014-12-28 17:37:41
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「はい!突然深海棲艦の艦隊による襲撃を受けまして…しかもエリートなんです!」「なんじゃと!?こんな本土の近海でか!?」今まで、本土の近海で深海棲艦のエリート種との遭遇事例は存在していなかった。エリート種は常に本土より遠い海域の深層部でのみ見受けられたが為である…

2014-12-28 17:55:15
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「住民の避難は…護衛艦隊の被害も出ましたが、ほぼ完了したんですが…この辺りを警戒してくれてる筈の防人候補生が居なくて…」羽黒は心底心配そうに辺りを見渡した。しかし人気は丸切り、無い…静かな物だった…「その防人…名前はなんじゃ?」「ヒスイちゃんです。弓を持った」

2014-12-28 17:59:37
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 比良坂は顔を覆い、天を仰いだ。なんたる事であろうか。あれ程の力量を持った娘が消えるとは。刹那、咆哮が轟いた。獸の物でもなければ、深海棲艦の其れでもない…言い例える為らば、鬼の咆哮…そうとしか例えられぬ恐ろしい咆哮であった。「隼鷹、ゆくぞ」懐から箒を取り出し呟いた。

2014-12-30 20:17:56
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「何処へ行くのですか!危険です!止めて下さい!」「否!此処であの咆哮の真実を確かめねば更に良からぬ事が起きる!わしの魂がそう囁いておる!お主は本隊と合流せよ!生命の防衛に勤めるのじゃ」比良坂の強い言葉に最初こそ、思惟した羽黒であったが、十秒と経たぬ間に強く頷いた。

2014-12-30 20:24:58
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 その間にも、爆発音や砲声が島の南側から響いたが…やがて止んだ。隼鷹と共に箒に横乗りし、比良坂は空を翔る。民家や林を飛び越え…やがて海岸線に躍り出た。暫し辺りを見渡して渦中を探そうとし…「提督!彼処!」隼鷹の指差した先には、燃える深海棲艦の残骸が在った…

2014-12-30 20:28:27
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 降り立ち、辺りを見渡す。爆発物によって破壊された深海棲艦や、急所のコアを一突きに貫いた物や、艤装を矢で破壊し袈裟懸けに切り捨てた物もあった…何よりも…

2014-12-30 20:31:02
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 ―――…その半身を大きく抉られ、膨大な黒い血を流して尚、呪詛を吐き続ける少女が其処に居た…―――

2014-12-30 20:32:53

…――――――――…

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 鬼は走った。血の涙を流しながら音も無く、風よりも早く走った。耳を済ませば遠く千里の彼方からでさえ望む音が聞こえてくる思いであった。あいつらは今、島の南に居る。島の南で何かを探しているかの様だった。音で全てが分かる。気配も、数さえも。嗚呼…『見ぃつけたぁ…』

2014-12-30 20:38:48
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 矢に魚雷を縛り付け、弓の弦に番える。心が燃え滾る。まるで煉獄の業火が魂を燃やし尽くさんとしているかの様だ。呼吸を暫し……そして音も無く、鋭く速く飛び出した。敵の姿がくっきりと見て取れる。中央の巡洋艦クラスに狙いを定め、矢を放つ。一撃必殺の魚雷は見事に命中した。

2014-12-30 20:46:25