彼女のふり　Vol.1

pe-ko @Peko8_m

「お腹空いたな」パンを口に突っ込んで、必死にPCに文字を打つ「まだ居ったん？なんやねん、その顔」「パンを食べてまふかりゃ、しかたらいんれす」って言ったら頭をポンってされて「笑ってまうから、こっち見んなや。あと、どれくらいあるん？手伝ってやるゎ。一旦、休憩してゆっくり食べや。な？」

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思わぬ救世主登場。マヌケ面を見られて恥ずかしいよりも先に、嬉しさが勝ってニヤニヤしてしまう。残業してて、良かった。丸山先輩と二人きりになれるなんて。こんなチャンスないよ。残業は嫌だけど、今日はついてるって思ったら、仕事も手に付かない。 pic.twitter.com/gAblZAHsTb

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丸山先輩が手伝ってくれたおかげで思ったより早く仕事が片付く「先輩、ありがとうございました。何かお礼したいんですけど…」「御礼…？」「はい」「そしたら、明日の昼に弁当、俺の分もな。お前、弁当作って来てるやろ」「丸山先輩も作ってるじゃないですか。たまには、誰かの作った飯食いたいねん」

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「それなら、先輩の家に作りに行きましょうか？」はっ…私、何を言って。言ってら恥ずかしくなって、下を向きながら「でも、彼女さんとか居たら…迷惑ですよね」と言うと「彼女（笑）居らん、居らん。そしたら、今週末…うち来るか？」「えっ、あ、は…はいっ」「そしたら、何作ってもらおうかな〜🎶」

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って、言ってる丸山先輩を見ながら、密かに淡い期待をしてしまう。何とも思ってない後輩の子が家に来たいって言って、イイよ。なんて言わないよね？丸山先輩にその気が無かったとしても、先輩も私のことが好きなんじゃないかって、期待しちゃうからね？ pic.twitter.com/7uKAgy4S8X

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朝起きて、昨日のことが夢だったんじゃないのかな…なんて思いながら、無駄に気合いの入ったお弁当を作って、会社へ向かう。席について、周りを見渡すと丸山先輩の姿はなくて、ホワイトボードを見ると丸山先輩のところは12時戻りと書かれて居る。あ、お昼には帰ってくるんだ、一緒にお昼食べたいな…

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ただの後輩の1人でしかないのに、家に呼ばれたってだけで無駄にテンションが上がってる自分が少し恥ずかしい。そんなことを思いながら居ると、携帯が震える。丸山先輩からのLINE…【今日、昼には会社に戻るから、一緒に昼飯食わん？】ってかわいいスタンプと共に。迷わず送った返事は【勿論です】

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きっと、何が食べたいとか、待ち合わせとか、そんな話しなのはわかってる。でもね、やっぱり、期待しちゃう。もしかして、丸山先輩も私のこと好きなんじゃないかと。2人でランチとか♡今日、お弁当ちゃんと作って来て良かった。唐揚げ多めに入れて来て良かった。今日のランチも楽しみになってきたよ。

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「戻りました〜」12時少し前に外出していた丸山先輩が戻って来る。思わず目で追ってしまう。不意に目が合って焦っていると、丸山先輩が口パクでヒ・ル・メ・シ・イ・ク・ゾって言って来る。急いでお弁当持って、準備をして「お昼行って来ます！」って丸山先輩にも聞こえるように言って、席を立った。

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会社の廊下を丸山先輩と2人で並んで歩くなんて、新入社員の頃に会社案内してもらった以来だな…。とか思いながら、少し後ろをついて行く「大丈夫やったん？いつもは、友達とかと…飯なんとちゃうん？」「大丈夫です！」むしろ、このチャンス逃しちゃダメって言われたんで。なんて、言えるわけないし。

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「天気いいし、屋上にでも行くか？」「はい！」「よし、決まり」屋上にあるベンチに腰掛けようとすると「あ、待った」とハンカチ引いて「どうぞ」「ハンカチ汚れちゃいますよ」「えぇねん、えぇねん」「ありがとうございます。ちゃんと、洗って返しますね。それと、コレ…使ってください」って代わりに

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私のハンカチを渡すと「有難く使わせていただきます」と受け取られた「先輩は今日はご飯…」「朝、寝坊して作れなくて、コンビニ弁当」「そうなんですね。先輩のお弁当見たかったなぁ…」「それは、機会があったらやな。で、お前は弁当なんやろ？」「はい」「おっ！唐揚げ入っとるやん！食ってえぇ？」

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「ん〜っまい。俺、唐揚げ好きやねん」「そうなんですね！喜んでもらえて嬉しいです」「なぁ、なぁ、卵焼きも食ってえぇ？」「どうぞ」きっと、傍から見たらカップルに見えるかな？とか勝手に妄想してしまう「とりあえず、唐揚げと卵焼きは作ってもらおっかな」「イイですよ。他には何かありますか？」

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「あとは、どうしようかな？」とかニコニコ顔で言うから張り切って「リクエスト有れば何でも、作りますよ」「ホンマに？」「はい」そしたら、先輩が少し黙って、私の方を見る「…実は家に来てもえぇよって話したんには、理由があんねん」「理由…ですか？」「うん、お前に手伝ってほしいことがあって」

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だから、丸山先輩は私に家に来てイイよなんて言ったりしたのか…。そりゃ、何か理由とかない限り、あんまり接点のない私なんて家に呼ぶわけないですよね。私の抱いた、もしかしたら…の淡い期待は思いのほか早く、儚く消え去った。 pic.twitter.com/VnMJWbXTyJ

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もしかしたらって少しでも思った自分が恥ずかしくなる「それで、手伝いって何したらいいんですか？」「友達が結婚すんねん。週末…2人でウチに来るんやけど、料理をな…作って祝ってやろうと思ってん。せやけど、なかなか1人やと…って思って、手伝ってもらえないかと思ったんやけど、あかんかな？」

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「それに、お前さ、入社した時に趣味は料理です！って言っとったからさ」そんな何年も前のこと、覚えて居てくれたんだ…って思うとやっぱり嬉しくて。でも、そしたら材料の買い物とか一緒に行けるのかなって思ったりしたら、やっぱり、楽しみになって来る。好きな人の頼みだかし、迷わず「イイですよ」

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「お料理、お手伝いします」「ホンマに？ありがとぉ」って言われて、両手を握られる。一瞬、ビックリしたけど丸山先輩に手を握られたってことにドキドキする「頑張って作ろうな」「はい」ここで、丸山先輩と仲良くなれれば、きっと本当のチャンスあるかもしれないし。無駄にいつも以上に前向きになる。

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だって、今…見てるだけの存在だった丸山先輩と話して、一緒にご飯食べてる。こんな状況昨日の夜までは想像できてなかったわけだし「それと、そん時に彼女のふりも頼むな」「えっ…？今、何とおっしゃいました…か？」「彼女のふり」「丸山先輩の…？」「おん、実は友達に彼女を紹介するはずやってん」

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「でも、最近…別れてもーて。やっぱり、1人で新婚さん達の幸せオーラには耐えられへんなって思ってな」と苦笑いを浮かべる「そうなんですね」彼女、居たんだ…。別れたってことはやっぱり、本格的にチャンスあるかも、彼女のふりとかじゃなくて、私を彼女にしてくれませんか？って言えたらイイけど、

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結局、そんなこと言えずに「協力しますよ」って言うと「ありがとう」って、今度はいきなり抱きつかれて、思わずドギマギしてしまう。離れると「さぁ、昼飯食おっ。あ、唐揚げもう1つもらってえぇ？」「どうぞ」嬉しい反面、困ったことになりそうだな… pic.twitter.com/q46AYGOwNq

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「とりあえず、明日の午後から仕込みで間に合うかな？」「何作るか決めて無いのにですか？」「唐揚げと卵焼きは決定しとるやんか！そしたら、明日の13時に八萬駅前でえぇ？家の最寄りやねん」「えっ、丸山先輩もですか？」「何？そうなん？最近、越して来たばかりやから、何あるとかもわからんくて」

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「そしたら、予定変更！買い物前にお前に周辺案内してもらお」「でも、私もそんなに詳しくないですよ？」「えぇよ。一緒に詳しくなったらええやん」これってデート？ご近所さんだし、休みの日に偶然、街中で遭遇したり、仕事帰り一緒に…とかもしかしたら、あるよね。先輩に近づくチャンス増えるよね。

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「でも、こんな時期に引っ越して来たんですか？」「あぁ…、まぁ、彼女と別れて一緒に住んでた家…。出てきたって言うか、追い出されたからなぁ」さっきと違って伏し目がちに笑う「ゴメンなさい」「イヤ、まぁ、そんなことはえぇねん。明日の10時に八萬駅な、彼女役の予行練習兼とるからな」「はい」

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え…？今、予行練習とは言われたけど、デートって言われた？それからは、緊張し過ぎて、ご飯もあまり喉を通らなくて「お前、昼飯それだけで平気なん？」って丸山先輩に心配された。それからは、仕事を終わらせて、明日着る服を買いに行こうとか、そんなことばかり考えて、なんとか時間通りに退社した。