不完全性定理と後期クイーン的問題

後期クイーン的問題の正面突破方法に関するまとめ
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@quantumspin

「郵便的脱構築と後期クイーン的問題」をトゥギャりました。 togetter.com/li/765907

2015-01-04 08:27:59
@quantumspin

メタレベルの単一性の否定という、郵便的脱構築を導く概念は、元来のゲーデルの不完全性定理ではどのように理解できるだろう。これを理解する為、第二不完全性定理では、ある公理系の無矛盾性はその公理系自身では証明できないが、他の無矛盾な公理系からも証明できないとは言っていない事に注意する。

2015-01-06 19:24:55
@quantumspin

Wikipediaに拠れば、『例えば、ペアノ算術の無矛盾性はZFCから証明できるし、算術の理論に超限帰納法を加えて得られたゲンツェンによる無矛盾性の証明もある』。即ち、第二不完全性定理の適用される公理系の外側から、この公理系の無矛盾性を保証できる、別の公理系が存在している。

2015-01-06 19:38:57
@quantumspin

別の公理系に保証される事で、公理系は無矛盾性を獲得する。証明に拠り、数学的に偽の可能性を排除されるこの事実こそ、東の云う『メタレベルの単一性』であるならば、この否定とは、『ある公理系の無矛盾性はその公理系自身からも、他の無矛盾な公理系からも証明できない』状態を意味すると思われる。

2015-01-06 19:48:50
@quantumspin

これより、探偵小説の文脈における『メタレベルの単一性の否定』とは『手掛かりの真偽判断は手掛かり自身からも、メタ手掛かりからも証明できない』と解釈できる。そして、例えメタ手掛かりを使っても手掛かりの真偽判断を行えないような探偵小説の実現こそ、後期クイーン的問題の正面突破に相当する。

2015-01-06 20:11:46
@quantumspin

後期クイーン的問題を正面突破する為には、いずれにしても、その前提となるゲーデルの不完全性定理を無効化しなければならない。しかし不完全性定理は定理である。従って、これを無効化したければ、ゲーデルの定理が拠って立つ、前提を破壊するより他ない。メタレベルの単一性の否定はこの一例である。

2015-01-07 20:38:54
@quantumspin

この他の、不完全性定理の前提破壊に関連した後期クイーン的問題の回避方法として、無矛盾でない手掛かりを配置する、というものも考えられるだろう。即ち、『Aが犯人である』と『Aが犯人でない』を同時証明できるような探偵小説は、後期クイーン的問題が生じない。真相を推理出来ないからだ。

2015-01-07 22:36:19
@quantumspin

ただしこの場合は、フェア・プレイ原則に反する可能性があるので、注意が必要だ。ヴァン・ダイン-法月のフェア・プレイ原則(手掛かりへの完全性、独立性、無矛盾性の要求)を採用した場合、この作品は明らかにアンフェアな作品と見なされるだろう。(幸いにも?小森の3公理には抵触していない。)

2015-01-07 22:49:58
@quantumspin

また、登場人物一人ひとりが、異なる真相を経験するような場合も、メタレベルの単一性否定による、不完全性定理の前提破壊方法であるだろう。このような探偵小説は、言うまでもないが、既に作例が存在する。京極堂による憑き物落としがそれである。憑き物落としの論理では、唯一の真相を必要としない。

2015-01-08 19:14:22
@quantumspin

憑き物落としの目的は、対象の認識を操作する事にある。この認識操作によって、対象に憑依した憑き物を落とす。つまり、対象に効果的に影響を与える推理であれば、それが唯一の真相と一致しなくても問題ない。むしろ京極堂は、この、唯一の真相が存在するという世界認識こそ、幻想である事を強調する。

2015-01-08 19:27:16
@quantumspin

京極堂シリーズと後期クイーン的問題との関係は、これまでよく、榎木津による神視点が取り沙汰されていた。しかし前述の通り、例え神視点人物を配置しても後期クイーン的問題の解決には役立たない。一方憑き物落としの論理は、後期クイーン的問題の正面突破となり得る特性を具えているように思われる。

2015-01-08 19:35:20
@quantumspin

不完全性定理の前提破壊による後期クイーン的問題の正面突破とは、つまるところ、いかにすれば探偵に手掛かりの真偽判断を諦めさせられるか、という命題と密接に関係している。真偽判断を諦めるに足る論理的な理由があれば、後期クイーン的問題は正面突破される。例えば探偵=作者としてもよいだろう。

2015-01-08 21:21:46
@quantumspin

まとめを更新しました。「公理の従属性と後期クイーン的問題」 togetter.com/li/773647

2015-06-07 11:13:35