「ふつー」とイスラーム

風刺誌襲撃というテロ、そして風刺誌を擁護する新聞などを眺めて感じたことをあまり脈絡なくまとめてみた。
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hilowmix @hilowmix

たぶん、「なんでムスリムはああも被害者意識強いんだよ、ふつーに欧米と共存しろよ」とか思っている人も多いだろう。たしかに西欧なんかはカトリックとプロテスタントで殺し合った時代を過ぎ「ふつーに共存」するのが当たり前になっている。ムスリムに違和感を持つのもわかる。

2015-01-10 09:11:28
hilowmix @hilowmix

だが、そもそも「ふつー」というのが西欧的な政教分離・ローマ法・ネイションステイトをベースとしたシステムなのだろう。そしてそれらは、キリスト教と共存する歴史の中で育まれてきた。アメリカや日本、昨今の中国などはそれぞれ特殊だが、西欧的システムと共存できる形で立ち現れた。

2015-01-10 09:18:33
hilowmix @hilowmix

しかし、イスラム圏はそれらと異なる。イスラームは部族社会に現れ、それと対立しつつ育ち、結局部族社会を包括する形で広がっていった。ときおり見られる名誉殺人や、一夫多妻制容認は、その歴史に基づいている。だがそれでも、イスラームによるタガは部族社会をより良くしたに違いない。

2015-01-10 09:29:36
hilowmix @hilowmix

しかし、そこにはローマ法的伝統は乏しい。それを補うように、イスラームは信仰の中で細々とした法的規定を設けている。また、それを個々の状況に適用する仕組み(イスラム法学者や、それによるファトワーとか)を設けている。ここでは法と信仰が分かち難く結びついている。

2015-01-10 09:34:17
hilowmix @hilowmix

また、イスラームは部族社会と対立していた歴史から、世界を「イスラームの家」と「戦争の家」に二分して理解してきた。イスラームの家は一体として考えられてきたから、その中で複数の国・政権があるというのは少なくとも当初は想定になかった。

2015-01-10 09:41:16
hilowmix @hilowmix

後代のオスマン帝国なども西欧に向かって「○○と××を統べる▲▲王へ」などと書簡を送っていた。下手をすると「国」という概念すら西欧とイスラム圏では共有できていなかった。

2015-01-10 09:43:53
hilowmix @hilowmix

そんな訳だから、政教分離もローマ法的伝統もない。ネイションステイトも何のことやら。それがイスラームにとっての「ふつー」なのだ。とはいえ、少なくともオスマン帝国解体からこっち、実態としてのイスラーム圏はそうではない。欧米的な「国」の概念を受け入れ、「法」も作った。

2015-01-10 09:47:41
hilowmix @hilowmix

だがそれらは「渋々」であったろうことは想像に難くない。また、それらと人々の意識に乖離は常に存在し続けてきた。それでも、そうしないと未開な、植民地以下の扱いをされる。ともかく植民地の地位よりはましな「独立」のため、人々はそれを選んだ。

2015-01-10 09:51:22
hilowmix @hilowmix

しかし、意識と実態との乖離は消えない。欧米との接触、文化的交流が進むほどに、「矛盾」を感じる者は増える。歴史を見れば、欧米的高等教育に触れた者たちから先鋭的なイスラム原理主義者(必ずしも過激派ではない)が多く生まれている。

2015-01-10 09:55:19
hilowmix @hilowmix

「矛盾」を欧米世界からの攻撃だ、と受け取る人々が一定数生まれる。なにせ日本ですら「欧米は本来の日本を滅ぼし、支配下に置こうとし続けている」と主張する人々はそれなりにいるぐらいなのだから、当然だろう。

2015-01-10 09:59:34
hilowmix @hilowmix

そしてそれらの人々の琴線に触れる形で「欧米の攻撃と闘え、本来のイスラームを取り戻せ」と叫ぶ者が現れる。自称「イスラム国」の自称「カリフ」なんぞは、ある意味わかりやすすぎる。「さすがにそれはどうよ?」というムスリムが大半だが、「これだ!」と飛びつく者もあらわれる。

2015-01-10 10:05:01
hilowmix @hilowmix

そんな中で、わかりやすすぎる輩に反応してイスラーム圏をまるごと虚仮にするような言動を繰り返せばどうなるか。こんどは逆の意味で「さすがにそれはどうよ?」と憤るムスリムが増えるに決まってる。

2015-01-10 10:08:32
hilowmix @hilowmix

なるほど風刺も言論の一つだろう。その自由は守られるべきではある。だが、自らの「ふつー」だけに立脚した風刺は、他者の「ふつー」を丸ごと攻撃する刃ともなる。自らが刃を振り回し、少なからぬ人々を恐怖させ、憤らせていることを自覚せねばならない。

2015-01-10 10:12:42
hilowmix @hilowmix

でなければ、言論の自由は暴力と不寛容を導いてしまう。暴力は暴力を、不寛容は不寛容を招く。それはカトリックとプロテスタントとが殺し合っていた時代と同じ愚を、世界にまき散らす行為だ。そのような行為をなどて称揚できるだろうか。

2015-01-10 10:16:05
hilowmix @hilowmix

無論、テロリストは容認できない。しかし私たちもまた、暴力と不寛容の渦をとどめ、「ふつー」の範囲を広げ、より多くの人々が共存できる世界をどのように導くか考え、実践すべきである。

2015-01-10 10:19:15
hilowmix @hilowmix

これはテロリズムに屈したり、ムスリムに屈する姿勢ではない。歴史を重ねてきた先人らへの、そして世界を引き継いでもらう子孫らへの責任である。私は、そう考えている。

2015-01-10 10:21:51
hilowmix @hilowmix

たわけなのに偉そうなことほざいてすんません。

2015-01-10 10:57:30
田代剛大(漫画家募集中) @tashirotakahiro

主権国家という概念もドイツ三十年戦争あたりからって言われていますが、hilowmixさんの意見を読んでたら、そんな概念はウェストファリア体制以降も常に揺らいでいたという国際政治学者クラズナーの主張を思い出しました RT @hilowmix

2015-01-10 12:25:33