色紙芝居 ～紙男のツイノベまとめ～

紙男 @paperman104

#twnovel 昨日、鮫に追われる夢を見たんだ。数えきれないくらい沢山の鋭い牙を剥き出しにして迫ってこられると、夢だけど凄くリアルで、凄く怖かったね。「そうなんですよ、凄く怖いんですよ。だからこれからは僕たちを襲わないでくださいね」それは無理だな。俺は鮫、お前は魚。食うか食われるかだ。

紙男 @paperman104

#twnovel この屏風はね、一見何も描かれてないように見えるし、実際何にも描かれてないんだけど、違うんだ。これは一休さんに出てきたあの屏風なんだよ。虎が出ったあとったってわけ。オークションで百万円で買ったんだ。我が家の家宝だよ。「もしそれが本当なら、ここに虎が戻ってくるんじゃないか」

紙男 @paperman104

#twnovel 足枷を着けた青年が歩いていた。鎖を引く音や重そうな鉄球が地面を擦る音が聞こえる。彼は脱獄囚か奴隷か。そんなことを考えながら彼のことを見ていると、彼と目が合ってしまう。彼は笑って言う。「僕、現実から逃げてるんです」彼はきっと足枷以上に重いものを背負っているに違いない。

紙男 @paperman104

#twnovel 雑草を抜いたと思ったらマンドラゴラだった。「ん、俺に何か用かよ」マンドラゴラはどら声で言った。叫ばないんですか。「そんな朝一から景気よく叫べるかよ」もう正午過ぎてますけどね。「夜勤明けなんだよ。だから大人しく寝かせてくれ」あ、スンマセン。私は彼を手早く土に埋め戻した。

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#twnovel 「お嬢ちゃん、カワイイね。おやつあげるから、おじさんの家においでよ」「いや。あんたみたいなキモいおじさんの所なんて死んでも行かない」「生意気なガキめ。おら、こっちに来い」男は童女の腕を引っ張った。途端、腕が取れ、そこから網が発射された。拘束された男は間もなく逮捕された。

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#twnovel ある朝起きるとベッドの傍に大きな種が落ちていた。何の種かわからなかったが取り敢えず植えてみる。一週間後、芽が出た。さらに一週間後、蕾ができた。さらに約三ヶ月、開花した。さらに四ヶ月後、小さな実がなった。そしてさらに三ヶ月後、実が二つに割れて私が生まれた。「オギャー」

紙男 @paperman104

#twnovel 金魚って、育てる水槽の大きさに合わせて成長するって話を聞いたの。実際、金魚鉢から水槽に移し変えたら倍くらい大きくなったんだ。「だからって『海で育てたらどうなるか』なんて考えるかよ」ゴメン。「ゴメンじゃ済まないだろ。どうすんだよ、もう半分くらい豪華客船が飲み込まれたぞ」

紙男 @paperman104

#twnovel 21世紀末、人類のほとんどが姿を消した。当時はエネルギー問題や食糧問題、蔓延する疫病、終わらない戦争と止まらない環境汚染…様々な問題が山積していた。それらを全て放棄し、彼らはVRの世界に逃げた。だがそこでも同じような問題にぶつかる。私はその様子を捨てられた世界から見守る。

紙男 @paperman104

#twnovel 大学の進学祝いに親から貰った腕時計には、文字盤の上に村があった。無数の家畜と少数の人々。のんびりとした時間が流れていた。やがて私は就職と共に上京した。毎日が忙しなく過ぎる中、気づけば時計の村は都市になっていた。無数の人もと無数のビル。針の進みはとても早かった。

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#twnovel 「お前もここに来ちまったか」「一瞬でブーム終わったな」「うるさい！俺は面白いんだ！時代がついてこれていないだけだ！」「お前こそ黙れ、新入り」「まぁまぁ、君もすぐ慣れるさ」ここは通称“窓際棚”。流行をとうに過ぎ、しかし返品もされずにいた本が行き着く、お先真っ暗な棚である。

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#twnovel 私は原稿用紙から呪いをかけられた。必死に書いた原稿がすべてパーになってしまう呪いだ。具体的には、原稿の中央に突如地獄まで続くような深い溝ができて、そこに向かって文字がすべて雪崩れてしまったんだ。あぁ、私の作家人生ももはやここまでか。「先生、ワープロで書いてください」

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#twnovel 車が道路を走っている。さらにその上を車が走っている。ネタが大きい寿司のような形の“道路自動車”のお陰で渋滞は劇的に解消される、はずだった。どこぞの誰かが気づいてしまったのだ。道路自動車の上に停車すればガソリンを使わないで済むと。それからは道路自動車上でも渋滞が多発した。

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#twnovel 新発売した100%林檎ジュースは、容器までもが林檎で出来ているという斬新さから大ヒットしたが、やがて“刺すだけで果物からジュースが飲めるストロー”の登場により、市場から姿を消した。

紙男 @paperman104

#twnovel 大岩さんの家は大きな岩の上に建っていた。よくこんな場所に建てましたね。「どうしてもここがいいって聞かなくて」それから三年、仕事のついでに寄ってみたところ、そこに家はなかった。気になってその場で電話した。お引っ越しされたんですか。「えぇ、家が『飽きた』と駄々をこねるので」

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#twnovel 柄の悪い患者が診察室に入ってきた。「つべこべ言わず早くこれをどうにかしろ」患者がマスクを外すと、なんと口がなかった。マスクの裏にくっつき剥がれてしまったのだ。医者は早急に彼を治療した。「本日は誠にありがとうございました」口を移植された患者はついでに言葉遣いもよくなった。

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#twnovel 今日も夕日は“昇って”きた。半年前までは夕日は“沈む”もの、朝日は昇るものだったが、“時間逆行”が始まり逆になった。原理を解明しようにも最新式の機械も退化していく。だが次第に僕たちはこのことを受け入れ始めた。そして今日は大晦日。皆が皆「開けないけれどおめでとう」と言い合う。

紙男 @paperman104

#twnovel 目で追うほど美しい女性に遭遇した。しかし何故か彼女は枯れた花束を持っていた。翌日、彼女との再会を願って待機していた。だが現れたのは目を背けたくなるほど醜い老婆だった。彼女は豪勢な花束を持っていた。それが徐々に枯れていき、老婆がピチピチに若返ったのは数分後のことだった。

紙男 @paperman104

#twnovel 雌牛「好きなタイプ？　やっぱ肉食系かな」 ウツボカズラ「最近、変な虫につきまとわれててさ」 アコヤガイ「殻に閉じ籠ってないでさ、自由に生きようよ」 アブラゼミ「生涯君を幸せにします」 自転車「これからは自分の脚で歩いていこうと決めました」 雪だるま「俺に触ると火傷するぜ」

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#twnovel 「お預かりに参りました」黒装束の男は無表情で言った。彼は忽然と手術室に現れた上に患者の枕元に立ったが、医師や看護師の誰も彼に気づかない。男は持っていた黒い箱を開けた。すると患者の胸から光の玉が現れて箱に収まった。刹那、室内に電子音が響く。その時にはすでに男の姿はなかった

紙男 @paperman104

#twnovel 「ちょっと目を離した隙にこんなに雑草だらけ。草刈機使うか」超大型の台風や竜巻が世界中の文明を崩壊させた。「うあ、虫も凄い。殺虫剤撒こう」猛毒の雨が世界中に降り、あらゆる生物が死に絶えた。「あとは耕して。あぁ、めんどくさ」度重なる地殻変動で世界は生まれたての姿に戻った。

紙男 @paperman104

#twnovel 突然の腹痛を覚えた男は公衆トイレに駆け込んだ。間一髪のところで間に合った。ホッと一息。水を流そうとして男はふと気づく。水洗のつまみの両側に“小”と“人”と書かれてあった。“大”の文字が剥げたのだろうと思い、男は笑いながらつまみを捻る。途端、男は便器に吸い込まれ、流された。

紙男 @paperman104

#twnovel 大地主様の晩餐会に招待された。ウキウキとお屋敷に行ったけど、そこには“人ならざるもの”でごった返していた。そこへ大地主様が現れた。「ようこそ我が屋敷へ。今夜は年に一度の妖怪たちだけの祭り。どうぞ人目を気にせず盛大にお騒ぎくだされ」僕は自分が妖怪であることを初めて知った。

紙男 @paperman104

#twnovel 学校の駐輪場の横にイルカが停めてあった。去年からイルカ通学が許可されたのは聞いていたが、実際にしている生徒がいるのは知らなかった。「結構増えてるらしいよ。ウチの息子の中学でも二人いる」同僚のＫ先生が行った。来年からは水道通学や電線通学も認可されるらしい。凄い世の中だ。

紙男 @paperman104

#twnovel ウチの猫ちゃんはとてもオシャレ好き。何故なら毎日のように尻尾の柄を変えているから。昨日は水玉、おとといは花柄だ。毎日自分で選んで私が着けてあげている。最近は顔と胴体の柄変えも熱い。今日のコーデは頭がライオン、胴が山羊、尻尾が蛇柄だ。ウチの子は何をしても本当に可愛いなぁ。

紙男 @paperman104

#twnovel ウサギと亀が合体した生物、それが“ウサギ亀”だ。競走中に二匹とも穴に落下して生まれた。ウサギ亀は他の動物たちから避けられるようになった。その原因を、奇抜な見た目や二面性のある性格のせいだと考えるが、最たる理由が別にある。ウサギ亀に勝負を挑まれることに嫌気が差したからだ。