ニンジャスレイヤー二次創作【ラン・コワード・ラン】#3

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

リフレックスはまずベリジェレントを確認した。気絶している。一息つき、彼女をタタミに寝かせた後で……自らの僭越な行動に気づき、青ざめた。「ゴ、ゴメンナサイ！」目を丸くしているサラマンダーに向けリフレックスはドゲザ！ギャラリーからの驚きの視線と囁きが彼を囲む。41 #4215tk

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「……面をあげよ、リフレックス＝サン」静かなサラマンダーの声に、リフレックスは顔を上げた。「気にすることはない。お前の行動は賞賛されこそすれ、咎められるものではない」「ハ、ハイ」「ついでだ。ベリジェレント＝サンを医務室に運んでやれ」「ハイ」42 #4215tk

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ベリジェレントを横抱きにし、立ち上がったリフレックスは慎重にドージョー出口へと向かう。「ああ、それと」「ハイッ！？」その背にサラマンダーの声がかかる。「ベリジェレント＝サンを医務室に運んだら、俺の元まで来るように」「……アッ、アッハイ」43 #4215tk

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……「ハァーッ……！」ドージョーを後にしたリフレックスは大きく息をついた。緊迫感から解放されたためである。（やっちまったなぁ）足取りも重く医務室へ向かう。（でも体が動いちまったんだ……しょうがねえだろ）「ン……」心中でぼやく彼の耳に、小さな呻き声が聞こえた。44 #4215tk

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リフレックスはぎょっとして腕に抱えたベリジェレントを見やる。彼女はうっすらと目を開けるところだった。目が合った。惚けたように彼を見つめていたベリジェレントの顔は、すぐに怒りの表情へと変わる！「テッ、メェ！ 何やって……痛ェッ！」「あ、暴れるなバカ！」45 #4215tk

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先ほどのカラテの痛みに身をよじらせるベリジェレントを落とさぬよう、リフレックスは苦心した。ややあってからもがくのをやめたベリジェレントが彼を睨む。「テメェ、何の真似だ」「い、医務室に運ぶところだったんだ！猥褻は一切ないぞ！」「……クソッ。離せ、一人で歩ける」46 #4215tk

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ベリジェレントの怒気に圧され、リフレックスは素直に彼女を立たせる。「医務室ってのは、こっちか？」よろよろと歩き出した彼女は……しかし、数歩歩いたところで崩れ落ち、膝をついた。「ウウーッ……！」「む、無理するなよ！」「無理じゃねえ！無理じゃ……クソが」47 #4215tk

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そのままベリジェレントは頭を抑える。痛むのだろうか。リフレックスは少し躊躇した後に、結局彼女の横にしゃがみ込んだ。「せめて肩を使え。ここでずっとうずくまってる気か？」「……チクショウが」悪態をつきながらも、ベリジェレントは彼の肩に手を回す。48 #4215tk

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ゆっくりと、二人のニンジャは医務室へと向かう。「なんだアイツ……舐めやがって」「サラマンダー＝サンはカラテのタツジンだ。俺たち程度じゃ足元にも及ばない」「お前も、アイツとやったのか」「ああ、やった」「負けたのか」「負けた」「……そうか」ベリジェレントが俯く。49 #4215tk

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「……オレはまだ、弱いんだな」ベリジェレントが呟く。「そうかもな」リフレックスが答えた。「だけど、カラテだ。ニンジャはカラテを積めば強くなれる。それは間違いない」ベリジェレントが、怪訝そうにリフレックスを見た。彼は言う。「ひとまず休め、ベリジェレント＝サン」50 #4215tk

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「……ムカつく。チキン野郎め」ベリジェレントが呟く。「調子が戻ったら、まずはテメェだ。テメェから倒す。わかったな」「わかったよ。だから少し黙れ」リフレックスの答えにベリジェレントは舌打ちした。そして、沈黙が訪れた。医務室は、もうすぐだ。51 #4215tk

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ベリジェレントを医務室に預けたリフレックスは、緊張の面持ちでエレベーターから降りた。ボンボリで照らされた短い廊下の先には、サラマンダーの居室がある。まず彼を出迎えたのはマスター位階である護衛ニンジャ、バンシーだった。「ドーモ、リフレックス＝サン。ご苦労である」53 #4215tk

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「ドーモ、バンシー＝サン。リフレックスです。サラマンダー＝サンのご指示で参りました」「うむ」リフレックスもアイサツを返す。バンシーが頷き、フスマに手をかける。「オジャマシマス」「よい」フスマ越しに声。サラマンダーだ。リフレックスは唾を飲んだ。54 #4215tk

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「リフレックス＝サンが参りました」フスマを開けたバンシーは、まずドゲザした。リフレックスも慌ててそれに習う。「ご苦労。入るがいい」「ハイ」リフレックスは立ち上がり、震える足で入室する。背後でバンシーがそれに続き、静かにフスマを閉めた。55 #4215tk

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「ベリジェレント＝サンの容態はどうか」「は。あの後すぐに意識を取り戻しました。医務室で治療を受ければ問題ないかと」リフレックスは丁寧に答える。その声は若干震えていた。サラマンダーが笑みを浮かべる。「そうか。……そう緊張するな、リフレックス＝サン」56 #4215tk

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「あの行いを咎めるために呼んだわけではない。少しばかり頼みごとがあるだけだ……まず一つ」サラマンダーはリフレックスに二つのマキモノを差し出した。リフレックスはそれをうやうやしく受け取る。「これは」「ベリジェレント＝サンに渡せ。カラテの指南書だ」57 #4215tk

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リフレックスはまじまじとマキモノを見つめる。サラマンダーが言う。「先の組手で見せたカラテを覚えているか？」「ハイ」「実際に使ってみての覚書だ。習得の役には立つだろう」そして肩を竦めてみせた。「身につけたはいいが、俺には不要なカラテだからな、あれらは」58 #4215tk

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決断的な言い切りにリフレックスは思わず舌を巻いた。「そして次だ。お前にはフューズフィンガー＝サンやミノタウル＝サンとともに、ベリジェレント＝サンの組手に取り組んでもらう」「は……ハイ」その次のサラマンダーの指示に、リフレックスは思わず目を見開いた。59 #4215tk

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「ベリジェレント＝サンの気性の荒さはあの組手でよくわかった。生半可な相手では組手でも壊されかねんからな」「いえ、しかし、私では」「お前の素質を、俺は高く買っている」サラマンダーの一言に、リフレックスは黙らされる。「よい修練になるだろう。励め」60 #4215tk

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「ヨ……ヨロコンデー！」リフレックスは感動のあまりドゲザ！サラマンダーが小さく笑みを浮かべた。「実際、お前の成長は目覚しい。パラゴン＝サンに聞いたが、ベリジェレント＝サンはキリングフィールド・ジツとやらの使い手だそうだな」リフレックスは顔を上げる。61 #4215tk

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「キリングフィールド……あれが」「実際に体験したのはお前だけだ。コロス・ニンジャクランが用いたこのジツの中では、ジツやスリケン生成が封じられる……パラゴン＝サンはそう言っていた。お前はそれを、己の実力だけで打ち破ったのだ。誇れ」リフレックスは小さく頷く。62 #4215tk

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「それと同時に、ベリジェレント＝サンもまた有望だ。カラテを鍛え上げれば、より恐ろしいニンジャとなるだろう」サラマンダーは不意に言葉を打ち切り、リフレックスを見据える。「リフレックス＝サン。強いニンジャとなるために不可欠な条件はなんだと思う」63 #4215tk

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ゼンモンドーめいた問いに、リフレックスは眉をひそめた。「……カラテ、ですか」「それも必要だろう。しかしそれ以上に忘れてはならぬことがある」「それは、いったい」「生き残ることだ」サラマンダーの表情は真剣だ。リフレックスは言葉を失う。64 #4215tk

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「ニンジャとなった以上、多くのイクサを経験することになるだろう。強くなるためには、それを経験した上で生き延びねばならん。いかに強力なジツが使えようと、カラテがあろうと。死ねば終わり」その言葉は、リフレックスの心に染み込んでいく。65 #4215tk