不知火に落ち度はない 31(浜風)

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不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ホテルのスイート。ねえ」 少しだけ苦笑いを浮かべ。 彼女は、スマホのキャンセルボタンに手を伸ばす。 それは過ぎた贅沢に思えたから。 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 00:23:24
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

件名:Re:先日はおつかれさん 本文:ホテルのスイート その文字の上に表示される『メール送信中』の文字。 「え、ちょっと……ちょっと!?」 焦ってキャンセルを押して押して押して押して。 しかしスマホはうんともすんとも言わない。 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 00:26:40
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「いや待って!? 待って!?」 ピローン、という音とともに、送信完了と表示される。 スマホの反乱である。 「ああああああああ……待ってって……言ったのに」 送信、 されて、 しまった。 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 00:30:05
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

どうしよう。 どうしたらいいのだろう。 今から間違いでした、とか送ったほうがいいのか。 それとも成り行きを見守ったほうがいいのか。 今から余計なことを書くと、ますます墓穴を掘りそうな気がする。 待て落ち着こう。 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 00:32:08
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「考えたらこの時間もきっとあの人、仕事してるだろうし」 いつもそうである。 大体あの部屋の明かりは付いてるのだ。 きっとメールを即返信するようなことはあるまい。 まずはカルピスでも飲んで、気分を落ち着けてから間違いでしたのメールを送ろう。 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 00:39:02
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

コップにカルピスを4分の1。牛乳をそこに注いで完成。 カルシウムたっぷり、明日も頑張れる気分になるドリンクだ。 いろいろあったが、これが一番自分にあっている。 そう自負する浜風である。 寒い日ならこれをホットで。 基本はアイスでいただく。 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 00:46:51
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

まあ、お酒のようなものだ。 それにお酒と違って、背が伸びるかもしれないし。 そう鼻歌を歌いながら、テーブルに戻り。 くぴりと一口。 甘いカルピスの味わいと、まろやかな牛乳の感触が口の中に広がる。 ああ、幸せ。 これでさっきのミスは全然平気だ。 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 00:53:08
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「さて、と」 ふー、と一息。背を伸ばしてから、スマホの画面を手に取る。 さっきは失礼しました、から始めようかな。 そうして無難な所に着地すればいい。 温泉宿の予約を取って欲しいと言われれば、もちろん一も二もなく予約する準備はある。 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 01:06:14
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

差出人:兵頭さん 件名:おう 本文:予約できたぞ。明日18時からな。 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 01:08:35
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ええええええええええええええ?! ちょっと、ちょっと待ってちょっと待って!?」 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 01:08:58
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

浜風は何度も見直す。 何度も何度も見直すが。 そこには予約OKの文字しか無い。 「あ、明日、明日はどうなってたっけ、明日」 震えながらに、部屋に吊るしたカレンダーを見る。 地方銀行の名前が書かれたカレンダーの日付は、4月1日ではない。 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 01:16:31
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そして兵頭提督と浜風の休暇はちょうど重なっている。 ありえない、そう思えるほどの幸運で。 これは、本当に。 もしかして本当に? 「ホテル、OK出ちゃったの?」 そうとしか書かれてない。 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 01:21:32
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

こうしては居られない。 すうはあ、と深呼吸一つ。 テーブルのコップを掴むと、口を開けてグーッと傾ける。 こくこくと喉がなり── 「ぷはあ……」 一気に飲み干した。 カルシウムと、精神エネルギーがチャージされる。 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 01:26:19
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「寝よう!!!!」 そして、そのまま布団へダイビング。 ぼっふ、と音を立てて布団は彼女をキャッチした。 明日は朝からやることがいっぱいだ。 ホテルのスイートともなれば、とっておきの服を買いに行かないと。 彼女はそう決心し、布団にくるまったのだった。 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 01:29:19

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した── #不知火に落ち度はない

2015-01-24 01:38:32
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

浜風は日の傾いた部屋の中、パジャマ姿で頭を抱えていた。 時間は15時過ぎ。 寝ようと思って布団に入ったはいいが、そのまま寝付けず悶々として気づけば朝8時まで起きていた。 そして、意識を失うように寝て起きた時間が今である。 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 01:44:29
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ここから良い服のあるお店までは片道1時間班。 往復で3時間プラス徒歩プラス選ぶ時間。 ドラえもんでもなければ到底実現不可なタイムスケジュールである。 今のままでは下着すらままならない。 一回下着を変えてしまったのが大きい。 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 01:46:32
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

今身につけてるのはよりにもよって、バーゲンで買った3枚1900円のパンツと、処分品価格のブラ。 百年の恋も一発で冷めるシロモノである。 いっそノーパンノーブラのほうがマシみたいな品揃えである。 これでどうぞめしあがれ♥ なんてどうして言えよう。 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 01:51:19
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「お願い時間巻き戻って昨日の夜まで戻して温泉宿お願いしますって言うからぁ……っ」 ゴロゴロと布団で転がりながら苦悩する。 ドラえもんの出番が待たれるが、残念ながら浜風は眼鏡をかけていなかった。 ドラえもんが来る気配は一切ない。 #不知火に落ち度はない

2015-01-24 01:56:43
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