すばる長編

クラゲ @04kurage

#100-3 ⑦ 「何？」 “確かに大倉さん目的で渋谷さんに近づきましたけど…結構本気でしたよ。渋谷さんの事” いつもと全然違うカスミちゃんがそこには居た 「ありがとう。今度は最初から素で居れる奴見つけい。その喋り方のがええで」 “ふふふ。ありがとうございます”

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#100-3 ⑧ 好きな人に気をひく為にはちょっと人と違う事も必要で 彼女の場合ちょっとそれがズレてただけ 俺に見せてくれた最後の笑顔は正直めっちゃ可愛いかったし 「あ、」 『渋谷さん？』 チラッと覗いたマーケティング部には彼女はおらんかったけど 開いたエレベーターから彼女

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#100-3 ⑨ 「お疲れ」 『お疲れ様です。どうしたんですか？』 「あぁ。経理部にな」 『そうですか。金曜日このままだとちゃんと終われそうです』 って言って笑った彼女 『また連絡しますね』 一度見送ったエレベーターがまた戻って来る 「ほな連絡して」

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#100-3 ①⓪ なるべく平常心で返事をする でも扉が閉まった直後に めっちゃ笑った俺 「会えるとか奇跡やん」 何て単純な俺 俄然やる気な俺 「よし！仕事終わりや！」 いよいよ待ちにまった金曜日 待ち合わせ場所に早く着いて彼女を待つ そんな時間も楽しくて携帯を見つめる

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#100-4 ① 何食べたいって言うんやろうか イタリアンならあの店で フレンチはあそこやな 何て考えてた "遅くなってすみません。もうすぐです" って来たからキョロキョロ見渡すと 「お、きょった」 『遅くなってすみません』 「いや。ええよ。何食べたいか決めた？」 『はい…

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#100-4 ② 「本間にこんなんでええの？」 『はい』 リクエストされたのは魚介を焼きながら食べれる居酒屋 煙いし パチパチ音はするし 「好きなん？」 『はい。地元が漁師町なんです』 「へぇー。ほな毎日魚やったん？」 『そうなんです。すみません…』 「全然」

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#100-4 ③ 幸せそうに貝を頬張ったり 魚の食べ方がめっちゃ綺麗やったり そんな姿が見れたし 変に気張る感じでイタリアンやフレンチよりよっぽどよかった あの日停電した時はほとんど表情見えんかったけど 目キラキラさせてて 純粋なんやなって思って 俺とは全然違う

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#100-4 ④ 毎週末になると違う女と飲んで その辺のホテルで何て そんな事話したらきっと幻滅されんねんやろな… 「お父さんは今も現役なん？」 海の話を懐かしそうに話すから聞いて見る 一瞬曇った表情の彼女 手にしたお酒を見つめながら 『死にました…』 そうポツリと呟いた

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#100-4 ⑤ 「すまん…」 『何で渋谷さんが謝るんですかー』 次の瞬間にはもう笑顔の彼女 「無理して笑うなや」 『無理は…』 「してるやん」 『はい…』 ついムキになってもた俺 『海が荒れて動かなくなった仲間の船を助けてる最中に大波が来て…』

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#100-4 ⑥ 真っ暗な中にいるとお父さんを求めてしまうんだと言った彼女 『あの時渋谷さんが居てくれなかったらきっと過呼吸でやばかったです』 って言った 「いくらでも助けたるよ」 “じゃぁもしもの時は渋谷さん呼びますね” 何て言うから抱きしめたくなる衝動を抑えた

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#100-4 ⑦ 「同じ方向やん」 帰り際奇しくも同じ電車やった事を知る 俺と違って1時間前に出社するらしい 『満員電車が無理で降りれないんです』 って言ったから思わず笑ってしまった 『渋谷さんって笑うんですね』 「え？」 『渋谷さんには気をつけろって皆さんが…』

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#100-4 ⑦ 俺どんな噂されてんねん 『支社から来た時言われたんです…』 「実際は？どうやった？」 『優しい人で安心しました』 優しいか… きっと君の前やからやな 並んで歩いてもいつもは女に掴まれる腕 手を取ることもせんその距離がもどかしいけど

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#100-4 ⑨ きっと今手を握られたらヤバいと思う そこから好きが伝わる位ドキドキしてんねん 中学生やあるまいし… そんな自分に思わず笑ってまう 『今日はありがとうございました。また美味しいお店があったら教えてくださいね』 「って事はまた誘ってええの？」

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#100-4 ①⓪ 『はい』 俺には眩しすぎる位の笑顔で答えてくれる彼女 下手に観光スポットとか回るのもええな 今度は休日の朝からかな 何て想いを馳せる俺 ＂今日は本当にありがとうございました。無事帰宅しました＂ またそのLINEだけで楽しく過ごした休日やった

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#100-5 ① 「おぉ、おはよう渋谷」 「村上おはよう」 「早いやん」 週明けの月曜日 柄にもなく1時間も前に出社してる俺 「まぁな。お前は何時もか」 「あぁ。いつでも飛んで帰れる様にな」 「ふーん」 村上の所は臨月に入ったって言ってたっけ 「結婚ってええけ？」

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#100-5 ② 「はぁ⁈」 いきなり言うもんやから驚いてこっちを見る村上 「いや、何もない。忘れて」 「忘れられんやろ…」 物言いたげな村上を無視して仕事に取り掛かると ちょうど出社してきた大倉たち 「あれー渋谷さん早くないですか？」 「本間や！どうしたんですか？」

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#100-5 ③ 「たまにはな」 何て言ってみる いつもより1時間早く起きて 1時間早い電車に乗った 何号車に乗ってんのかまで聞いたら流石に怪しいかなって思って とりあえず前の方の車両に乗り込んで 彼女の駅のホームをジッと見てた 惜しい… 隣やんけ わざわざ行くのも躊躇う

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#100-5 ④ 電車では諦めて 着いた瞬間に彼女を探す あ、居った ちょっと小走りになって改札出た所で肩を叩く 「おはようさん」 『あ、渋谷さん。おはようございます。今日は早いんですね』 「お、おう」 君に会うため何て言えんし 「たまにはな」 何て言ってみる

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#100-5 ⑤ 会社までの10分並んで歩く 「こっち来て観光とかした？」 『観光ですか？大きなタワーは二つとも下から見たんですけど、その他は行ってないです』 そこに行くのにも迷ったと言った彼女 「今度行ってみる？」 『本当ですか⁈』 「俺でよかったら」

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#100-5 ⑥ 『楽しみにしてます』 って言って貰えたし とりあえず頭の中でいつがいいか考える 今週は出張やしな 再来週あたり？ 一人ニヤけるのを必死に抑える 『産まれてからあの有名な夢の国にも行ったことないんです』 って言った彼女 「電車一本やん」

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#100-5 ⑦ 『一緒に行く友だちもまだ…』 俺がおるやんって言いたくなるのを抑えて 「支社から来たばっかやもんな」 何て返す 「ほなまたな」 『はい』 そう言ってエレベーターを降りていく彼女 何時もはすぐ閉めるのボタン連打やけどゆっくり扉が閉まるのを見送る

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#100-5 ⑧ 「渋谷ほんまに何もないんけ？頭の打ったんちゃうん？」 喫煙所で村上にしつこく聞かれるけど 「ええやんけ。俺かて結婚とか考えんねん」 「誰と？」 「それは…」 一瞬浮かんだ彼女の顔 「ええやんけ誰でも」 「またどう社内やろー。ほやで変な噂されんねんぞ」

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#100-5 ⑨ 「もう女精算したわ」 「はぁ⁈お前その話詳しく！」 「仕事中や」 驚いてタバコ落として慌てとる村上置いて喫煙所を出る俺 その日から出来るだけ頑張って起きて早めの電車に乗るのが日課になった俺 彼女との数十分間の為に頑張るなんて今までにないわ

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#100-5 ⑨ やけどひとつ言えるんは 「恋って案外楽しいな」 でも誰にも言わん 俺だけの気持ち

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#100-6 ① 朝の数十分間と マメにするLINEと それから数週間は出張とかこの前取った契約のその後とかで忙しすぎてそれくらいしかできんくて 休みも大概寝て過ごす日々 『渋谷さん疲れてますか？』 「え？まぁな…毎日残業やでな」 『そうですか…』