【邪悪の樹――二籠】エピローグフェイズ

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【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

此処から終わり、此処から始まる 樹は肥大し、天秤は傾いた さあ喜び給え、全てが君の前に来る #邪悪の樹

2015-01-26 13:03:27
【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

『おめでとうございます。そして、お疲れ様でした。これにて全ての儀式が完了致しました。  数多の【邪悪】の力が捧げられ、【邪悪の樹】は肥大した。【樹】は叫び、天秤は傾き壊れ去り、【邪悪】が世界に噴き出した。  もはや誰にも止められない。この世界は【邪悪】に満たされる。 #邪悪の樹

2015-01-26 18:01:43
【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

【生命の樹】は枯れ果てて、土は腐り、緑は枯れる。風は止まり、水は濁る。火の海が荒れ狂い、幾つもの雷鳴が落ちてくる。  生き物は皆、救いを求めて逃げ惑うだろう。  さあ、君よ、屋敷の外へ行くと良い!この世界は君への褒美だ!  壊すも創るも何もかも、君が決めると良い!』 #邪悪の樹

2015-01-26 18:02:52

エピローグ――『拒絶』

【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

世には数多の分割法や記譜法といった音楽様式を論じる音楽理論書がある。 その中にいわく付きとして知られる本があった。 極度に技巧を凝らした繊細かつ複雑なその理論書は、弾くどころか記すことさえ困難であるという。

2015-01-27 04:34:44
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

この理論書を理解し自分のものにできた音楽家は成功を約束され、巨額の富を得るだなんていう噂さえ立っていた。 そんなこの理論書には真っ黒に塗りつぶされて読めない頁があるという。 記したのはとある音楽家家系に生まれた1人の娘だ。

2015-01-27 04:35:54
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

彼女は類い稀な音楽の才能を持っていた。足が不自由ながらも音楽を創り上げた。 そんな彼女が突然家族を殺害、その後この書を記し身を投げたという。 そう、それこそこの書がいわくつきだと言われる所以。 真っ黒な頁は狂った娘の呪いだの殺された家族の血だの言われているが、真相は定かではない。

2015-01-27 04:36:48
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

写本されることもなく、たった一冊しかないその書は音楽家の中で話題となったが、いつしか世から忽然と消えてしまい、今や一部の音楽家の中で噂の類として存在する程度。 なお残るのは、書の名と一番最後の頁に記されていたという言葉だけ。

2015-01-27 04:37:23
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

書の名は『アルス=ケツァル』 自由の中で生きるという鳥の名を冠した書。 自由を奪われると死にゆくという鳥の名を冠した書。 そして記されていた言葉は―― ――ひとつだけ、ひとつだけあった。 どのような名器にも勝るといわれる、至高の楽器が。

2015-01-27 04:37:50
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

【貪欲】や【醜悪】だけじゃない。屋敷で過ごしてきた仲間へ。まだ見ぬ敵だった者たちへ。 ひとつ、拒絶していたものを解く。 きっと自身が、一番初めに拒絶したモノを。 享受したのは… 奏でよう。私の最後の、声を。

2015-01-27 04:38:11
【拒絶】アップレーヌング @Az2_abl

誰がいるかもわからぬ世界で響く、一つの歌声。 【拒絶】だった者は己の意識が消え去るまで、ただ一つの楽器として思いを紡ぎ続ける。 『私は不幸にも知っている。 希望は目覚めている者だけが見る夢であることを。 見えていないだけで頭の後ろにも世界があるということを。』

2015-01-27 04:38:36

エピローグ――『拒絶』

END

エピローグ――『不安定』

『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

さて、その子の話をしようか。語ることも、ほとんど無いのだけど。 その子は、力を持って生まれてきた。遠くを見通す眼を持って生まれてきた。どれくらい遠くかと言えば、うんと遠くだ。目を閉じていたって、ずぅっと遠くを見られたんだ。

2015-01-27 07:43:12
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

だからその子は、眼を布で覆われて、神様に捧げられたんだ。神様がその子を食べに来るから、祠の中に、ひとりぼっちで入れられたんだ。 その子は眼が見えなくなったから、音でしか物が分からなかった。誰かが呼びかけてくれる声を聞いて、その子は自分を知ったんだ。

2015-01-27 07:43:30
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

その子の話は、それでおしまい。強いて言うなら、その子を食べに来る神様は現れなかった。それだけだ。その子は食べに来る神様をずっとずぅっと待っていたのに、神様は来なかった。

2015-01-27 07:43:43
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

だからその子は【不安定】になったんだ。食べられる筈の【自分】が無くなっちゃったから、その子は【不安定】になったんだ。誰かが一言、そう、一言。言っていれば、違ったかもしれないね。『私はお前を食べに来たんだ』……ってね。

2015-01-27 07:44:09
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

その子の話は、それでおしまい。これ以上には、何もないよ。

2015-01-27 07:44:21

【その子の話】

エピローグ――『不安定』

END

エピローグ――『物質主義』

『物質主義』マテリアリスムス @materia_evil

それは、物心ついたその時には既に「神子」であった。 その土地での恵みの色、木々の翠と雨の蒼とをその身に湛え、その力をもって民の望むものすべてを与え、すべての民を慈しむ。そう伝説に謳われた存在。そうあることを望まれ、事実彼女はそうあった。

2015-01-27 21:42:30
『物質主義』マテリアリスムス @materia_evil

神殿へ厳重に囲われたその身はまるで籠の鳥。そうある以外の処し方を知ることのなきようにと、人の身に余るその力が『邪悪』へ堕ちることのなきようにと。 接するは穢れなき身持つ世話役の女、あるいは尊き身たる僧正。清きばかりに囲まれて、神子が『邪悪』となる隙など一分もないように思われた。

2015-01-27 21:42:50
『物質主義』マテリアリスムス @materia_evil

――清きとされるものが真に清らかであったならば、おそらく『邪悪』の一つはその芽を出すこともなかったであろう。 神子の身辺へ至った世話役のひとりは、密かに彼女を親と名乗る者と引き合わせていた。

2015-01-27 21:43:00
『物質主義』マテリアリスムス @materia_evil

神子の親は知れなかった。神の子に人の親がいてはいけなかった。故に彼女は親子の愛を知らず、彼女の知る愛はといえば、それは愛と言うよりむしろ褒賞に近いものであった。 その権能でもって他者の望みを叶えた時かけられる感謝の言葉、彼女はそれをこそ愛であると心より信じていた。

2015-01-27 21:43:26
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