扶桑型の『欠陥』とは?

実際のところ、『欠陥』というべき程のものはあったのでしょうか? という考察を、天翔さんがしておられました。 なお、SUDOさんとの会話以外の部分は、天翔さんご自身が加筆してブログに上げていらっしゃいます。こちらからどうぞ↓ http://tensyofleet.blog.fc2.com/blog-category-8.html
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天翔 @Tensyofleet

弩級戦艦の登場当時、射撃方位盤はまだ存在しない。当然、照準は砲塔側で行う必要があり、当時の英式砲塔はこうなっている。左右がそれぞれ左右砲手の、中央が砲塔長の照準口と思われる。おそらく、このカバー後端あたりには人間の頭が入っている。upload.wikimedia.org/wikipedia/comm…

2014-10-24 18:55:47
SUDO @sudo_simoigusa

@Tensyofleet カニメガネないし潜望鏡みたいなので覗いてますので、後端部の下に頭が来ます allworldwars.com/The%20History%… allworldwars.com/image/001/30th… ちょっと世代が違うけどこんな感じ

2014-10-24 19:07:02
天翔 @Tensyofleet

@sudo_simoigusa ペリスコープ式になると、砲塔上面はこうなってると思うのです。upload.wikimedia.org/wikipedia/comm… ド級のも同じでカバーだけ違うのでしょうか。。。

2014-10-24 19:10:20
SUDO @sudo_simoigusa

@Tensyofleet 頭入るサイズだとこういうサイズになるかと i60.tinypic.com/2eycbno.jpg

2014-10-24 19:16:41
天翔 @Tensyofleet

@sudo_simoigusa 図面見つけられてないので、今後の課題としたいと思います。。。砲との比較はこんな感じです en.wikipedia.org/wiki/QF_12_pou…

2014-10-24 19:30:06
天翔 @Tensyofleet

例えばこの砲塔を背負式に配置すると、下部砲塔の照準口のほぼ真上に上部砲塔の砲口が位置することになる。首尾線方向に射撃を行ったとしたら、下部砲塔の砲手はただでは済まないだろう。参考:戦艦ネプチューン後部砲塔群 upload.wikimedia.org/wikipedia/comm…

2014-10-24 18:59:55
天翔 @Tensyofleet

後にペリスコープ式の照準装置を開発し、照準口にはカバーを設けて対策としている。戦艦コロッサス後部砲塔群:upload.wikimedia.org/wikipedia/comm…

2014-10-24 19:02:57
天翔 @Tensyofleet

では、英式の流れを汲む日本ではというと、初めて背負式砲塔を持った金剛の公試時に確認をしているが、特に問題はなかったようだ。以前紹介した扶桑の公試も同じ。平賀譲デジタルアーカイブ 資料番号:2120 gazo.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/hiraga2/show?i…

2014-10-24 19:06:50
天翔 @Tensyofleet

さらに遡ると、戦艦薩摩で何やら妙なことをやっている。後部主砲の砲口直下に位置する幕僚公室の窓に筒をつけて、爆風の影響を調べているようだ。背負式配置への布石、だろうか。平賀譲デジタルアーカイブ 資料番号:2120 gazo.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/hiraga2/show?i…

2014-10-24 19:10:47
天翔 @Tensyofleet

ちなみに、アメリカ海軍は一歩先んじて、戦艦サウスカロライナで背負式中心線配置を実現している。 これに先立ち、テストベッドとしてモニター艦フロリダで背負式砲塔の実験を行ったという。日本語wikiからは記述が綺麗に省かれているが。。。ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95…

2014-10-24 19:37:15
天翔 @Tensyofleet

なお、イギリスで始めて背負式砲塔を装備したオライオン級について、上部砲塔は中心線より±15°の射撃が禁じられていた、との記述も見るが、写真を見る限り、ネプチューンあたりから照準口を変更済みのようだ。単に規則で禁じられていたのか、それとも物理的理由で不可能であったのか。。。

2014-10-24 19:40:59
天翔 @Tensyofleet

ただ、弩級戦艦の時代から80年後、戦艦アイオワが1/2番砲塔を中心線から15°右舷に指向した状態で発砲したところ、1番砲塔で電源がすっ飛んだというようなこともあり、下部砲塔が厳しい条件にさらされるのは間違いないようだ。おわり en.wikipedia.org/wiki/USS_Iowa_…

2014-10-24 19:43:31
天翔 @Tensyofleet

ところで、梯形配置と呼ばれる主砲の配置がある。弩級艦時代に限れば、艦形の拡大を抑えることを主として、なお首尾線方向への火力も確保する為のものと言える。特に港湾・修理施設や運河の制約により、幅や喫水の制限が厳しい英独で多用された。urx.nu/do4y

2014-10-26 20:00:03
天翔 @Tensyofleet

梯形配置の元をたどれば、前弩級戦艦の中間砲に行き着くことが出来るだろう。日独の戦艦のように、そのまま主砲と置き換えて亀甲配置にしてしまったものもある。ここから対角線の砲塔を撤去すれば、梯形配置となる。upload.wikimedia.org/wikipedia/comm…

2014-10-26 20:02:22
天翔 @Tensyofleet

オライオン級に至って、ようやくこれまでの幅と喫水の制限から開放され、艦形を拡大して13.5インチ砲を搭載すると共に、全砲塔が中心線配置となる。幅の増大により、前部主砲群を背負式に配置できるようになった、と見てよいと思う。upload.wikimedia.org/wikipedia/comm…

2014-10-26 20:05:32
天翔 @Tensyofleet

また、これまでどおり砲塔を舷側に配置すると船体強度に不安が生じること、防御面にも限界があることも理由であろう。upload.wikimedia.org/wikipedia/comm…

2014-10-26 20:10:30
天翔 @Tensyofleet

もっとも、英海軍にはまだ若干の迷いがあったのではないか、と思わせるものもある。巡洋戦艦ライオン級のQ砲塔―いわゆる第三砲塔―の弾薬庫配置は左舷側に偏っており、本来は舷側配置であったものを中心線配置に変更した名残、とも考えられる。 pic.twitter.com/OHHwOXgqlL

2014-10-26 20:14:00
拡大
天翔 @Tensyofleet

さて、扶桑型の計画にはこの梯形配置案がいくつか存在し、そのうちの一つがA47案である。時期的には金剛型の計画時であろう、扶桑の計画番号はA64である。平賀譲デジタルアーカイブ 資料番号:2026 A47(4/12)gazo.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/hiraga2/viewer…

2014-10-26 20:15:40
天翔 @Tensyofleet

このA47案の3/4番主砲塔を中心線配置とすると、実際に建造された扶桑の砲塔配置となる。艦形の拡大により、15インチ砲塔を中心線配置とする余裕が出来たからであるとすれば、非難轟々たる「あの」主砲配置の成立経緯として妥当なものではなかろうか。

2014-10-26 20:18:15
天翔 @Tensyofleet

A47の全長(垂線間長)615ftに対して扶桑は630ft、その差は4.6mほどで、梯形配置による恩恵はあまりないようだ。なお、扶桑の3/4番砲塔の弾薬庫配置は中心線に対して左右対称である。

2014-10-26 20:20:31
天翔 @Tensyofleet

結論として、扶桑型の砲塔配置は梯形配置の舷側砲塔が元になったもの、と言ってよいのではなかろうか。その是非は、建造当時の日本が置かれた状況を、またその後30年に渡って日本の国防を担う存在となった主力艦として、扶桑型をどう見るかによると思われる。

2014-10-26 20:26:52
天翔 @Tensyofleet

扶桑の砲塔配置をただ欠陥と指摘するものは掃いて捨てるほどあるが、なぜあの砲塔配置を選ぶに至ったか、を記述したものを見たことがない。なぜだろう。

2014-10-26 20:31:01
天翔 @Tensyofleet

戦艦扶桑。竣工から遡ることわずか10年前には日本海海戦があり、その時国産主力艦を持っていなかった日本からすれば、超弩級戦艦の建造まで長足の進歩を遂げたと言える。至らぬ点はあったと言えど、日本の古名を冠する戦艦を、十分な根拠なしに欠陥と断ずるのも悲しいものだと思う。おわり

2014-10-26 20:33:47