「ツー・シップス・オブ・ムーンライト・ナイト」

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「グッ………ハ、ハハハ！ハハハ！ハハハハハハハ！」突如、トレビュシェットが笑い出す！「何？発狂でもした？」「ハハハハハ！違ウ！モウオ前ラハ終ワリダ！」川内がトレビュシェットの言葉を訝しむと同時に、後方に控えていた大淀が叫ぶ！「川内さん！そろそろ敵の駆逐艦群に囲まれます！」 55

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ナムアミダブツ！そう、トレビュシェットが予め命じていた包囲網の縮小が、もうすぐで現実のものとなっていたのだ！「時間稼ギノツモリカ知ランガ！時間ヲカケレバ不利ニナルノハオ前達ダ！己ガ失策ヲ呪エ！」「ふーん、で？」川内は興味なさげに呟くと同時に、敵の懐に潜り込む。「エッ」 56

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「それで？イヤーッ！」無慈悲な掌打がトレビュシェットの腹部を抉る！「グワーッ！」苦悶の声と共に、トレビュシェットは空中へ跳ね飛ばされる！「その前にアンタを始末すればいいだけだ！」川内はソウル同調を一気に強める。魚雷発射管から2本のギョライ・ダートを引き抜き、腕を交差させる！ 57

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交差させたその細腕に縄めいた筋肉が浮かび上がり、禍々しいまでの力がギョライ・ダートに籠められる！トレビュシェットはその光景を畏れた。来る。確実の己を滅ぼす攻撃が！咄嗟に片腕で己を庇う！「イイイイイイヤアアアーッ！」交差し両腕が鞭めいて振るわれ、ギョライ・ダートが放たれる！ 58

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トレビュシェットは、己の防御力に自信を持っていた。だが、その自信は慢心であると断じなければならない！見よ！放たれた2本のギョライ・ダートはDNAコードめいた螺旋を描き、トレビュシェットに迫り、腕に突き刺さる！「グワーッ！」トレビュシェットは腕を切り離して逃れようとする！ 59

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だが、その行為は叶わなかった！突き刺さったはずのギョライ・ダート達は螺旋の軌跡を描き続ける！当然、トレビュシェットを巻き込んで！「グワーッ！」ギョライ・ダートはただ螺旋を描くだけではない！回転する度に腕の肉を食い破り、腹部へと迫らんとする！「バ、バカナーッ！」 60

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「油断が過ぎるね」川内はその光景を見て、誰にも聞き取れぬほどの小声で呟いた。「これがカラテだ。私の。ヤセン・ニンジャの」螺旋は鋭く、無慈悲に回り続け、遂に腕を引き千切る！「グワーッ！」やがてギョライ・ダートは腹を食い破り、突き破る寸前に、爆発した！「アバーッ！」 61

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トレビュシェットは胴体から真っ二つになり、海面へと真っ逆さまに落ちていった。（バカナ！コノ私ガ！敗レルトハ！）トレビュシェットはニューロン内で憎悪を沸騰させた。その時、ふと気づいた。（アレハ）おお、見よ！トレビュシェットの落下位置を！そこには駆逐棲姫と春雨の姿が！ 62

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（何タルチョージョー！天ハ我ニ味方セリ！）ツ級は自らの顔を封じるフェイスガードをパージする！そこには、乱杭歯が所狭しと並ぶ裂けた口が封じられていた！コワイ！（コレデ駆逐棲姫ヲ喰ライ、力ヲ補給シテ逃レル！）「最期マデ役ニ立テ人形！」トレビュシェットは涎を撒き散らしながら叫ぶ！ 63

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BLAM！「グワ…ア…！」だが、一発の砲撃がトレビュシェットを穿った。「誰ガ、人形ダッテ？」左手の5インチ連装砲から砲煙を棚引かせ、駆逐棲姫は憤怒の表情を浮かべた。「散々虚仮ニシテ！ヤラセハシナイヨ！春雨！」「うん！」駆逐棲姫と春雨の連装砲がトレビュシェットを狙う！ 64

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「ヤ、ヤメロー！ヤメロー！」トレビュシェットは、今度こそ訪れる終焉に対し、ブザマに命乞いをした。「「問答無用！」」だが、怒りに燃える二人の少女に、そんな身勝手が通じるわけがないのだ！インガオホー！インガオホー！「「イヤーッ！」」BLAM！BLAM！BLAM！BLAM！ 65

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「グワーッ！グワーッ！グワーッ！グワァアアアアアーッ！」放たれた4発の砲撃は、その全てがトレビュシェットに致命的な傷を与える！「サヨナラ！」遂に耐久力の限界を超え、トレビュシェットは爆発四散！こうして、僭主を騙る投石手は死んだ！ナムアミダブツ！ 66

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「ザマァ…見ロ…」トレビュシェットの爆発四散を見つめ、駆逐棲姫はそう吐き捨てると、海面に倒れ込んだ。「駆逐棲姫ちゃん！？」春雨は急いで駆逐棲姫を抱え起こした。よく聞けば、駆逐棲姫は寝息を立て寝ていた。「…良かった」春雨は慈しむ様に、駆逐棲姫を抱きしめた。 67

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その光景を、川内と大淀は背後から見守っていた。「ええと、あとはあの子を連れ帰れば？」「ええ、第二次渾作戦は終了ですね」「やっとかぁ」川内は溜息を吐き、体を伸ばした。「不知火さん達を呼んで、帰投しましょう」「それがいい。私は疲れたよ…」 68

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ふと、川内は空を仰いだ。そこには、瘴気一つない夜空と満月が広がっていた。……何故だかそれが、不吉のシルシに見えた様な気がした。 69

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「ツー・シップス・オブ・ムーンライト・ナイト」＃５ 終わり　最終セクション＃6 へ続く

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「ツー・シップス・オブ・ムーンライト・ナイト」＃６

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「重点！」「重点！」「気を付けろよ！」「万が一何かあったらあの筋肉ダルマに殴り殺されると思え！」「「ハイ！」」ここは、「かいもん」内部の艦娘医療ドック。1時間前、ビアク島周辺海域にて死闘を終えた艦娘達が運び込まれていた。担架に乗せられ、白雪と若葉の二人が治療室に運ばれていく。 1

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「ヒデェ言い草だ」医療ドッグ近くのベンチに座るリカルドが、医師たちの掛け声を聞いてぼやく。「人を暴力的な男と思ってやがる」「あはは…」隣に座る春雨は、乾いた笑みを浮かべた。残念ながら、リカルドが他者に抱かれるイメージは概ねあの医師達の認識と変わりないだろう。彼はそういう男だ。 2

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「まぁ、そんなことよりよ」リカルドは春雨を見た。否、正確には、春雨の太股を枕に寝息を立てる半機の少女を、駆逐棲姫を見た。「コイツか。ここのボス様は」「まぁ、そんなところです」春雨は駆逐棲姫の神を優しく梳く。「そうしてると、まるでお前さんの妹かなんかだな」率直な感想であった。 3

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「そうだと…嬉しいですね」春雨は微笑みながら駆逐棲姫の寝顔を見た。その顔は慈母めいて穏やかであり、先程まで勇ましく戦っていた戦士であるとは、誰も思わないだろう。「まぁ、これからどうなるかは分からんが、精一杯根回しはしてみるさ」「本当ですか！」「無理させた分の褒賞は与えんとな」 4

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「やった！」春雨は小さくガッツポーズを取って喜んだ。リカルドはそんな春雨を微笑ましく見ていたが、不意に、駆逐棲姫の手が視界に入った。その手は指先からボロボロと崩れ去っていた。「…令官！リカルド司令官！」「ん？」春雨の声が、リカルドを引き戻す。「どうかしましたか？」「いや…」 5

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リカルドはもう一度駆逐棲姫を見た。その手は崩れてはいなかった。（気のせいか…？）「お疲れですか？」春雨はリカルドを案ずるように言った。「アー…まぁ、最近デスクワークだけだったからな。カラテ不足なのかもしれん」「…もし良かったら、私に稽古をつけてくれませんか？」「どうした急に」 6