「ツー・シップス・オブ・ムーンライト・ナイト」

第2次渾作戦開始直前、春雨は魂に訴えかける声を聴く…
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ツー・シップス・オブ・ムーンライト・ナイト」#1

2015-02-26 00:49:14
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

…01来イ101来01イ0101ココマ010デ010来イ10春サ10メ1来イ1010春雨010ココマデ01010「春雨!」010101010101「エッ」 8

2015-02-26 00:50:24
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

大声を掛けられ、春雨はビクッと体を震わせた。「どうしたの?ぼぅっとして」白露は気遣うように声を掛けた。「何度呼んでも反応しないし」「御免なさい」春雨は白露に謝罪し、心配させぬよう笑みを見せた。「大丈夫です。何でもないですよ白露姉さん」「そう?ならいいんだけど」 9

2015-02-26 00:51:38
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

疑わしげな視線を向けながらもそれ以上の追及をせず、白露は隊列に戻る。 春雨もまた、隊列に戻ろうとした。だが、春雨は足を止める。そして、振り返り、見た。夜の海を。先程聞こえ、そして今だ聞こえる“声”の方を。(010来イ10春サ10メ1来イ010ココ10マデ01010…) 10

2015-02-26 00:52:44
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ノイズに塗れたそれは、声、或いは思念だろうか?春雨は、何かを感じていた。自分を引き付け、呼ぶ何かを。得体のしれぬ焦燥感が、胸中を苛む。春雨はギュッと胸の前で右手を握りしめる。その目からは、チロチロと青みがかった黒い光が漏れる。尋常ではない様子であった。 11

2015-02-26 00:54:39
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

視線の先はどこだ?自分が今いるのはトラック泊地だ。月や星の位置から考えてあの場所は…「行かなきゃ」そこまで思い至り、弾かれたかのように春雨は走りだした。遠くに白露や隊の仲間の声が聞こえる。だが、春雨は足を止めなかった。 12

2015-02-26 00:57:14
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「行かなきゃ」訳も分からぬ焦燥感が春雨を苛み、ソウルを駆り立てる。目指す場所は判らない。だが、会うべき人は判った。第2次渾作戦、作戦指揮官リカルド・ベレンゲル大将。それが、春雨が会うべきとした人物。「行かなきゃ」春雨の目から、依然として青みがかった黒い光が漏れる。 13

2015-02-26 00:59:02
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「…会わなきゃ!」だが、それも一瞬で掻き消える。瞬きの間に赤き光が満ちる。覚悟と、戦士の決意の光が。ソウルの輝きが。彼女は、焦燥を抱きながらも、己の意志で走る。脳裏にソウルの、“春雨”の最期の記憶をリフレインしながら。 14

2015-02-26 01:00:40
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

…同時刻、ビアク島周辺海域。 15

2015-02-26 01:01:02
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「来ルカ」青みがかった黒と紫の光をたたえる半機の少女が、洋上で微笑を浮かべ呟く。その太腿から下は無く、浮遊用と思われるユニットが腰を覆っていた。そしてその顔は…おお、ゴウランガ。その顔は春雨と双子めいて瓜二つではないか! 16

2015-02-26 01:02:11
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「忌々シイ艦娘ドモ…」呟きと同時に彼女の周辺に駆逐艦級深海棲艦が群がる。少女は愛おしげにそれらを撫でた。…彼女は駆逐棲姫。軍艦「春雨」そのものを深海棲艦化させた規格外存在。…そして、駆逐艦娘春雨と、ソウルを同じくする者。 17

2015-02-26 01:03:51
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「来ルガイイ」駆逐棲姫は、朧げな瞳をトラック泊地の大規模作戦臨時基地に、そこに居る春雨に向け呟いた。「ソシテ、堕チロ」駆逐棲姫は、酷薄な笑みを浮かべた。そして、ふと駆逐棲姫は空を見た。空は深海棲艦の出す黒い瘴気に濃く覆われ、月は見えなかった。 18

2015-02-26 01:05:33
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

トラック泊地に臨時に設立された大規模作戦「渾作戦」臨時作戦司令本部。今ここには各地から有力な艦娘や提督、そして充実した装備や資材が集められていた。本部壁面に掲げられた「五省」「一大浄化作戦」「銀蠅は解体処分」等の物々しい文言が極太明朝体で書かれ、サーチライトが夜空を焼く。 20

2015-02-26 01:10:25
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

そして、本部内には道場が設置されていた。艦娘のカラテトレーニング用である。今、この道場内で、一組の男女が向かい合っていた。それを見守るかのように下座には提督や艦娘が何人かが正座しており、上座には凛としたアトモスフィアの女性が赤の旗と白の旗を持ち佇んでいた。審判である。 21

2015-02-26 01:11:41
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

そして、これより戦いを為す選手側。赤の旗側に立つのは男。褐色の肌にオールバックの灰髪、青い瞳。左頬に目立つ古傷。白い旗側に立つのは女。ツーサイドアップの茶髪に、茶色の瞳。大柄な男と比べれば頼りなさげなほど小柄だ。双方柔道着を身に纏い、刺すようなアトモスフィアが満ちる。 22

2015-02-26 01:13:19
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

これから始まるのはただの壮行試合である。殺し合いではない。だが、双方共に手を抜ける相手ではない、と考えていた。そして、手を抜くことがシツレイであるとも。「赤、リカルド。白、川内。双方構え!始め!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」 23

2015-02-26 01:15:39
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

審判たる神通がイクサの始まりを告げる。カラテシャウト共に、双方が突撃した。凄惨なるチョップやケリ・キックの応酬が嵐めいて恐怖を描く。シャウトの雷とカラテの烈風吹き荒ぶ悍ましい嵐だ。その応酬は互角!幾人かの提督と艦娘は、その光景に畏怖と驚愕の感慨を抱き、息を飲んで見つめた。 24

2015-02-26 01:17:28
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

艦娘は、その身に船魂の分霊を降ろした、超人的存在である。憑依の産物して、船魂そのものが在りし日に誇った馬力を完全にではないが発揮することが可能であり、通常、常人では勝つことのできない存在である。今、リカルドとカラテ応酬を繰り広げる川内も当然艦娘だ。 25

2015-02-26 01:18:57
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

だが、リカルドと川内のカラテ差は互角!彼もまた超人!その正体は、人知を超える獣を狩る者!絶対強者の逆鱗に抗う者!人と自然の狭間に立ちしモンスターハンター!ハンター筋力とハンター耐久力を持つ人々の一人! 26

2015-02-26 01:21:44
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」 川内の回し蹴りが美しい弧を描き、リカルドの首を狙う。 「イヤーッ!」リカルドはその蹴りを右腕を盾とし防ぎ、同時に強く踏み込み、左チョップ突きを放つ。おお、見よ!これぞリカルドの修めるヨロイ・カラテの基本ムーブ!防御即反撃のカラテ・ムーブ! 27

2015-02-26 01:23:27
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」川内は己の眉間を割らんとばかりに迫るチョップ突きを右手を添えて逸らす。同時に素早く左脚を戻し、体全体を左回転!その勢いで今度は右脚の回し蹴りが首を狙う!先程と同じと思うなかれ!この遠心力を利用した回し蹴りの速度は通常の回し蹴りの2倍近い速度だ! 28

2015-02-26 01:25:27
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」リカルドは素早く左腕を盾としこの回し蹴りを防ぐ!だが、先程よりも勢いのある蹴りが受けた左腕を痺れさせる!鎧無くばヨロイ・カラテは本来の堅牢さを発揮出来ない!痛みを感じつつも、リカルドは己がハンター耐久力で耐え忍び、右手で唐竹チョップを放つ!「ヌゥ…イヤーッ!」 29

2015-02-26 01:27:30
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

だが、痛みに耐えるというワンクッションを置いたことにより、狙いが僅かに遅い!「イヤーッ!」川内はチョップを電撃的に避けると同時に、右足を降ろしワン・インチ距離まで踏み込む!「イヤーッ!」「グワーッ!」そして、踏み込みと共に放たれた川内の掌打が、リカルドの胸を打ち据える! 30

2015-02-26 01:29:29
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「1本!そこまで!」白旗を掲げ、神通が試合の終了を告げた。川内のワザアリである。川内はニヤリと笑い、リカルドは打ち据えられた胸を撫でた。 「やりぃ」「やるじゃねぇか」「そっちもね」そこには先程のサツバツとしたアトモスフィアは無く、朗らかなアトモスフィアが代わりに満ちていた。 31

2015-02-26 01:36:56
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