rsbs日誌#41

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　無線機のスピーカに潜水艦艦娘の指示が入った。『鋼鉄の魔女、微速にてそのままドックにお進み下さい』「こちら、鋼鉄の魔女了解。前進微速」「前進微速ヨウソロー」カランカランとテレグラフが鐘を鳴らし、船足が緩くなる。スポットライトで照らされたドックは青く明るく輝いていた。

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#rsbs日誌　「…ほう。これが噂に聞くメガフロートの巨大潜水艦ドックか」有視界カメラから送られてくる何処か神々しい光景を目の当たりにした武蔵の言葉にわしは頷いた。「Sクラスを誇る巨大潜水艦を収容できるドックはそうは無いからのう…似た様なメガフロートが後４つ、陸の港では５つか…」

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#rsbs日誌　「提督意外にも居るのか？巨大な潜水艦を持っている者が」「おるよ。まぁ全部合わせても今の所１５隻程じゃがな…」『此方指示艦のイムヤ。位置確認、投錨の後浮上して下さい』「此方鋼鉄の魔女、了解。投錨し浮上する」ゴトン…と音を立てて巨大なアンカーがドックへと降ろされた…

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#rsbs日誌　「ヴァールガイスト浮上。メインタンクブロー。ゆっくりとじゃ」「メインタンクブロー了解。タンクスロー」ボゴン…と圧搾空気がメインタンクの海水を押し出し、空気で満ちて行く。浮力を与えられたわしの化け物鯨がゆっくりと海面目掛けて浮き上がってゆく…宛ら、神話の怪物の様に…

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#rsbs日誌　海中総排水量８万トンを優に超すであろう巨体が、海水を押しのけてその姿を現す。待機していた作業員や艦娘達が息を飲む大きさの巨体が、静かに佇んだ…「クルー諸君、ご苦労様じゃよ。半舷上陸。４時間交代じゃ。前半補給作業に当るクルーは甲板にて待機。わしは物資を注文してくる」

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#rsbs日誌　舫が結ばれ、巨体がドックに体を休ませる。全長、全幅においてもドックに余裕は存在したが、その巨体さ故に何処か窮屈にさえ感じさせていた。「艦長の比良坂じゃ。有り難く寄航させて頂いたのじゃよ。補給物資の担当官は何処かのう？」タラップを渡り、敬礼を交わしてわしは問うた。

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#rsbs日誌　「お久しぶりね魔女さん。今回はどういったご用件？」長良型の艦娘、五十鈴がタブレット端末を片手に挨拶を交わす。わしもまた小さく会釈した。「21インチのMk-62高速魚雷と12.75インチのマルチ弾頭ロケットと水中ロケット砲弾じゃな」取り出した帳簿を眺めわしは呟いた。

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#rsbs日誌　わしの言葉を受けて端末を操り、在庫を調べる五十鈴。暫しして…「あぁ…御免なさい。他の弾薬は都合がつくのだけども、Mk-62だけ無いわねぇ…Mk-60魚雷なら問題なく降ろせるのだけども」「うぬ…Mk-60か…あやつは誘導性能が今一なんじゃよなぁ」わしは頭を抱えた。

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#rsbs日誌　わしが暫し如何した物かと悩んで居ると五十鈴はそっと近付き、静かに耳打ちしてきた。その表情は、正に商売人である「実は…余り大きな声では言えないのだけども、うちのメガフロートの自衛用のMk-62なら売ってあげる事が出来るわよ。料金割り増しだけど」「…幾らじゃ？五十鈴」

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#rsbs日誌　「五割増し…と言いたいけれど、お得意様の魔女の財布が遠のくは辛いわ。通常の三割五分増しでどう？」「…うぐ…痛いのう」「じゃぁ、食料の補給品込みで！」「買った。一括払いしようぞ」「有難う御座いましたー！」万円の笑みでキラキラとした笑顔を向ける五十鈴にわしは苦笑した。

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#rsbs日誌　金銭の取引を終え、わしは武蔵と由良を連れてメガフロートの上層へと上がった。「…ふむ。活気が強いのだな」武蔵は階層の空間に広げられた賑やかな市場を眺め…呟いた。「面白かろう？増改築の果てに珊瑚の様に育ったのじゃ…海を行く人や艦娘、悪党問わずに商売をして居る…」

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#rsbs日誌　「気になるのだが…大本営は余り良い顔をしないだろう？悪の温床に為りかねないのだから」武蔵の言葉にわしは頷いた「尤もじゃな…じゃがしかし…此れ程の空間をどうやって検閲する？隠された空間は巨万とあるのじゃ。其れに一度憲兵隊が踏み込んだ所で、迷子になってお仕舞いじゃよ」

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#rsbs日誌　「…世の中、儘ならんのだな」「そう言う物なのよ。世の中、清い水だけでは生きてはいけないの。清濁併せ持たないと…魚も私達も生きてはいけない。悲しいけどね」由良が武蔵の背中をそっと撫でてやりながら答えた…「まぁ、わしらも汚れ仕事ならジャンジャンやっとるからのう…」

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#rsbs日誌　「…やはり世の中は難しい…必要とは言え悪事か…」眉間を押さえ唸る武蔵にわしは声を掛けた。「なに、無理に今理解する必要はない。何れ解る時が来るじゃろう。何れな…けうも立派に社会勉強出来たの。武蔵」「武人の道も楽ではないな…」「ゆっくりで良いのよ。ゆっくりで…ね」

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#rsbs日誌　「千里の道も一歩からと言う。武蔵や。強い心を育むがよい。お前さんは心が成熟仕切っておらんからの…」「恥ずかしい限りだ…砲雷撃戦ならば他の艦娘と引けは取らないのだが」わしはくすくすと笑った。「なぁに…誰も万能の儘生まれては来ぬよ。気にするでない。わしの益荒男よ…」

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#rsbs日誌　そうしてわしらは階層をエレベータで昇り、とあるフロアへと足を踏み入れた。セキュリティカードを端末に走らせ、わしは重々しい扉を開く。部屋には先客が二人、円卓に座しておった…「やぁ比良坂。待って居たぞ」「思ったより遅かったのね」先客の言葉にわしは肩を竦めて見せた

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#rsbs日誌　「渋滞に引っ掛かってのう…ヨランダ。千夜。元気にしておったか」快足のヨランダ。汐読みの千夜。わしの友にして提督であり、名の知れた潜水艦乗りである…今回このメガフロートに立ち寄ったのは他でも無い。こ奴等に呼ばれたからじゃ。尚、千夜は可愛い顔ながらオカマである…

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#rsbs日誌　「嗚呼、下は大分混んでたからね…さておき、呼んだのは相応の理由がある」ヨランダがわしに向けて冊子を投げ寄越した「最近、潜水艦による私掠行動が嫌に目立つ。しかし潜水艦の数はあれども奴等の親玉が一向に見付からない」「基地も無ければ母艦もない。困ったちゃんなのよ」

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#rsbs日誌　「それでなんじゃ。炙り出せとでも言うのかや」わしは椅子にどっかりと腰掛けながらぼやいた「ビッグエコーズの他のメンバーは艦の整備中や他の業務で手が放せない。私達三人だけなのだ」ヨランダの言葉にやれやれとわしは手を振った。そしてボヤく「報酬は出るんじゃろうなぁ？勿論」

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#rsbs日誌　「勿論出るぞ。希少金属のインゴットを大量にな」「具体的には幾らぐらいじゃ…？」わしの問いに千夜はそっと耳打ちした「あんまり大きい声では言えないけれども、ざっと数百億ぐらい」「…乗った」やれやれと腰を上げ、武蔵と由良に行くぞと呟き、わしはヨランダと千夜に背を向けた。

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#rsbs日誌　「もう行くのか？」ヨランダの問いにわしは小さく振り向いた「海賊退治は早い方が良いじゃろう？依頼主もそう思っている筈じゃ」「せめてお酒の一杯でもやっていけばいいのに」「悪いのう千夜…仕事の話の後で呑む気に成れぬよ」わしはそう言い残すとセキュリティドアを超えて消えた…

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#rsbs日誌　「補給作業、慌てず確実に！」「弾頭を扱う時は丁寧に！時間を惜しまないで！」わいわいガヤガヤと補給ドックは賑やかであった。わしはその様子を艦橋から眺め、ぼんやりとサンドイッチを貪る。胡瓜とツナのサンドイッチが美味じゃ。「提督。途中報告に上がりました」白雪が現れた。

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#rsbs日誌　「マルチ弾頭ロケットと水中ロケット砲弾の補給は完了。あとは魚雷の詰め込み作業が終り次第出航出来ます。作業終了の予測時刻は２０４５時です」「うむ…報告ご苦労様じゃ。手透きになった物から夕食を取らせるのじゃ。全員の小休止が終り次第出航する」「了解しました。所で…」