「千の想いを」~最終章 最終話「合流」前編~
- mamiya_AFS
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起き上がった矢先に間宮が再度、人体の間接を無視した動きで蹴られる。 伊吹も砲撃をかわす事が叶わずに爆炎に呑み込まれた。 目を見開いたまま棒立ちになった千代田が、海上に取り残される。
2014-08-02 23:50:37感情の伴わない紅い眼球が千代田を映し、何の躊躇いも無く砲口を向ける。 避けないと。 そう思いはしたが、彼女の感情が次いで呟く。 『避けて…その後どうするの?』と。
2014-08-02 23:52:21千代田と敵を結ぶ射線上に天龍が飛び出し、砲撃をもろに喰らう。 右腕が使えない彼女は防御する事も半端にしか叶わず、元々帯びていたダメージと重なり意識を奪う。 煙を上げてゆっくりと海上に倒れていく友人を見ても、千代田はやはり動けない。
2014-08-02 23:57:27千歳が千代田の肩を掴む。何を告げようとしたのか、姉本人も答えが見付けられず、正解へと思考が及ぶ前に鋭敏な彼女の耳が敵の砲撃音を捉える。 視力はいまだに無い。 それでも、妹の身体を押し退ける事はできた。自身の回避は失う事になるが。
2014-08-03 00:01:08千歳に突き飛ばされ、ずぶ濡れになりながら顔を上げれば、既に満身創痍だった姉が火に包まれて吹き飛ばされる光景が見えた。 何が最善なのか。 夕張はそう聞いてきた。 わからない。今となっては何を目指していたのか、思い出せない。 この、光景の為だろうか。
2014-08-03 00:04:21この時の為に樫野がいたのだろうか。 この時の為に常盤がいたのだろうか。 この時の為に龍田がいたのだろうか。 この時の為に伊吹がいたのだろうか。 この時の為に間宮がいたのだろうか。 この時の為に夕張がいたのだろうか。 この時の為に天龍と姉がいたのだろうか。
2014-08-03 00:05:57うずくまったまま叫ぶ千代田を脅威とは見ていないのか、怪物はちらりとしか残った艦娘を見ずに、提督が乗った船舶を見上げる。 殺意も破壊衝動も瞳に映りはしない。 奴らにとっては、ただの『行為』。
2014-08-03 00:10:12一発。 ただ一発撃てば、あの船を沈められる。 それだけを怪物が理解した。 それだけで充分に奴らの世界は形を為す。
2014-08-03 00:12:23なので視界の隅で千代田が立ち上がり、姉や友人を無視して突っ込んでくる事への反応が遅れた。 遅れたと言ってもほんの一刹那にも満たない時間ではあったが、たいして動きの速くない千代田にとっては、有難いまでの時間である。
2014-08-03 00:15:11砲塔が向きを変える。 俯いたまま突っ込んでくる艦娘へと。 砲撃。 慈悲の無い一撃は、容易く獲物を仕留められる。 はずだった。
2014-08-03 00:16:41移動の速度はそのままに、強引に身をよじって紙一重で砲弾を避ける。 「龍田のマネ」 足元に接近させた甲標的の1つを起爆させ、爆風で加速する。 「常盤のマネ」 迫る。 千代田が、走る。
2014-08-03 00:18:35間髪無く打ち込まれる次弾を、左腕を盾にして掻い潜る。使い物にならなくなるだろうが、知った事ではなかった。 「夕張なら耐えられる」 敵が動く。滑るように後退していく。逃すまいと千代田がただ走る。 「伊吹なら諦めない」
2014-08-03 00:21:29砲撃の嵐を、ひたすらかわし続けて接近していく。 視界はもはや当てにしていなかった。感覚だけで動き続ける。 「天龍、力を貸して」 爆炎の向こうにいるだろう敵の位置と動きを、思い浮かべる。どう動くか、考える。 「千歳お姉、あたしを助けて」 血があふれる熱すら今は忘れる。
2014-08-03 00:24:001発の甲標的が敵の足元で弾け、動きを止める。 「樫野、ありがとう」 跳ぶ。武器は無い。右腕を思いっ切り振りかぶる。 「間宮さん、ありがとう」 力は無い。自信も、無い。
2014-08-03 00:25:48顔面を、殴りつける。 後の事を一切考えていないやぶれかぶれの一撃は、勢いだけはよいせいか、相手の首を傾けさせるくらいには威力があった。 無論、倒せられるわけもないが。 「これが最善の未来…?」 呟く。
2014-08-03 00:28:00