通勤電車

PoKo @Poko8_m

【通勤電車302】彼女＊side 「旨そうだな！メシ。これとか、これお前好きやろ？」 「うん、侯くん、私、ビール注ぐよ？」 「ありがと。お前も飲むやろ？それより、今日…大丈夫か？体調とか。いつも以上になんか、ボケーッてしとったからさ」 「大丈夫だよ。でも、いつもは余計！」

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【通勤電車303】彼女＊side 「久々にあちこち動いたから、疲れただけ。いつもより早起きだったし」 「なら、えぇんやけど。それとも、夜2人きりやって思って、ドキドキしてたとか？」 「そんな…」 ビール瓶を勢いよく倒す。 「全く…何やっとんねんな」 って侯くんに笑われる。

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【通勤電車304】彼女＊side 急いで台拭きで拭くけどテーブルから零れ落ちたビールで太ももの浴衣のあたりが濡れて気持ち悪い。 「ごめんね、侯くんちょっと着替えて来る」 「おん…。先に食うてるな」 そう言って隣の襖を開けると、もう布団が、2組隣同士近い位置に敷かれて居て。

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【通勤電車305】彼女＊side 着替えるために、急いで閉めた。 浴衣の帯を外したと同時くらいに後ろが襖の開く、スーッという音と光が差し込む。 振り向くとそこには侯くんが立っていて。 「脱がす手間、省けたゎ…。やっぱり、飯より先に、お前やな。ずっと、我慢しとったからなぁ」

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【通勤電車306】侯隆＊side 着替えるために彼女が隣の部屋に入る。 薄暗い部屋に浴衣を羽織った下着姿の彼女が驚いた顔をしてこっちを見ていた。 布団の上に押し倒して、組み敷く。 「ずっと…。こうしたかった…」 そう言って、彼女の手首を押さえつけてキスをしようとしたら、

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【通勤電車307】侯隆＊side 顔を逸らして、嫌だと拒否をする。 ある意味、賭けやな…と思って恐る恐る聞いてみる。 「お前さ…。俺はダメで大倉はえぇの？」 何で知っとるん？ って顔をして俺の方を見るあいつ。 「やっぱり、大倉とやったんか」 否定も肯定もせぇへんのか？

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【通勤電車308】侯隆＊side 「お前が結婚すんの俺やないんか？なのに何なん？何考えてるん？お前は俺のやろ？絶対に大倉だけには渡さんからな」 涙目の彼女を見て、自分でも情けないくらいに逆上した。 大倉と彼女が親しくなるに連れて、彼女の気持ちが俺からどんどん離れていたこと。

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【通勤電車309】侯隆＊side だけど、それを認めたくなかった自分と昔…彼女を取られた過去のトラウマから来る大倉だけには…そう思う自分。 こいつのこと… 好きな気持ちは変わらへん。 好きやけど、気持ち以上に自分の意地とかプライドの方が今は勝ってる。 そんな気がすんねん。

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【通勤電車310】侯隆＊side もし、あの時…。大倉と出会わなかったら、きっとこういう気持ちになることもないまま、こいつと結婚してたんやろな…なんて思う。 「もう、ええゎ。別れよ。婚約解消。俺らタイミング悪かったよなぁ…」 「えっ？」 驚いた顔をして俺の方を見るあいつ。

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【通勤電車311】侯隆＊side あいつの両手首を離して、立ち上がって、カバンから携帯を取り出して、電話をする。勿論、相手は… 「大倉？今どこに居るん？ちょっと温泉街まで迎えに来おへん？」 今回も完全に俺の負けやな。 お幸せに。 pic.twitter.com/ae02FWlO5k

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【通勤電車312】忠義＊side 横山くんからの電話を取るとあいつを迎えに来てって。 事態がよう呑み込めへんかったけど、2人に何かあったことはわかった。 多分…そういうこと？でも… 「迎えには行けへんゎ。これから、仕事で日本発つねん」 1週間前、新しい会社で働き始めた。

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【通勤電車313】忠義＊side 社長にNYまで来るように言われた。彼女のことも大事やけど… 漸く仕事のスタートラインに立った。 仮に彼女を迎えに行くとしても、今はまだ… 「迎えには行けへん」 それに、相手が横山くんやから、俺… 彼女を諦める決心が着いたようなもんなのに。

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【通勤電車314】侯隆＊side “ごめん”って電話口で一言だけ言って、プーップーッと電話が切れた音が鳴る。 「なんなんあいつ」 仕事で海外？大倉は仕事より、こいつの方が大事やないん？ ホンマに好きな奴やったら…仕事なんか放り出して、直ぐに向かうと思うんやけど。ちゃうの？

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【通勤電車315】忠義＊side 飛行機の搭乗口近くのソファに座って冷静になって考える。 あんな電話して来るって、別れたってことやんな？ せやけど、今の俺は彼女よりも仕事を選びたい。やっと掴んだチャンスやし。 考え方が甘いんかもしれへんけど。 もし、次に彼女に会ったときに…

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【通勤電車316】忠義＊side その時に、自分の気持ちを伝えたい。 そう思って、忘れられんように彼女にLINEした。すぐに既読になったけど、返事はなかった。 せやけど、また子供の時みたいに彼女を好きになるなんて思わんかったな。 pic.twitter.com/TzQo4w2PMI

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【通勤電車317】彼女＊side あの日に迎えに来なかったのは、忠義くんらしいなって思った。 ちゃんと、自分のしたいことを始められたんだねって思った。 それに、ちゃんと直ぐに、フォローの連絡が来るのとか。 でも、そのLINEに書かれていた内容に直ぐに返信出来ない自分が居る。

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【通勤電車318】彼女＊side 未だに私の薬指には侯くんからの指輪がはまっている。 侯くんに返す。もしくはお金払うって言うのに、お前にやったもんやから、やるって言って聞いてくれなくて。 「大倉を待つ気なら、それつけとけば男性抑止力にはなるで？この人には彼氏おるんやなって」

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【通勤電車319】彼女＊side 気がついたら、桜も散って季節は少しずつ夏に向かって行って居る。 なんとなく気まずかった錦戸くんとも、徐々に前みたいに話をするようになって。 時間がだいぶ経ったように感じる。 でも、私は未だに忠義くんにもらったLINEの返事が出来ていない。

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【通勤電車320】彼女＊side 今は迎えに行けないけど、必ず迎えに行くから待ってて。 それが忠義くんからのLINEの内容で。 待ってるなんて、出来ないから、私から会いに行く！って本当は言いたくて。 でも、言い出せなくて。どこかで偶然会えるんじゃないかって、無駄に期待して…

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【通勤電車321】彼女＊side 2人で行ったラーメン屋さんに無駄に通って、体重が少し増えた。 会わなくなってからも、同じ時間の電車に乗って仕事に向かう。何やってるんだろうと自分で思うけど、自分の気持ちを伝えられなくて。 今日もまた仕事帰りにラーメン屋さんに足が向いていた。

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【通勤電車322】彼女＊side いつものように店に入ると、聞き覚えのある低くて優しい声。特長ある笑い方。 遂に幻聴までするようになったのかな？ 「せやけど、ここすばるくんの家って思わんかったゎ」 一瞬、目を疑った。 何で…？ pic.twitter.com/mWnURDvFjn

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【通勤電車323】忠義＊side 「久しぶり」 「何で？」 目の前にずっと、会いたかった人。 「ん？待っとるって連絡したのに何も連絡来うへんからさ。いろいろ考えたんやけど、せやったら、もう…会いに行かなあかんやろって思ってん。だけど、バタバタしとって、遅くなってごめんな」

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【通勤電車324】忠義＊side こいつビール、餃子、ラーメンで酔っ払って、泣いてめんどくさいゎ。いい加減にせぇって思って、ヨコに連絡したら、大倉やないとあかんって言われてん。 客やからよう言われへんのやけど、軽く営業妨害やから、早よ来てやって、すばるくんから連絡をもらって…

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【通勤電車325】忠義＊side それは従姉の結婚式で実家に帰ってくる予定のあった少し前。 横山くんに“待った”くらってたから“待って”はあかんかったよな…って反省してた。でも、俺からは待ってしか言えへんし。 だから、返事も何も来ないし、あいつなりに考える部分あるんかなぁ…

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【通勤電車326】忠義＊side そう思うと何度も連絡するのもな…って思って連絡出来んくて。 変なとこでヘタレ出るからな、俺。 「暫く見ぃひんうちに…肥った ？」 さっき、少し泣きそうな顔しとったのに、いきなりどつかれた。 「お客さん、ご注文は？いつものでええですか？」