"青葉の取材手帳"×"不知火に落ち度はない"『心底の傷を癒すのは』

水凪月/予備垢 @miduki_nijiba

辺りを見回していると、栄一兄様と目が合う。 栄一兄様が手招きをしたのを見た私は、青葉ちゃん達をその場に残して栄一兄様の元へと向かった。 119 #落ちぬい二次

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「今兵頭さんと鷲塚さんと話をしていたんだ」 すぐそばには兵頭さんと北上さん、鷲塚さんの姿もあった。 「確かに父さんが鷲塚さんを嫌っていたのも分かる気がするよ」 「栄一兄様はどうですか？」 120 #落ちぬい二次

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「確かに鷲塚さんの考え方は僕にも受け入れることは出来ない。 けれど、それもちゃんとした戦法であることは確かだからね。 外部の人たちに押しつけたりするわけではないのなら、別に構わないんじゃないかな」 121 #落ちぬい二次

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「隆玄さんはやや頑固なところもありましたからね」 眼鏡を直しながら鷲塚さんが言う。 「『貴様は悪魔に魂でも売ったか』とか言われたこともありましたよ」 「父さんの方が悪魔に近かったんじゃないかな、特にボートに乗ってたとき」 122 #落ちぬい二次

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思わず兵頭さんが吹き出す。 それに釣られて鷲塚さんや栄一兄様も笑い出す。 私はどう反応すればいいか分からずに、困った顔になっていた。 123 #落ちぬい二次

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「ところで、長瀬さんは」 「モグリなら、亮司さんと話してる」 兵頭さんの指さす先。 頭一つ突き出た長身長髪と、恰幅の良い背広姿が並んでいた。 124 #落ちぬい二次

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「亮司兄様、長瀬さん」 「おお水月か。今お前の話をしていてな」 亮司兄様に頭を撫でられる。 青葉ちゃんと出会う前は、この時が一番落ち着けていたっけ。 125 #落ちぬい二次

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「こうして見ていると、まるで親子みたいに見えるね」 「よく言われるが娘じゃなくて妹だからな」 「素敵な妹さんだ」 126 #落ちぬい二次

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「手ェ出すなよ。既に旦那がいるからな」 「初耳だ」 私も初耳なんだけど。 「水月ちゃん、どんな人なの？」 127 #落ちぬい二次

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「お前も既に見てるだろ。青葉がこいつの旦那だよ」 …ええええええええええっ！？ 「例のケッコンなんたらはしてないが既にそれ以上の絆で結ばれてるからな」 「ちょっ…亮司兄様っ」 128 #落ちぬい二次

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「そっかー、そりゃ諦めるしかないなぁ…」 がくりと肩を落とす長瀬さん。 と言うか…それって…つまり… 129 #落ちぬい二次

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「安心しろ、水月」 亮司さんが私に耳打ちする。 「確かにこいつは軽い男だが、誰彼構わず襲うようなそんな奴じゃない」 俺が保証する、と。 その言葉で、多少は心が軽くなった。 130 #落ちぬい二次

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「じゃあせめて、今度一緒にご飯だけでいいから付き合ってくれないかな」 「えっと…青葉ちゃんと一緒なら」 「分かった。じゃあ水月ちゃん達に会いそうな美味しいお店用意しとくね」 131 #落ちぬい二次

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私を追いかけてきた青葉ちゃん達や兵頭さん達と合流し、再度壇上に登った栄一兄様を見る。 「皆様、楽しんでいただけましたでしょうか」 132 #落ちぬい二次

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「はじめにも言いましたが、今回は水月も帰ってきて、元気な姿を見ることが出来ました。 そして、そのご友人も集まってくださいまして、父に関しての話で盛り上がれたこと、非常に嬉しく思っています。」 133 #落ちぬい二次

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「皆様方におかれましても、また来年こうして集まり、父の話でまた盛り上がれたらいいなと思っております。 最後になりますが、本日はお集まりいただき、本当にありがとうございました」 134 #落ちぬい二次

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一人、また一人と綾崎の屋敷を後にする。 私も、栄一兄様達と並んで、来てくださった方々にお礼をする。 135 #落ちぬい二次

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「今日は楽しかったです」 兵頭さん達がやってくる。 「もし良かったら、また来年も呼んでください」 「ええ、是非お呼びさせていただきます」 136 #落ちぬい二次

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「長瀬さん」 長瀬さんを呼び止める。 「どうしたの、水月ちゃん」 137 #落ちぬい二次

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「…今日は、本当にありがとうございました。最初、ご迷惑をかけてしまってごめんなさい」 「大丈夫だよ、それに楽しかったからね」 頭を撫でられる。 最初は怖かったはずなのに、今は少し心地よく感じる。 138 #落ちぬい二次

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「ご飯のこともそうですけど、また、会ってください」 「勿論。こっちからも会いに行くよ」 139 #落ちぬい二次

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握手を交わして。 長瀬さんは兵頭さんの車に乗って帰って行った。 140 #落ちぬい二次

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窓から玄関が見える。 司令官が長瀬さんに頭を撫でられている。 仲良くなって良かったと、ほっと胸をなで下ろす。 142 #落ちぬい二次

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…私としてはトラウマに勝てずに私にしがみついて…いや、やめておきましょう。 司令官の成長は、秘書官として純粋に祝福するべきです。 143 #落ちぬい二次