#変態不知火さんまとめ 番外編 『不思議の国の天津風』

高峯みやび @sukamelancholy

裁判は未だ継続中。終わりがいつくるかはわからないので、傍聴席にて待つ事にしました。「傍聴席で彼との痴行を想像して、これが本当の膨張せ」もはやただのオヤジギャグを言う不知火を無視して天津風は席に座ります。 #変態不知火さん

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「彼と結婚をするのは私よ。女王と結婚をする事は大変な名誉なのだから」自慢の金髪を靡かせ、女王ビスマルクは主張します。 「私はそうは思いません。地位も名誉もいりません、彼と結婚出来るのなら、駆け落ちでも構いません！」確固たる決意を表す王女龍鳳。 #変態不知火さん

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そんな二人の間に座っているのはただ一人の裁判長である、加賀が無表情で二人の言い分を聞いています。 「……やっぱりモテモテなんじゃない」 ぷい、とそっぽを向く天津風。そんな天津風に不知火は親指を人差し指と中指の間に入れ、アレなサインをします。「ヤッたもの勝ちです」 #変態不知火さん

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「それアドバイスになってないわよ……」呆れつつ言い争う女王と王女の二人を見て溜め息を吐きます。 「大体、こんな大掛かりな裁判をして何になるのよ……」 天津風の言う通り、この裁判は不毛です。何せ争っている原因の彼は未だ誰にもなびかないのですから。 #変態不知火さん

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女王、王女の発言を一言一句漏らさず紙に書き写している、はちと神通はもっと哀れです。元々使用人である筈の二人。二人ともうんざりとした顔でペンを走らせています。 「この裁判、ちゃんと終わるのかしら……」今度はどんな体位で初夜を過ごすかで言い争う二人。 #変態不知火さん

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次第に白熱する裁判。傍聴席にて終わりを待つ天津風と誠士郎うさぎ、チェシャ猫の不知火たちもうんざりしてきました。そもそも、ただの痴話喧嘩が大袈裟に発展して裁判になっているこの現状がよくありません。裁判長加賀はもはやこれ以上は無駄であると判断しました。 #変態不知火さん

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「静粛に。……お二人の言い分は十分に拝聴しました。これ以上の審議は無駄です」 無意味と言わず無駄であるとあえて口にした加賀に女王ビスマルク、王女龍鳳は黙ります。 「公正、かつ平等な審判を下す立場である私に全て委任する、それが契約でしたね」 頷く両者。 #変態不知火さん

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「わかりました。それでは審判を下します。お二人の心を乱し、かつ誰の物にもならぬうさぎ、誠士郎の処刑を命じます。全てはこの国の民の為。抗議は受け付けません。……それでは閉廷。そこの傍聴席に居る誠士郎を捕らえなさい」 加賀の声に応じた兵が次々出てきます。 #変態不知火さん

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なんという事でしょう女王と王女の喧嘩の原因を消す事でこの喧嘩を終わりにしてしまうと言うのです。天津風は我慢ならず叫びます。 「どうして、どうしてそうなるのよ！ 誠士郎は巻き込まれただけじゃない！」 「部外者は黙りなさい」 冷たく加賀は言い放ちます。 #変態不知火さん

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「わかんないわ！ 何で処刑をしなくてはならないの！？ 誠士郎も何か言ってよ！ おかしいわ、こんなの！ 二人も何とか言ったらどうなのよ！ 好きなら止めなさいよ！！」 誰も声を上げて裁判長の下した審判に反論しません。好いていた筈の女王と王女も、黙っていました。 #変態不知火さん

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加賀の言う通り、天津風は部外者です。今だってこんな不思議の世界から抜け出したいと思っています。けれど、この裁判の結果には納得がいきません。無茶苦茶な結果だというのに何も言わないのもよりそれを加速させます。 しかし、無情にも誠士郎うさぎはトランプの兵に捕まります。 #変態不知火さん

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全ておかしい。しかし状況は進み、誠士郎は連れていかれ、ついには処刑台で頭を垂れています。 他のうさぎたちも彼の処刑を見る為に集まってきました。誰もがその光景に異議を申し立てる者は居ません。天津風を除いて。 #変態不知火さん

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「罪うさぎ、誠士郎の処刑を行います」 冷たく言い放つ加賀。その手に持った鋭く大きな剣は、彼の首を落とすつもりなのです。血の気が引いた天津風はなお抗議の声を上げます。 「やめなさいって言ってるでしょう！ こんなの間違ってるって、どうして気付かないの！？」 #変態不知火さん

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「その者の口を封じなさい」 「んぐ、んんー！」 他のうさぎたちによって天津風の口を塞がれ、暴れる身を抑えられます。殺される。部外者の天津風を親切にした彼が、誰にでも優しく紳士的な彼が。そんなの、そんなのってない！ ……ですが、処刑は無慈悲に続行されます。 #変態不知火さん

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「……何か言い残すことは」 加賀は彼に問います。 「私の死で全てが丸く収まるのなら」 「……そう」 高く掲げた剣が、一気に降り下ろされ……。 「……ッ！！」 ごとり、と音を立てて。 「……、っ、……！！」 彼は、処刑されてしまいました。 #変態不知火さん

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よい子の変ぬい下ネタ童話シリーズ 『不思議の国の天津風』 完 #変態不知火さん