もし私が高校化学の教師だったら

今読み返したら細かいミスがあるのに気が付きましたが直すのめんどうなのでそのままにしておきます。
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くみかおるの冒険 @ElementaryGard

高校化学のカリキュラムをこのところ分析中。問題集にこんなのがあった。「NH⁴Clの水溶液は酸性か中性か塩基性か」 いうまでもなくこれは塩(えん)です。水のなかではNH⁴⁺とCl⁻に分かれる。Cl⁻はH⁺と反応せずNH4⁺は水中でNH³とH⁺になって[続く]

2015-03-07 03:47:26
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

H⁺はH²Oと反応してH³O⁺(いわゆるオキソニウムイオン)になる。つまりNH⁴ClからH⁺を出すわけだから酸性。センター試験に毎年出そうな問題です。ただこういういかにも教科書的な説明では頭に残らない。私だったらもっと具体的イメージを挟む。

2015-03-07 03:52:00
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

NH₄Cl→NH₄⁺+Cl⁻ ここにあるCl⁻がなぜ溶媒(H₂O)のH⁺と反応しないのか? 電子の動きからごりごりの論理で説明するのが大学で学ぶ化学。高校化学では「とにかく覚えろ」で終わり。この落差をどう埋める?私なら「塩酸がそうやたら簡単にできたら大変じゃない」と説明する。

2015-03-07 03:56:36
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

NH₄Cl は塩化アンモニウムという。そのまま肥料になります。肥料を水につけたら塩酸ができるなんてことになったら、怖くて畑にまけない。H⁺+Cl⁻→HClはそうたやすくは起きないとこれで感覚的に生徒さんにわかってもらえる。

2015-03-07 04:07:48
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

ついでにNH₄Cl (塩化アンモニウム)は肥料であるとともに火薬の原料にもなると教えてあげると、ニトロ基の話を後でする際の伏線になる。アンモニア(NH₃)は肥料になって増産に貢献するとともに、火薬の原料にもなって戦争を煽る。事実ドイツはこれで第一次大戦に踏み切って大敗した。

2015-03-07 04:12:08
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

硝酸(HNO₃)を作れるんですよアンモニア(NH₃)から。オストワルト法というやり方で。これは高校化学で習う。ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A1%9D…

2015-03-07 04:16:33
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

火薬とはすなわち化学反応が瞬間的に起きるよう工夫された化合物のこと。NとOという、先天的にあまり仲が良くない二人をあの手この手で夫婦にする。いやいやいっしょになった二人だからちょっとした刺激で反発してNはNと、OはOとくっつきたがるゲイな元素。

2015-03-07 04:19:11
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

ダイナマイトの元となるニトログリセリンなんてNとOのおっかないペアでいっぱい。 pic.twitter.com/erbInfS3iG

2015-03-07 04:20:51
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くみかおるの冒険 @ElementaryGard

空気中の窒素(N₂)からアンモニア(NH₃)を合成するのはドイツの悲願だった。ドイツの土壌はやせていて小麦がもともと育たない。ライ麦しか育たない。肥料で土を富ませるしかない。肥料を輸入で賄うのではなく国産でできないか?こうしてN₂+3H₂→2NH₃の技術が開発された。

2015-03-07 04:26:28
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

アンモニア(NH₃)からは硝酸(HNO₃)を合成できる。火薬です火薬。これでドイツは南米チリから硝石を輸入せずとも火薬を自給できるようになった。第一次大戦で英海軍が海上封鎖してもドイツの弾薬製造は止められなかった。

2015-03-07 04:30:10
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

さらに歴史裏話。空気中の窒素からアンモニアを作りだす技術を開発した科学者ハーバーは、第一次大戦でドイツが劣勢になると塩素ガスによる反撃を皇帝に具申。毒ガス兵器です。これで形勢逆転。もっとも相手側もガスを使いだしたため再び劣勢に。そして敗戦。

2015-03-07 04:32:45
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

こんな風に歴史や地理のトリヴィアを混ぜ込みながら生徒さんに教えていくと、イメージ豊かに理解してもらえるんじゃないかと思いますが、そういう化学の先生って実際どのくらいいるのかな。興味があります。少なくとも自分はそういう教わり方をしてないです。

2015-03-07 04:34:31
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

あ、ドイツの土壌が農耕に向かない痩せた土地なのは、氷河と関係があります。寒冷期にヨーロッパは氷におおわれ、後にドイツと呼ばれることになる土地は氷河で削られて表土が痩せこけてしまったのです。デンマークもそうですね。それで農耕ではなく酪農が栄えた。

2015-03-07 04:36:47
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

実際に見て歩くと面白いです。

2015-03-07 04:37:23
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

懐かしの(今でも本屋の受験参考書コーナーに並んでますが)『新理系の化学問題100選』を今改めて読むと、解説が味わい深い。2SO₂+O₂→2SO₃は容易には起きないという話で「でないと硫酸の雨が降ってくる!」と差し挟まれる。なるほどSO₃が雨(H₂O)とすぐ反応しては大変です。

2015-03-07 04:50:50
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

この本にはないんですがS+O₂→SO₂は熱さえあればあっさりおきます。硫黄(S)はマッチ棒の先っちょに塗られているぐらいだから摩擦熱で反応するわけです。

2015-03-07 04:53:12
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

こんな風に「気づき」体験をひとつひとつさせて生徒を導くのです。

2015-03-07 04:54:44
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

マッチの化学反応は実はもう少し凝ってるんですけどね。ちなみに真空中でもマッチ棒は燃えます。ごく短い時間ですが。

2015-03-07 04:56:26
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

先日、実父と話していて「物理はF=maから微積ひとつでいろんな公式を導き出せるから頭がすっきりして気持ちいいけど、化学はだめだな。化学式は自力で組み立てられないからずるい」という結論になった。

2015-03-07 07:55:41
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

それに底なし沼なところがあるから。KLM殻のモデルだと次第につじつまが合わなくなるのでspd軌道の考え方を授業と無関係に独習して、さあこれで大丈夫だと思ったらこれでも辻褄が合わなくなるので今度は分子軌道法をかじったら、これがさらに[以下省略]

2015-03-07 07:58:29
くみかおるの冒険 @ElementaryGard

さすがに高校在学中にパウリの排他原理までは独習できませんでした。

2015-03-07 08:03:53