救済ブラック本丸まとめ

ふゆ@かたな @fuyu_tr

「まずは、痛いと言えるお前に戻れ」そう言って手入れを再会する。傷に触れた時、彼はぽつりといった。「……痛い、よ」感情のこもってない声だった。だがどこか噛みしめるようで。顔を見れば何かを堪えるように歪んでいて。「……あぁ」静かに頷いて、その日の会話らしい会話ははそれだけだった。

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（番外） 石切丸「なんであそこで格好つけたままにしなかったんだい？」 審神者「余計な所突っ込むな。俺もちょっと後悔してる」 石切丸「格好つけるならもっと羞恥を捨てなきゃ」 審神者「羞恥を捨てた格好良さってそれ多分……厨ｎ」

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（岩融） 買い物に出るので荷物持ちを募れば、顔を見合わせる男士達の中で岩融が真っ先に前に進み出た。意外だと思いながら表情には出さずに、では頼むと言うと、彼はにいと笑う。「おう。では狩りに出ようぞ主！」「流石に狩りつくす金はないぞ」「して、何を狙う？」「俺の家具だ」「ほう」

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「成程。主の部屋は殺風景だからな。どんなものがいいか俺が見定めてやろう」「……お前の趣味が分からんからまた今度な」「なに、それは残念だ」歩いていると距離が近い。言葉のやりとりをしても屈託がない。しかしその内心が推し図りにくい。手強いなと思いながらも他愛ない会話を続ける。

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ちょいちょい楽しそうに口を出してくる岩融を適度にあしらいながら、本棚や箪笥などの家具を見繕い、その後は土産の菓子などを選ぶ。分かりやすい懐柔方法だが、岩融に持たせてしまえば多少は食べるときの抵抗も減るだろう。荷物を全部持つといって聞かない岩融にすべて任せ、帰路を歩くと、ふと彼は

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口を開いた。「主。苦手ならそう無理をするものではないぞ」振り返ると、岩融が俺を見据えていた。「何の話だ」「後ろを取られるのが苦手だろう。努めて気にしないようにしているが、俺の目は誤魔化せん」「…そう思うのなら隣を歩け」「おっと、逃しはせんぞ。俺はお前を見定めるために今日来たのだ」

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その言葉に、しっかりと向き直る。視線を受けて真っすぐに返すと、岩融はにやりと笑った。「おお、良い目をするな。主が武人でないのが惜しいものよ」「それで、見定めの結果は出たのか」「その前に問いたい。何故俺に背後を許した」「……」誤魔化すか、話すか。二択をこちらも見定める。

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「俺は、」誤魔化さない。例え失望されようと、それが俺なのだから。「お前たちに信頼してもらいたい。ならば、俺が先に信頼するのが道理だ」背後を許せずして、隣を許せずして、何が主だろうか。気付かれてしまったのは、手痛い失敗だが。沈黙が場に下りる。視線が交わり合う。「あい分かった」

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やがて岩融はそう口を開いた。「その努力を俺は面白いと感じた。俺は面白いことを何より好む。なれば俺はしばしお前と共に歩もう。だが」そして彼は凶悪に歯を見せて笑う。「主が危惧しているように、何かあれば誰かが背後から主に牙をむくぞ」「元より、承知だ」「その覚悟や、よし」

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満足そうな声が返ってきた。「さて、買い物の凱旋と行こうではないか！俺はこの買い占めたしゅーくりーむの味が気になるぞ！」そう言ってさっさと先に行ってしまった岩融を追いかける。合格ではないが、クリアと言った所なのだろうか。今だ、光は見えず。

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（清光） 引き継ぎ業務というよりも、前任者が残していった仕事が多すぎて忙殺されかけていた。男士たちと言葉を交わす機会を見失ったりはしないのだが、いささか睡眠時間が削れつつある。敵地に居るような緊張感の中では絶対に体調不良になどなれない。質を落としたくはないが、少し考慮し始めた。

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「あーるじっ。入っていいー？」ふと襖の向こうからやけに明るい声がして、顔を上げる。「どうぞ」「しっつれいしまーす」入ってきたのは加州だった。妙ににこにこしながら後ろ手で襖をしめる加州を見つめる。内心で警戒しているのを知ってか知らずか、彼は無防備な様子で俺に近寄ってきた。

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「どうした？」「主に言いたいことがあって」擦り寄ってくる加州をひとまず好きにさせながら続きを促すと、彼は俺を見上げるようにして言った。「俺はね、他のやつは警戒してるみたいだけど、今の主が大好きだよ。前の人より優しいっぽいし、全然まともだし！」「それは嬉しいな」

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「えへへ。何でも言うこと聞くし、……何でもシてあげるよ？」最後の言葉が吐息交じりなのに、俺は瞳を細める。「ね、だからさ」覗いたその瞳の奥には、怯えが一杯に溜まっていた。「今の主は、俺の事、愛してくれるでしょ？」向けられた笑顔は酷くからっぽだった。笑顔という器で固めたみたいだ。

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「加州」「やだなぁ。清光って呼んでよ。その方が、」「加州」しっかりとその瞳を見据えて俺は言い放つ。「悪いが、俺の愛は安くない」言葉を受け止めて、一拍。その瞳が大きく見開かれ、加州は俺の胸倉に手を突くようにして畳みに俺を押し倒す。「なんで？簡単でしょ？俺に愛してるって言うだけだよ」

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「そうすれば、なんでもシてあげるよ？主にとっても都合がいいでしょ？それとも何？あんたも前の人と一緒？俺の事はどうでもいい？あんなに色々シてあげたのに……っ！ねぇ、俺があいつになにさせられてたか教えてあげようか……？それを聞けば可哀想だと思ってくれる？ね、お願いだからさ、」

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その縋るような声に首を振る。「悪いが、俺は嘘をつかない主義だ」「っ……！！なんでだよ！！あんた俺の主だろ！？それくらいのこと」「加州。俺は別にお前を愛さないとは言ってない」「何？俺の事面倒臭くなった？今度は手のひら返し？いいよ、信じてあげるよどんな言葉も。ほら言ってよ……っ！」

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ああ、困ったな。と、ぐしゃぐしゃになって泣き出した加州の顔を見上げながら、俺は思う。泣いてる奴の相手は苦手だ。「加州。お前は、もう忘れたのか？」「……何、の話」「お前を愛してくれた使い手の事を。前任者じゃない。お前がずっと敬愛してやまない主のことだ」

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「っ、あんたには関係ない……っ！」何かに触れたのだろう。一気に加州の身体と声が硬くなる。「その愛は薄いものだったか？うわべの物だったか？何かしたらそのまま返ってくるような、浅いものだったか？」首を振りながら聞きたくないと耳を塞ごうとするとの両手を掴んで言った。

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「俺がやれる愛は、その人と同じものだ。……自分を安く見るな。もっと自分を誇れ。……まだ愛はやれんが、お前のことは好ましいと持っているよ。……清光」そう言って頭を撫でてやると、何か言いたげに涙を一杯に溜めた顔で俺を見た後、わあわあと声をあげて泣きはじめる。こちらまで辛くなった。

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「……さて、どうするかな」どれくらい泣いてるその頭を撫で続けてやっただろうか。静かになったと思えば、寝息を立てていた。ああ、そういえばと思いだし、襖の向こうに声をかける。「入って来ていいぞ」身じろぐ気配。「別に帯刀してても怒らない」そう言えば、襖がゆっくり開かれた。

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「安定か」予想した通り、そこには安定がいた。手には刀を携えている。「とりあえず入れ。ぐっすり寝ているから話しても起きないだろう」「………」無言で部屋に入って、微妙な距離感で座するかれを見る。「……あんた、口上手いよね。最後、名前何か呼んじゃってさ」「褒めてるか？」「褒めてないよ」

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苛立ったように言って、ぼそぼそと安定は続ける。「あんたが少しでも変な気起こしたら、斬ってやろうと思ってたのに。……僕がいるって分かっててあんなこと言った訳？」「お前がいたことには気づいていた。居なくても同じことを言っていた」「……正直なんだね」「嘘はつかない主義だと言った」

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聞いてただろう？と続ければ、彼は黙り込む。「ところで、もしかして加州……清光はあまり眠れていないのか？」「え？」「隠しているようだが、くまがあるように見えた。不眠の症状があるなら、なにか考えなければならない」「気付いたんだ。……あんた、結構タラシでしょ」「どうだろな」

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「そこは誤魔化すんだ」「嘘はつかないと言ったが、誤魔化さないとはいってない」「ずるい奴だね」そしてちょっと安定は笑った。「眠れてない、みたいだよ。今ぐっすりみたいだけれど」「分かった。お前はどうだ？」「僕は……」視線を背けて言う。「清光ほどじゃないよ」「なるほど」