マッカーサー元帥は日本のアニメをどう見るか
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日本の雇用が徹底してメンバーシップ型(「○○社の者です」から始まる)で、ジョブ型(「新聞記者です。前は名古屋の中日新聞にいましたが今はデイリープラネットです」)がマイノリティなのは有名。
2015-03-22 13:31:27組合が企業別なのも、メンバーシップ型雇用だから。ジョブ型雇用がmainstreamなら、職種別とか業種別組合が主流になっていた。トヨタの社員もホンダの社員も同じ労働組合に所属してベースアップを勝ち取る、みたいな。
2015-03-22 13:33:21アニメはもろにジョブ型。アニメーター志望者が、途中で撮影さんになるとか制作進行になるとか、そういうことはまずありえない。私の実父は東京の大学を出たあと、柔道部所属というところがセールスポイントになって地元の銀行に入り、しばらくしてコンピュータ導入の課に回された。
2015-03-22 13:36:15「お前数学得意だろ。じゃあちょうどいい明日から電子計算課に配属だ」「今まで営業まわりですが?」「それしなくていい」「電算機とは何ですか」「いいからやれ。日本IBMで勉強してこい」
2015-03-22 13:38:05もろにメンバーシップ型。これは社内での配置換えがすぐできるので、新しい技術導入にさっと対応できる。ジョブ型だといちいち契約を書き変えなければいけない。しかも職種ごとに賃金が決まっているから、配属変えによって賃金が減ってしまうこともあるため、交渉はこじれがち。
2015-03-22 13:40:11アニメはジョブ型。制作進行として入ったのなら、その後は制作デスクになって、さらには独立して自分のスタジオを作ることもある。途中で原画になるとか彩色になるといったことはない。演出家になることはよくあるけど。SHIROBAKOの監督さんもそうでした。
2015-03-22 13:42:14ということはアニメーターならアニメーターという職種の組合が、撮影さんなら撮影さんの組合が、スタジオの違いを超えて生まれていないといけないのです。少なくともハリウッドみたいにアニメ労働者全般の総合組合(ユニオンとかギルドといいます)がないとおかしい。
2015-03-22 13:46:06雇用とは何か。「俺の労働力提供したるさかい、賃金くれ」「賃金やるから労働力提供せいや」で利害一致した状態のことです。雇う側のほうがどうしても権力を持つから雇われる側不利の契約条件になりがち。そこで労働者には団結する権利が国に保証される。これが労働組合です。
2015-03-22 13:48:21「こんな安い賃金ではやってけんさかい、俺らストライキするわ」「待ってや、それでは商売あがったりやから少し増やしたるわ」「もっと増やせ」「それやと会社が潰れてあんたらも無職やで」「うーん、ならこのへんで手を打つか」「打とう」 こうやって賃金やほかの労働条件の調整が図られる。
2015-03-22 13:50:32日本に労働組合法を持ち込んだのはこのひと。戦時中の労使協調体制を破壊し、アメリカ式の対立→調整のやり方に作り替えることをもくろんだ。憲法改正よりも優先した。敗戦が8月。同年12月に制定。年を越す前に成立。これはすごいスピードです。 pic.twitter.com/dJSK3OQOmJ
2015-03-22 14:05:58しかしながら元帥の目論見どおりにはいかなかった。ニホンジンの「ウチ/ヨソ」感覚は占領軍をもってしても改められなかった。ジャズと野球とコカ・コーラは日本に根付いても、キリスト教もナイフとフォーク食も家で靴を脱がない習慣も根付かなかったように。
2015-03-22 14:08:22職種給の考え方がまずニホンジンには理解できなかった。占領軍は占領軍で、同じ職種の人間でも年齢や家族構成や他いろいろで給与が変わる日本の仕組みが理解できなかった。
2015-03-22 14:11:03例えばコンビニの店員になるのに、年齢や性別や経験度や扶養家族の数なんて賃金には考慮されない。これが職務給。さっき職種給と書きましたが職務給に訂正しますね。
2015-03-22 14:12:15これが占領軍の目には不公正なシステムに映った。「これからは pay for job に改めろ。勉強会を用意したるさかい通え」「はあ pay for job ?なんやろこの英語」
2015-03-22 14:13:49結局、日本には根付かなかった。国も導入の推進を事実上断念し、先ほど触れた私の父のようなケースが普通になった。営業まわりだった若者に「おいお前数学得意だから明日から電子計算機課所属や」「何ですかデンシケイサンキとは」「そんなもん俺も知らん」「どこにあるんですか」
2015-03-22 14:17:14「これからお前が勉強して入れるんや」「どこで勉強するんですか」「日本IBMや」「にほんあいびーえむ?何ですかそれは」「がたがたいわず行け!」「オッス!」
2015-03-22 14:18:09職能給といいます。職種が変わっても賃金は変わらない。職種に値をつけるのではなく、その人間に値をつける。あいつは営業それなりにこなすし柔道部だからガタイもいいし数学ができるから値は高い。だから所属が変わっても賃金は据え置きや!と。
2015-03-22 14:21:01企業内組合が日本に根付いてしまったのも、これと関係があります。社内においてはどこにどう配置換えされても文句をいうな、その代りに賃金は保証するし扶養家族のことも考慮してやるから、と。
2015-03-22 14:22:57アニメはこういうのがない。「おいお前、明日から動画や」「えっぼく制作進行ですよ」「がたがたいわず動画や!サザエさん描かんかい」「オッス!」なんてことはありえない。
2015-03-22 14:24:38するとどうしてもアニメは日本の雇用システムから逸脱していくわけです。メンバーシップ型(「いけ」「オッス!」)ではなくジョブ型(「明日から動画や」「描けるかそんなの!」)だから。
2015-03-22 14:26:55総合組合(アメリカにおけるユニオンやギルド)がけっして根付かない風土において、徹底したジョブ型の業界がまわる…そのツケはどこにまわるのか。
2015-03-22 14:28:06「お前らは社員じゃない。フリーランスだ。個人事業主だ。雇用関係じゃねえ」と理屈をこねるわけです。「雇用」で考えると日本ではどうしても対処できないから、最初から雇用システムでないとこじつける。
2015-03-22 14:29:33そして「相撲取りと同じだ。序の口は一場所で7万円。だが序二段なら8万、三段目なら10万、幕下は15万。強くなれば増える。十両、幕内、小結、関脇、大関、横綱と勝ち上がっていけばもっと増える」とこじつけられる。
2015-03-22 14:33:37