徳パンク小説『黄昏のブッシャリオン』第二章#2

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碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

◆徳無き世界で、それでも人は生きていく◆ 徳パンク小説『黄昏のブッシャリオン』togetter.com/li/797219 Twitterにて連載中。『小説家になろう』でも更新中。 #bussharion

2015-04-02 18:33:49
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

得度兵器が『破裂』する。徳ジェネレータがメルトダウンし、徳エネルギーの光が、空を焦がす。 残り5体の得度兵器。5体の『過去の仏』を模したそれらと、宙を舞う翼の生えた人間。全身をボディスーツめいた装束で覆い、その顔は仮面に隠されている。39

2015-04-02 18:37:31
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「生きることは、死ぬことだ」仮面の中で翼人は呟く。先程の絶叫とは打って変わって、自分だけにささやくように。 「屍を積み上げよう。この世界の終わりまで」『女』は唄う。終わりを唄い、救済を否定する。 彼女の『名』はシャリオン。徳を使い、救済を憎む。徳エネルギー世界の『影』である。40

2015-04-02 18:41:38
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

------- シャリオン。彼女の出自を考えれば、それは呆れる程単純な名前だ。 舎利バネティクスは完成していた。徳エネルギーを人体を使って増幅する。それら間違っていなかった。彼等は己の徳をエネルギーに変換し、行使した。それは伝説の再現であり、新たな時代の夜明けに思われた。41

2015-04-02 18:49:11
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

……その奇跡こそが、徳クローンと舎利バネティクスが徳世界の『影』たる所以である。 「チェストオオオオッ!」 機械は、仏になることはできない。舎利バネティクス手術を施された人間……舎利ボーグは、仏になることはできない。 そして、徳カリプスより後。彼等を襲った運命は過酷であった。42

2015-04-02 18:51:49
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

(……駄目だ、『壊しすぎた』)『シャリオン』は歯噛みする。 徳カリプスにより、徳エネルギーを知る者の大半が解脱した。故に、彼女の肉体は今やメンテナンスもままらならない。 頼みの綱は、得度兵器。皮肉なことに、彼等は人類が失った徳科学を、体内に『持っている』。43

2015-04-02 18:54:34
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

三体目の得度兵器が、足を砕かれ地に伏せる。 故に……彼女は得度兵器を『狩り』、徳エネルギーとその部品を集める。戦わなければ、生き残れない。 『脅威』『排除』『排除』『排除』『……排除』 そして得度兵器は結論する。あれは、人類ではない。自分達の救済対象ではない、と。44

2015-04-02 18:57:22
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

◆しばらく間が開いてしまったので◆ ◆これまでのブッシャリオン~ロングバージョン~◆

2015-04-09 22:01:30
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

◆これまでのブッシャリオン①◆ 徳エネルギー。それは、人の徳から生み出される、無限の無公害エネルギーであった。その発明から二百年。『徳』という価値観は人類に遍く共有され、人々の大半は善行が必ず報われる理想郷に住んでいた。 だが、徳エネルギー文明は突如として終わりを迎える。

2015-04-09 22:04:18
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

◆これまでのブッシャリオン②◆ 徳カリプス。連鎖強制解脱を伴う大災禍は、地球上の人口と徳の大半を高次領域へと奪い去り……徳エネルギー文明を僅か一晩で無に帰した。 それでも、人は徳エネルギー無しには生きては行けなかった。アフター徳カリプスの人々は、大きく2つの集団に別れた。

2015-04-09 22:07:23
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

◆ブッシャリオン③◆ ひとつは、賽の河原で徳を積み上げる者達。もうひとつは、徳を奪って生きる者達。ガンジーとクーカイは後者であった。彼等は過去の徳遺物を漁り、徳エネルギーを得る採掘屋だ。 だが彼等の街の徳ジェネレータは強制解脱によって破損し、徳エネルギーの供給は途絶えてしまう。

2015-04-09 22:12:33
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

◆ブッシャリオン④◆ 新たな徳遺物と代わりの徳ジェネレータを求め、二人は別の人里へと遠征。そこは、徳に溢れた徳カリプス以前の理想郷そのものであるかに思えた。 ……だがその街は、徳カリプス以後の暴威、機械生命体『得度兵器』による徳エネルギー牧場であったのだ。

2015-04-09 22:16:33
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

◆ブッシャリオン⑤◆ 得度兵器から徳ジェネレータを剥ぎ取るため、二人は得度兵器の撃破を決意。死闘の末、破壊に成功。街の少女ガラシャを連れ、帰路へとついた。 しかし……彼等はそこで、七体の得度兵器に襲撃される。ガンジーの徳操作能力によって奮闘するも、絶対絶命かと思われたその時。

2015-04-09 22:18:56
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

◆ブッシャリオン⑥◆ 救いは、天から舞い降りた。徳カリプス以前の遺物。徳エネルギー世界の影。その名は『シャリオン』。異端の技術の忌子が今、得度兵器へ牙を剥く。

2015-04-09 22:21:30
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

光線が空を割る。徳エネルギーの光ではない。人を殺めるための光。言うなれば不徳エネルギー兵器。得度兵器にとって、眼前の存在は解脱させるべき対象ではなく『敵』であった。 「ヤバい……!」シャリオンは空中機動によってそれを交わす。翼の先端が刮げ、錐揉み状態に陥る。45

2015-04-10 23:03:13
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「落ちたぞ!」「どうすんだ」ガンジーとクーカイは言い合う。残る得度兵器は四体。半分にまで減って尚、それは彼等の手に余る。 「ガンジー、走れるか」「……なんとかな」車体から救出されたガンジーは、足に怪我を負っていた。それでも、動けるだけ有り難い。(少しはいいことしたせいかもな)46

2015-04-10 23:15:11
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

などと思うガンジー。「……それで、お前は何を思い付いたんだ」「あ、あぁ……そうだった」ガンジーは気を取り直す。あの『化け物』が降りてくる前に、思い付いたこと。「徳ジェネレータを、『爆弾』にできないかと思ったんだ」「……爆弾?」「ああ。得度兵器のアレも、徳エネルギーだろ?」47

2015-04-10 23:30:53
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「……成る程な」要約すれば、徳ジェネレータを暴走させて……一気に徳エネルギーを解放し、得度兵器に損害を与える。それがガンジーの考えた作戦であった。 だが、それは上手くは行かない。徳エネルギー兵は非殺傷だ。人を強制解脱やソクシンブツに導くことはあれど、傷つけることはない。48

2015-04-10 23:37:36
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

そして、得度兵器は無傷であろう。何故ならば、機械は仏にはなれないからだ。 ……だが、それを二人は知らない。「……やってみよう」「ああ。でもどうすんだ?」「穴を開けてみるとかだな……」彼等は、徳物理学についてあまりに無知であった。49

2015-04-10 23:45:49
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