徳パンク小説『黄昏のブッシャリオン』第二章#2

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碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

徳パンク小説『黄昏のブッシャリオン』まとめ - Togetterまとめ togetter.com/li/797219 #bussharion

2015-04-19 20:18:27
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「うっ……」シャリオンは呻く。空中から地面にしたたかと身体を打ち付けられ、ダメージは実際少なくない。『主翼破損』『ダメージ30%』『出力レベル 清信士』網膜にインプラントされたディスプレイによって視界が黄色に染まり、アラート表示が映し出される。「正面戦闘は、無茶だったか」50

2015-04-19 20:23:36
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

如何に外道の徳物理学、仏教理論に基づく改造を施された身と云えど、所詮は生身。完全なる機械の相手は難しい。 アンブッシュからの速攻で二体は片付けたが、それが限界。「……徳レベルが足りない……翼は捨てよう」前回の戦闘で、別の得度兵器から奪った部位(パーツ)。それ故、馴染みが悪い。51

2015-04-19 20:29:51
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「……ふ、ぐっ!」呻き声を上げながら、シャリオンは邪魔な主翼を背中の根本から『引き千切る』。額には脂汗が浮かぶ。痛覚が通っているのだろう。メキ……パキ、と乾いた音を立てながら、複合材の翼あ「……ッあ!」投げ捨てられた翼が地面を転がり、風で宙を舞う。「はぁーっ……はぁーっ」52

2015-04-19 20:35:22
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「……これで、身軽になった」額の汗を拭い、息を吐く。背中のコネクター部位は、ボディースーツが破れ、曼荼羅めいた光学配線パターンががむき出しになっている。 「……さて」残る得度兵器は4体。『翼』を失った以上、逃げる選択肢は無い。徳エネルギー兵器の第二射が来る前に、全て壊す。53

2015-04-19 20:42:53
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「どう片付けるか」既に無力化したと判断したのか、或いは他の対象が居る(荒野に得度兵器七体が集合するのは不自然だ)のか……兎に角シャリオンはターゲットからは外れたらしく、木々の合間に見える螺髪は、別の方向へと向かっている。「追い付くだけでも、手間じゃないか」54

2015-04-19 20:46:19
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

シャリオンはそう言って肉食獣めいて獰猛に笑い、手近なブッダ像目掛けて駆け出した。55 --------

2015-04-19 20:49:38
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「それで、結局、どう起爆させる」「知らねぇよ!」「お前のアイディアだろ!」「そっちこそあの、バリア曲げた奴で何とかならねぇのかよ!」「無理だ!」獣と化した舎利ボーグが、獲物目掛けて駆け出したその頃。ガンジーとクーカイは、相も変わらず、徳ジェネレータを前に頭を捻っていた。56

2015-04-19 20:53:36
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「あーっ、わからねぇ!」「爆薬も在庫切れだ」得度兵器から剥ぎ取った徳ジェネレータはいわばマニュアル無しのジャンク品。ある程度の自己修復機能があるとは言え、正常動作するかも怪しい。……尤も、完全なマニュアルが有ったとして、それをガンジー達が理解できるかは議論の余地が有るだろう。57

2015-04-19 21:03:11
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「クーカイ!」そこへ、森の奥から声がした。小さな足音。白い服の少女が姿を現す。ガラシャであった。 「馬鹿!何で戻ってきた!」クーカイは怒鳴る。「……後悔したくないから」だが、ガラシャは即座に答えた。その目には、確かな意思があった。「……馬鹿野郎」微かに、クーカイの顔が綻ぶ。58

2015-04-19 21:15:31
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

大人であろうと、子供であろうと。富める者であろうと、貧しき者であろうと。或いは……その半身が、機械仕掛けであろうと。平等にやって来るものはある。それは恐れだ。あるときは生あるときは老あるときは病あるときは死。それらへの恐れだけは、誰もに平等にやってくる。59

2015-04-19 21:20:32
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

それから逃れるために、救いは存在する。解脱は存在する。嘗て一人の聖人が辿り着いた道。因果は巡り、時の流れの果てに。それは機械の器を得、仏の形をした救いとなった。 そして今、救いは、彼らに災いとなって牙を剥く。それでも、彼らは戦い続ける。60

2015-04-19 21:22:59
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

徳パンク小説『黄昏のブッシャリオン』まとめ - Togetterまとめ togetter.com/li/797219

2015-06-10 00:03:04
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「うおりゃあああああ!」絶叫と共に、腰の入ったパンチが繰り出される。ゴーン……と、寺の鐘めいた反響音が、荒野に響き渡る。「……浅い」シャリオンは呟く。繰り出された一撃は、得度兵器の脚部に命中した。だが、致命傷には程遠い。人型の必然として、脚部は頑丈に出来ている。61

2015-06-10 00:09:18
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

目の前で、巨大クレーンめいた『脚』が持ち上がる。シャリオンは横へ跳び、巻き込みを避ける。足を止める様子すら無い。反撃の様子は無し。「……相手にすら、されないか」翼(あし)を奪われたことで、相手にするまでも無いと思われたのか。62

2015-06-10 00:14:54
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

問題は、『行き先』だ。得度兵器の行く手に何があるのか。「……優先解脱対象か」人類を救うべく行動する彼らにも、『優先順位』が存在する。女性、或いは子供。如何なるプロセスによって導き出されたのか、彼らはそれを優先して狙う。……シャリオンのような舎利ボーグは、そもそも順位の外だが。63

2015-06-10 00:24:32
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

シャリオンは先を見据える。「……先回りできるか」翼を失い、エネルギーも乏しい今、それは難しい。だが不可能ではない。決して彼女は、身を挺して他人を救おうなどという徳の高い行いをしようとした訳ではない。この荒野に居る人間なら、街まで移動する『足』を高確率で持っているという打算故。64

2015-06-10 00:28:51
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

機械の身体を引き摺って、徒歩で荒野を移動するような事態は、考えただけで身の毛が弥立つ。シャリオンは駆ける。機械の身体は悲鳴を上げ、背中のコネクターからは徳エネルギーの光が微かに漏れる。 その軌跡は皮肉にも、天使の翼のようにも見えた。65

2015-06-10 00:31:36
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

徳パンク小説『黄昏のブッシャリオン』第二章#2 - Togetterまとめ togetter.com/li/800341 これの続きを流します #bussharion

2015-06-23 22:58:17
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「かねの、おと」ガラシャ呟く。それは、シャリオンが得度兵器を殴りつけた反響音。「だれかが、戦ってる」「……さっきの舎利ボーグか?」「なら、尚更諦める訳には行かねぇな」ガンジー達の目の前にあるのは、車の荷台から下ろした、徳ジェネレータ。66

2015-06-23 23:04:49
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