1950年代のオーストリアHeimatfilmに見る幻想のオーストリア・ハンガリー帝国軍
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行進曲は演習の行進で流されねばならない。…ということで独皇帝のお出まし。ヴィリ(Wolfgang Lukschy)と、FJIはオーストリア映画界の王家とも言えるヘルビガー家の大ボス、パウル・ヘルビガー。そしてパンに異物混入事件発生。 pic.twitter.com/UFo4AxbHfD
2015-01-23 11:07:47最初のスクリーンショット、兵士の胸にあの1908年メダルがあり、FJIが「自分ももう80だ」と言っているので1910年の話だと分かる。若きシシィを演じた女優がウィーンに出てきた田舎娘として老FJIに謁見という場面にくすりとさせられる。 pic.twitter.com/8HNdYkSNTr
2015-01-23 11:08:17古くはシューベルト噺『未完成交響楽』(1933)を始めとして、名曲の成立秘話映画というのはオーストリア映画のお家芸だ。この映画もその伝統に則った浪漫的嘘の娯楽作品。例えばユーレクがこの行進曲を作曲したのは1893年で、1910年だと彼は既に40歳だ。でも楽しければいいのだろう。
2015-01-23 11:08:37…Heimatfilmもその時代の要請から非政治性を貫き、あるいは政治性に蓋をすることに意味があった。今この瞬間にこれをツイートするのも、わたしの非政治性のあらわれかもしれない。
2015-01-23 11:08:55オーストリア・ハンガリー帝国軍ものHeimatfilmレビュー
その4
『Kaisermanöver』(皇帝軍事演習)1954年作品
第一次大戦前、一般向けの娯楽文学として人気のあったオーストリア・ハンガリー軍将校が主人公の恋愛物語をHeimatfilm風にアレンジ。三角関係、決闘…と、少し大人向け、リアル路線の物語です。
尉官以上ばかりが出てくる話を観る・書くしていたせいで下士官の階級の訳語すらあやしいということに気付く…orz そんなわけで今日のHeimatfilmは下士官から大佐までよりどりみどりの『Kaisermanöver』(1954)。レビューは後日。ふおぉ。(猫が喉を鳴らすように)
2015-01-27 01:28:39今日悩んだことをまとめてみました。当方軍事史ではなくドイツ文学・文化史出身のため、とんでもない勘違いをしている可能性があります。またドイツ帝国の階級とも少し構造が違うようです。尉官以降は共通ですが。皆様のお知恵を拝借できれば幸いです。 pic.twitter.com/pikDD0BiJ4
2015-01-31 05:36:57【訂正】タイプミスがありました。申し訳ありません。
歩兵:特務曹長
【誤】Stabseldwebel → 【正】Stabsfeldwebel
【追記】@kartis56氏より、『Stabsfeldwebel』は「上級曹長」のほうがふさわしいのではという助言をいただきました。ありがとうございます。
さて今日のHeimatfilmは、KuK軍モノのエッセンスが詰まったと言える作品『Kaisermanöver』(1954)。19世紀末から20世紀初頭に流行した墺洪軍将校が主人公の恋愛小説を映画化するとこうなるだろうという作品です。… pic.twitter.com/jRFqo8DFdt
2015-01-31 10:16:34…伯爵令嬢と大尉の恋愛を主軸に、令嬢に横恋慕する少佐が嫉妬して決闘沙汰になる一方、軍曹と令嬢お付きのメイドさん(メイドと女主人の衣装交換あり!)のコミカルな恋愛が展開するという、オペレッタの原則に則りつつ「あの時代」を醸し出します。… pic.twitter.com/FkTRu8MIDZ
2015-01-31 10:17:25…配役はいつもお馴染みのメンツが衣装を変えて登場。大尉の従卒はマインラート、そしてHeimatfilmの王様、ハンス・モーザーが軍曹の父という形で登場。もんにょりしたモーザー節で、大尉の危機を救うため、なんと王宮に潜入しFJIに陳情。 pic.twitter.com/eEZdqJljXN
2015-01-31 10:17:58…そして最終的にはフランツ・ヨーゼフの天の一声で全て丸く収まるという、ここまでがワンセットでKuK軍モノのテンプレートが出来上がりです。皆が其々の悲惨さで第二次大戦を経験した50年代、ああ、なぜあの時代がそのまま続かなかったんだろう… pic.twitter.com/8DTjrU90Za
2015-01-31 10:18:25…と嘆く当時の観客たちの溜息が聞こえてきそうな、珍しくオトナ向けのHeimatfilmです。しかし!わたしは言いたい。所属はKaiserjägerだって言ってるけど、この制服、Landesschützenですよね…(オチがそこかい) pic.twitter.com/ETf3yNnaL8
2015-01-31 10:18:47あ、あともう一つのダメ出しは、主要人物ヒゲ率の低さ。その意味では伯爵令嬢に横恋慕するハンガリー系の伯爵を演じるErik Freyだけが合格点。…そこなのか? そこだ!…以上、長々失礼しました。みなさまにも良い週末を〜! pic.twitter.com/hOdCYbdkmo
2015-01-31 10:19:12…ところで、ここでわたしが憤慨している「ヒゲ率の低さ」は墺洪軍の以下の服装規定に基いています、一応。(必死で力説)
1910/11年の墺洪軍服装規定を見ていたら「口髭は剃るべからず。ただし竜騎兵第14連隊の兵を除く」とか「兵卒は眼鏡の着用にあたり隊長に許可を申請すべし。士官はこの限りにあらず、眼鏡の代わりに鼻眼鏡も可」なんてあってそれだけで和む。 pic.twitter.com/pDBK3eWpst
2014-07-02 05:48:31先ほどの竜騎兵第14連隊の謎、呆気無く解決。オーストリア・プロイセン間の7年戦争における「コリンの戦い」(1757年)でこの連隊の前身が髭も生え揃わない若年兵であったにもかかわらず獅子奮迅の戦いぶりを見せたため、それを記念して「髭のない兵士の部隊」にすることを決めたそうな。
2014-07-02 06:56:59あともうひとつ言わせてもらうと、1908年メダルがある状態での決闘なので、正確には軍内部では認められているとはいえ、一応階級章を取り外した状態で決闘しなきゃダメだったんじゃ…(公には決闘は非合法だったため、軍人=公人として決闘したということには出来なくなっていたはず)
2015-01-31 10:40:57…リアル路線なので、ついついダメ出しをしてしまう墺洪軍マニアです… ファンタジーなんだから許してあげましょうよ…(汗)
【オマケ:この作品を見るときのもう一つの萌えポイント】
「ヴォンドラーシ!もうちょっと近くに来い」「何でありましょうか、大尉殿!」…執事と主人ものというのがこんなにもてはやされているのに、なぜ従卒と将校ものというのが脚光を浴びないのだろうか。『Kaisermanöver』(1954)より。 pic.twitter.com/iS73wFP93N
2015-04-27 19:41:22オーストリア・ハンガリー帝国軍ものHeimatfilmレビュー
その5
『Kaiserball』(皇帝舞踏会)1956年作品
オーストリアきっての保養地、バート・イシュルを舞台に、ハプスブルク大公の副官とお針子が恋に落ちるシンデレラ・ストーリーと、お忍びの某公国公女のスクリューボール・コメディ。…しかし、ここまで見てくると、どの作品がどういう内容だったか、もはやぐちゃぐちゃに…(汗)
[予告編] こういう画面を観た瞬間に無条件で心拍数が上がると、自分が元気になってきたんだなあと実感します。つぎのHeimatfilmは『Kaiserball』(1956)。監督は毎度お馴染み、相も変わらぬFranz Antel。 pic.twitter.com/xKWmRMBgOU
2015-03-24 07:17:57@kumikosakaki せめて遠隔地から癒やしをお送りします…このあり得ないバート・イシュルの牧歌的風景を…w pic.twitter.com/dkywkRp4Q8
2015-03-25 19:10:06昨年後半から進めてきたオーストリアの1950年代娯楽映画、Heimatfilmレビューも今回で5本目。わたしがとりあげるのは、このなかでも特に墺洪軍(KuK)ものと言われる作品。ドイツに併合された過去を忘れ、自国の誇りを取り戻すための拠り所として美化された「あの時代」へようこそ。
2015-04-03 02:58:27今回の作品は『Kaiserball』(1956)タイトルにKaiserが入るのは恒例。監督はいつものフランツ・アンテル。主役はルドルフ・プラック、脇役にハンス・モーザーというパターン。お約束の「副官が上官の隠れ飲酒発見」シーンも有り。 pic.twitter.com/A5ZZ2hfPQ3
2015-04-03 02:58:52