1950年代のオーストリアHeimatfilmに見る幻想のオーストリア・ハンガリー帝国軍

第二次世界大戦後、ドイツに併合されていたオーストリアは再び独立を取り戻しました。 その時、失われた国の誇りを取り戻すために人々が必要とした幻想、それがかつての栄光の時代、オーストリア・ハンガリー帝国を舞台にしたHeimatfilm(郷土映画)と呼ばれる娯楽映画です。 そんな映画を見た感想ツイートをまとめました。
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しゅにっつぇる (和名:揚げたビーフ) @schnitzel_san

墺洪軍愛好者の中には、軍事的関心からよりも、あの時代が持っていた空気を具象化するよすがとして墺洪軍という象徴を利用している層がいると思う。わたしがその一人であることは当然ながら、1950年代のオーストリアHeimatfilmにおける墺洪軍もまさにそのようなガジェットだったと思う。

2015-01-16 09:16:13
しゅにっつぇる (和名:揚げたビーフ) @schnitzel_san

例えばわたしにとって墺洪軍を扱った文学でまさにこれと思うものの一つがシュニッツラーの短編『グストル少尉』(1900)、劇場のクロークで知り合いのパン屋にサーベルを押さえつけられ侮辱されても何も出来ず、その後決闘か、逃亡か、自死かと延々と迷い続ける軟弱若造少尉の内言が延々続く作品…

2015-01-16 09:16:23
しゅにっつぇる (和名:揚げたビーフ) @schnitzel_san

…なのだ。予備役軍医中尉でもあったシュニッツラーは実際、この作品の発表により軍の権威を失墜させたとして将校扱いを剥奪されるという筆禍を被るのだが、それというのも何よりこの作品が見せた酒と女と賭博の借金にまみれつつ日々を流されるまま生きる少尉という像に真実味があったからこその話。…

2015-01-16 09:16:44

※日本語ではよくシュニッツラーのこの時の立場を予備役中尉、と書いてありますが、正確にはOberarzt der Reserve。予備役軍医(中尉相当)というのが妥当ではないかと思います…。

しゅにっつぇる (和名:揚げたビーフ) @schnitzel_san

…毎度おなじみのヨーゼフ・ロート『ラデツキー行進曲』(1932)の主人公、カール・ヨーゼフ・トロッタ少尉もグストル少尉の兄弟のような存在だ。彼にもし軍人らしさとはなんぞやと問えば、まずシュナップスを一杯煽ってから答えが返ってくるようなありさまだろう。ただし彼らのこの天晴なまでの…

2015-01-16 09:17:02
しゅにっつぇる (和名:揚げたビーフ) @schnitzel_san

…クズっぷりは、まずその青灰色の制服があればこそ生まれる。更に朗らかな墺洪軍文学を出すべきなら、ハシェク『兵士シュヴェイクの冒険』にも、まともな墺洪兵は一人も出てこない。わたしにとってはそここそが墺洪軍の魅力なのだ。この態度は、例のHeimatfilmと重なりつつも多分少し違う。

2015-01-16 09:17:21
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