Lebesgue可測な集合の階層を巡る探求
@tenapyon Delta^1_2 とは、集合論のあるΣ_1式とΠ_1式がすべての実数についてH(ω_1)上で同値であるとき、その同値な式が定義する実数の集合のクラス。このときの「H(ω_1)上で同値」とは、事実としての真偽値の一致を意味する超越的な概念だ。
2015-04-05 07:53:27@tenapyon それゆえ極めて超越的で、つかみどころがない。そこで、もっと強い意味での真偽値の一致を要請して Delta^1_2 の部分クラスを考えてみる。
2015-04-05 07:57:49@tenapyon (言い忘れてたので補足すると H(ω_1) は遺伝的可算集合全体のクラス。可算順序数全体のクラスω_1の、可算部分集合を取る操作のもとでの閉包と思えばよろしい。これはZFC集合論の宇宙のうち、冪集合公理を除くすべての公理を満たす)
2015-04-05 08:01:43@tenapyon 続き。二つの論理式の同値を、出たとこ勝負の感がある「真偽値の一致」ではなく「同値であることがZFCで証明可能」に強める。詳しく言うと、Σ_1式φとΠ_1式ψの間に ZFC |- (H(ω_1)⊨(φ↔︎ψ)) の関係がある場合を考える。
2015-04-05 08:40:06@tenapyon この状況のもとで、同値な二つの式φとψの定める同じ実数の集合 { r∈R | H(ω_1)⊨φ(r) } は Provably Delta^1_2 であるといわれる。Delta^1_2 であることがprovableなんじゃないことに注意。
2015-04-05 08:45:57@tenapyon Provably Delta^1_2 ならルベーグ可測。これはソロヴェイの方法で証明できる。そして、スーパージャンプ階層に登場する実数の集合がすべて Provably Delta^1_2 であることも、スーパージャンプの定義を見てちょっと考えたらわかる。
2015-04-05 08:49:35@tenapyon と、これで話が終わってもいいようなもんだけど、しかしよく考えると Provably Delta^1_2 な実数の集合全体のクラスというのはなんとも考えにくい。そもそも、これはクラスなのか。メタ理論を参照していてZFC内の定義になってないじゃないかと。
2015-04-05 08:53:25@tenapyon それに、ソロヴェイの方法でZFCにおいてルベーグ可測性が証明できる実数の集合のクラスは実はもうちょっとだけ広い。
2015-04-05 08:55:57@tenapyon それで最終的に出てきたのが、Absolutely Delta^1_2 というもの。Σ_1式φとΠ_1式ψに対してたまたま同値であるだけでなく「任意の半順序Pが H(ω_1)⊨(φ↔︎ψ) を強制する」という、ジェネリック拡大での同値性の保存を要請する。
2015-04-05 09:00:57@tenapyon これはまさに「ソロヴェイの方法がうまくいくこと」を念頭に置いたかのような定義なので、まあ順当に、Absolutely Delta^1_2 ならばルベーグ可測、ということはZFCで証明できる。
2015-04-05 09:03:20@tenapyon そして、ここまでくると、話はいまどきの、実数の universally Baire な集合の理論につながってくる。
2015-04-05 09:06:09@tenapyon 後知恵でふりかえると、Absolutely Delta^1_2 というのは、ZFCの枠内で universal Baireness が言える実数の集合の範囲、ということになる。 はい、じゃあ、あとは、次の人お願いします。
2015-04-05 09:07:12そして普遍Baire集合へ(池上さん)
殿下のツイートにあった通り、Absolutely Delta^1_2 な実数の部分集合は必ずルベーグ可測になることがZFCで証明できるけど、「全てのDelta^1_2 な実数の部分集合がルベーグ可測である」という言明はZFCでは証明できない。実際、Lではこの言明は成り立たない。
2015-04-05 17:44:52一方で、ソロヴェイは、↓の言明がどういうときに成り立つかを、VがLとどのくらい「離れているか」ということを表現する言明で特徴づけた:全てのDelta^1_2な実数の部分集合がルベーグ可測であることと、任意の実数xに対して、L[x]上のランダム実数が存在することは同値になる。
2015-04-05 17:48:56Sigma^1_2に対しても、対応する命題がある:全てのSigma^1_2な実数の部分集合がルベーグ可測であることと、任意の実数xに対して、(ルベーグ測度の意味で)至るところ全ての実数がL[x]上のランダム実数になることは同値。
2015-04-05 17:51:18これらの命題の証明のアイディアは、ZFCの下で、全ての absolutely Delta^1_2 な実数の部分集合がルベーグ可測である、という命題の証明の延長線上にあり、どちらもソロヴェイモデルでの議論から出てきている。
2015-04-05 18:01:31Absolutely Delta^1_2 の場合、(Vに近い)可算推移的モデルMのランダム強制による強制拡大M[g]とVで、考えている集合の解釈が絶対的であることがポイントになるが、
2015-04-05 18:02:17Delta^1_2, Sigma^1_2 の場合、L[x]のランダム強制による強制拡大L[x][g]とVでの絶対性が重要になる(シェーンフィールドの絶対性)。
2015-04-05 18:02:21ソロヴェイモデルの議論では、考えている集合をcaptureしているモデル(この場合、MやL[x])の上でのランダム実数がたくさんあることが必要だが、これは、Mに対してはベールの範疇定理(の議論)から従い、L[x]に対しては、ZFCの下では保証できず、↓のように仮定することになる。
2015-04-05 18:06:16↓に書いたソロヴェイによるSigma^1_2集合に対するルベーグ可測性の特徴づけから、例えば、可測基数が存在すれば、全てのSigma^1_2集合がルベーグ可測になることがわかる。
2015-04-05 18:09:13では、可測基数の存在を仮定したとき、Delta^1_3集合たちのルベーグ可測性はどうなるだろうか?これについてはシルバーが否定的な解答を出していて、Uを可測基数上のnormal measureとしたとき、L[U]でDelta^1_3なルベーグ不可測集合を構成している。
2015-04-05 18:11:53このころには、absolutely Delta^1_2が持つ性質を抽出した、absolutely Suslin という性質が注目されていた。
2015-04-05 18:29:16