Lebesgue可測な集合の階層を巡る探求
実数の集合Aが順序集合Pに対して absolutely Suslin とは、(記述集合論の意味での)木の対(T, U)が存在して、A=p[T]となり、かつ、PによるVの任意の強制拡大の中で、"p[T]=ω^ω \setminus p[U]" が成り立つこと。
2015-04-05 18:30:12ここで、[T]は、Tの無限枝全体の集合、p[T]は、[T]の第一成分の射影による像を表す(木の定義などの詳細は、例えば、Kanamori本の第12節を参照してください)。
2015-04-05 18:30:36ソロヴェイモデルの議論から今までのルベーグ可測性に対する議論は、「実数の集合がランダム強制に対してabsolutely Suslinならば、ルベーグ可測である」という形でまとめることが出来る。
2015-04-05 18:32:48では、巨大基数の存在の下で、どのような実数の集合がランダム強制に対して absolutely Suslin となるか?
2015-04-05 18:43:23マーティンとソロヴェイは、可測基数の存在を仮定したとき、全てのSigma^1_3集合がabsolutely Suslinになるとは限らないが、任意の Sigma^1_3 論理式が p[T]という形で、VとVのランダム強制拡大の間で絶対的に表現できることを示した。
2015-04-05 18:44:13(つまり、木 T を構成し、"x \in p[T]" と与えられたSigma^1_3 論理式 "\phi [x]" が、VとVのランダム強制拡大で同値になることを示した。)この木のことを、Martin-Solovay tree と言う。
2015-04-05 18:44:44その後、マギダーは、可測基数が存在し、さらに、ω1上のプレシピタスイデアルが存在する場合、全ての Sigma^1_3 な集合がランダム強制に対して absolutely Suslin になることを証明した。特に、全ての Sigma^1_3 な集合はルベーグ可測になる。
2015-04-05 19:06:48この議論では、Sigma^1_3 な集合 A に対する Martin-Solovay tree T に対して、プレシピタスイデアルを使ってもう一つの木 U を構成し、(T,U) が A の absolute Suslinness を witness することを見る。
2015-04-05 19:13:45こうして、巨大基数とプレシピタスイデアルの存在から、Sigma^1_3 な集合の absolute Suslinness とルベーグ可測性がわかった。では、巨大基数の存在のみから、同様の結論は得られるだろうか?
2015-04-05 19:16:13その後、Martin's Maximum(MM)が導入され、MM に関連する研究から、巨大基数とルベーグ可測性の研究が進んでいく。MM が与えた集合論への影響の一部については、ここ(togetter.com/li/705690)でつぶやいた。
2015-04-05 19:20:52MMのその関連項目の研究から、超コンパクト基数があると、実数を付け加えずに ω1 上のプレシピタスイデアルの存在がforceできることがわかった。このことから、超コンパクト基数がありその上に可測基数があると、全ての Sigma^1_3 な集合がルベーグ可測になることがわかる。
2015-04-05 19:27:46ウディンは、この議論を見て、ソロヴェイモデルの元々の議論を組み合わせ、超コンパクト基数の存在から、Sigma^1_3 だけでなく、L(R) に属する全ての実数の部分集合が、ランダム強制に対して absolutely Suslin になり、よってルベーグ可測になることを証明した。
2015-04-05 19:29:46さらに研究が進み、↓のツイートの結論の仮定は、「ウディン基数が無限個あり、とその上に可測基数が存在する」という仮定に弱められることが、ウディンとシェラーによりわかった。
2015-04-05 19:33:51一方で、時を遡ると、マーティンは、可測基数の存在の下で、全ての Sigma^1_1 な集合が(ゲール・ステュワートゲームにおいて)決定的であることを示した。この意味での決定性は、ルベーグ可測性を初めとする、多くの性質を導くことが知られていた。
2015-04-05 19:37:39可測基数 κ が与えられた時、Sigma^1_1な集合Aの決定性を導くためにマーティンが構成したのは、A = p[T]となる特別な性質を持つ木Tであり、この性質を持つ木を κ-homogeneous と言い、このようなAのことをκ-homogeneously Suslinという。
2015-04-05 19:43:47A が κ-homogeneously Suslin なら、A が、濃度 κ 未満の任意の順序集合に対して absolutely Suslin であることが、Martin-Solovay tree の構成における議論を使うとわかる。
2015-04-05 19:45:37ここで、さっきのシェラーとウディンの結果の話に戻る。巨大基数の存在の下で、L(R) に属する全ての実数の集合は、ランダム強制に対して absolutely Suslin になり、ルベーグ可測になるのだった。
2015-04-05 19:48:57マーティンとスティールは、内部モデル理論の研究をきっかけにして、ウディン基数が無限個ありそのsupがδで、δより大きい可測基数が存在するとき、δより小さい任意の κ に対して、L(R) に属する全ての実数の集合が κ-homogeneously Suslin になることを示した。
2015-04-05 19:52:12このことから、特に、L(R) に属する全ての実数の集合が(ゲール・ステュワートゲームの意味で)決定的になることが従う。
2015-04-05 19:53:26さらにウディンは、ウディン基数が非有界に存在するとき、1) 任意の基数 κ に対して、L(R) に属する全ての実数の集合が κ-homogeneously Suslin になること、
2015-04-05 19:56:232) 任意の基数 κ に対して κ-homogeneously Suslin になることと、任意の順序集合に対して absolutely Suslin になることが同値であること、を証明した。
2015-04-05 19:58:08この 2) により、「任意の順序集合に対して absolutely Suslin である」という性質が、巨大基数の存在を仮定したとき、実数の集合が持ちうる性質の中で rigid なものであることがわかってきた。
2015-04-05 19:58:28そして、ウディン基数が非有界に存在するとき、L(R) に属する集合だけでなく、さらに複雑な集合(例えば R^#)が、任意の順序集合に対して absolutely Suslin になることもわかっている。
2015-04-05 20:01:11Absolute Suslinness は、木と強制法の言葉で表現された実数の集合の性質であったが、フェング・マギダー・ウディンにより、位相空間の言葉で特徴づけできることがわかった。Absolute Suslinness を位相空間の言葉で記述した概念が普遍ベール性である。
2015-04-05 20:03:29