雌伏と幸せのボルネオ鎮守府
不知火はとてつもなく扱いにくい娘だった。それに大男が振り回されているのがおかしくて思わず笑ってしまう。 「司令。不知火は上官をいびるような陰湿な性格ではありません」#落ちぬい二次
2015-04-02 00:12:45不知火がむすっとした顔で反論する。兵頭はそれを見て無性に懐かしさを覚えた。有能だが生意気な秘書官殿は、今も自分を司令官として認めてくれている。その事実に目頭が熱くなった。#落ちぬい二次
2015-04-02 00:13:18「長門は変わらないな」 「そうでもないぞ。馬鹿司令に買ってもらったDUCATIで毎週楽しくツーリングしている。次はモトクロスに手を出そうと思っているところだ」#落ちぬい二次
2015-04-02 00:13:54ちゃらり、とこれ見よがしにバイクのキーを出してみせる。これはかつて兵頭が特大の落ち度をやらかした時にそのフォローをする代償として長門が買わせたものだ。ちなみに割賦は未だに兵頭の口座から毎月引き落とされている。#落ちぬい二次
2015-04-02 00:14:17「神通はどうしてる?」 画面には白百合の如き神通の姿はない。誰よりも厳しく、誰よりも優しく、そして誰よりも繊細な彼女がどうしているのか。自分が気にかけるのもおこがましいが、ずっと胸に引っ掛かっていた。いっそ自分を見限って新天地に旅立ってくれていればいいと思う。#落ちぬい二次
2015-04-02 00:15:09だが、そんな卑屈な心中を見透かしたようににやりと笑って長門が口を開く。 「巡回嚮導さ。あれほどの有能な水雷戦隊指揮官をろくに稼働していないここに留める条件でな、ほとんど出ずっぱりで日本中教えて回っているのさ」#落ちぬい二次
2015-04-02 00:16:00あの神通が自分を待つために上の命令に逆らった。自分の非公式な口頭の指示の言葉尻を捉えたのではなく、正式な命令を拒んだ。軍人にとってそれは本来やってはいけないことだ。だが、自分を待つためにあえてそれをやった。#落ちぬい二次
2015-04-02 00:16:53「おや、泣いているのか馬鹿司令?」 「眠くてな」 欠伸をかみ殺すふりをする。自分でもわざとらしいと思う。 「長門、神通に礼を言っといてくれ」 「馬鹿め。礼くらい自分で伝えろ」#落ちぬい二次
2015-04-02 00:17:31長門の大上段から振り下ろすような言葉にはっとする。そうだ、これ以上甘えてはいられない。 「……そうだな。じゃあ、あと二年半待っててくれと伝えてくれ」 必ず戻ると、そう宣言する。それを聞いて長門と不知火が満足そうにうなずいた。#落ちぬい二次
2015-04-02 00:18:41「ああ、二年半だ」 「不知火も二年半だけ待ちます。だから必ず、浜風さんと一緒に帰ってきてください」 「俺、あと二年半も掛け持ちすんのか……」 「ああ、その、なんだ。がんばれイルカ」#落ちぬい二次
2015-04-02 00:19:13正直に言えば、私も話したかった。直接謝って楽になりたかった。でも、それでいいんだろうか。不知火さんと神通さんから一也さんを奪って、一孝を授かって。私の幸せは全部、不知火さんたちを踏みつけて得てしまったものだ。#落ちぬい二次
2015-04-02 00:20:26だから、謝るなら直接会ってでないと。日本に帰って、直接謝って、それからお礼を言おう。 それまではどうか、めいっぱい幸せでいさせてください。 ---はまダイアリー---#落ちぬい二次
2015-04-02 00:20:44あとがき
以上、責任感とか色々な感情で家族水入らずでも色々気にしちゃううじうじ夫婦になってしまいました。浜風が幸せになってほしいのと、浜風をお母さんにしたいという気持ちだけが本当です。勢いだけの四月馬鹿なので気にせず読み飛ばしてください #落ちぬい
2015-04-02 00:25:17