rsbs日誌#42

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌　照れ顔の者、顔を赤く染める者、満更でもない者、嬉し泣きを溢す者、様々であり、娘らはパチパチと一人ずつに拍手を送り、そしてシャッターを切った「そして妖精さん諸君。一人一人にバラを授けられんで申し訳ない。わしらに着いてきてくれて有り難う。着任を認める。おめでとう」

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌　箱の中から取り出した、大輪の青いバラの花束を比良坂は妖精さん達に授けた。妖精さん達は大いに喜び、歓声を上げる。艦娘らも彼らへと大きな祝福の拍手を投げた。無下にされがちな彼らにとっては思っても居ない僥倖だったであろう。己の主は自分達さえも大事にしてくれている、と…

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌　「さて、月影？お前さんの番じゃよ」不意に己の名を呼ばれ、月影はキョトンとした。そんな彼女を気にせず、比良坂は皆の前に彼女を引っ張り出してきた「ちょ、ちょっと…何なのよ？何ってば？」「大事な催しである。心してわしの言葉を受けるが良い。妖精淑女諸君。耳を傾けておくれ」

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌　そして、比良坂は老獪ながらも良く通る声で宣言した「月影よ。お主に吹雪型駆逐艦、五番艦の『叢雲』の名を授ける。同時に当鎮守府最初の戦闘艦娘として、初代秘書艦を命ずる。わしに着いてきてくれて…有り難う」厳かに、比良坂はそっと月影…いや、叢雲の胸に青い薔薇をさした。

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌　言い草はまさに、プロポーズか何かの様であり、少女、妖精達は歓声を上げ、ひっきりなしに写真機のシャッターを切った。余りに無縁な、祝福の言葉に叢雲は頬を真っ赤に染めながら身じろいで、呟いた。「え、ぁ…あり、がと…その、アンタ…青い薔薇、もうひとつ無かったりしない？」

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌　「ふむ。青い薔薇をご所望か」照れくさそうにドキマギとしながら呟く叢雲に、比良坂は懐のハンケチからヒラリと一輪の青いバラを差し出して見せた。「あー…えっと…秘書艦として、アンタの着任を認めてあげるわ。着任おめでとう『提督』」叢雲もまた、比良坂の胸に青い薔薇をさした。

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌　言葉と共に、飾られる青い薔薇に少女と妖精達の歓声は最高潮を迎え、頻繁にシャッターが切られ、ストロボが焚かれた。「これはまた…これはまた。有り難き幸せじゃな。秘書艦殿」「茶化さないでよ全く。アンタだけが祝福されないなんてのは…不公平でしょう？それだけよ」

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌　「優しい子じゃなぁ。のう…『叢雲』」「確りしてよね…『提督』」恥かしそうでありながらも、まんざらではない笑みを浮かべて少女、叢雲は笑った。愛おしい笑顔だと、比良坂は心の中で独白する。こんな事を言えば、きっと彼女は不貞腐れてそっぽを向いてしまうだろうから。

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌　「さぁーて。これにて着任式は終わりじゃ。妖精淑女諸君。荷物をボチボチ運び入れよう。我らの鎮守府に。我らの家に。今、此処からがわしらのスタートである。わしらの生活の、始まりの一歩である。力強く、一歩を踏み出そう」応、と言う威勢の良い元気な声が南の空に響き渡った。

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌　あの時の写真は今でもアルバムに飾られて、あの時の時間を切り取ったように、フィルムの中の彼女らは動き、笑顔を見せてくれる。艦娘によっては、何時でも見れるようにと部屋に飾る者も居た。文字通りの、色褪せない思い出。鮮やかな青いバラと、鮮やかな青い空が、そこにはあった。

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌　魔女と呼ばれるには、聊かお節介な一人の少女と、脛に傷持つ少女達の、始まりの一頁。例えどれ程の時が経とうと忘れられない、始まりの一頁。礎となる、大切な思い出。長い時が彼女らを置き去りにしたとしても、色褪せる事の無い…色濃く鮮明に残った、夏の青空の様な、確かな思い出…

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌　…―――レズボス鎮守府の大きな大きなアルバムに付けられた。最初の思い出達の、物語―――…