rsbs日誌#42

レズボス日誌。第四二巻ツイ鎮SS
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﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 少女の姿をした魔女は、沢山の知恵と悲しい悲しい闇を飲み込んで、血の色をした眼の色は益々紅く、髪の色はより深く黒い色に染まってしまいました。少女の姿をした魔女は、やがて自分が住んでいた醜い醜い、大嫌いな世界を捨てて旅立ちました。沢山の違う世界を巡りました。

2015-04-09 22:15:16
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#rsbs日誌 空を飛んで、海を渡って、丘を越えて…明るい世界も、暗い世界も巡り歩きました。少女の姿をした魔女は、神様とも悪魔とも呼ばれました。ヒトを助ける事もあれば、世界を混沌に叩き落としたりもしました…正義も悪も、彼女の気まぐれ…指先一つで決めてしまいました。

2015-04-09 22:16:05
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 やがて少女の姿をした魔女は、とある世界に辿り着きました。その場所は、少女の姿をした魔女の終着点ではありませんが、大層痛く気に入った様でもありました。嘗て彼女を産み落とした世界にも何処と無く似た世界であった気もします。しかし…大きく違うところもありました。

2015-04-09 22:17:20
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 何故ならばその世界は、少女の姿をした魔女のとてもとても大好きな魔術と魔法と科学技術と戦争と混沌と、面白おかしいロクデナシに満ち溢れた薄暗い黄昏の様な世界だったからです。頬を撫でる風。肺を満たす空気。それらは酷く、少女の姿をした魔女に居心地の良い物でした。

2015-04-09 22:19:20
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#rsbs日誌 この物語は、薄暗い黄昏の様な世界の始まりの物語。少女の姿をした魔女が動き始める物語。愛される事の無かった可哀想な少女の姿をした、一人のチッポケで惨めな魔女と…鉄で出来た機械の体を与えられた少女との、始まりの物語。黄昏の世界で狂った輪舞を紡ぐ…序章のお話。

2015-04-09 22:20:15

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﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 レズボス日誌:エピソード0.1  『ニコチアナの花束を』

2015-04-09 22:24:03

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﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 湧き上がる歓声。舞い散る紙吹雪に空間を彩る数々のリボン。着任式と観艦式を兼ねたイベントに、港町は大騒ぎであった。目の前に奇跡が在るのだ。目の前に希望が在るのだ。老若男女が騒ぐのも無理は無い。鋼の身体を与えられた娘達が、胸に蒼い華を挿して、威風堂々と立ち並ぶ。

2015-04-12 01:16:07
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#rsbs日誌 人類を底無しの恐怖に突き落とした悪夢の存在…深海棲艦。その悪夢を確実に打ち破る、紛れも無い力…艦娘。奇跡と形容する他ない物が今…己の目の前に居るのだ。人々が魅了されるのは当然と言って良い。民衆にとって艦娘とは、神にも等しい存在と呼べるのだから…

2015-04-12 01:18:06
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#rsbs日誌 そんな暖かい雰囲気を遠くから眺める者が独り居た…髭を蓄え、温和な表情を浮かべる壮年の男性。「いやはや…この港町にもまた光が戻ったようだ」「旦那様、あまり潮風を浴びていてはお体に触ります。春とはいえまだ肌寒いのですから」「もう少しばかり、眺めさせておくれ」

2015-04-12 01:18:31
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#rsbs日誌 壮年の男性は何かに思いを馳せるかの様に、じっと見つめていた…果たして彼はどんな思いを胸にしながら見つめているのか…不意に、ガサ…と草を踏み付ける音が彼らの耳をくすぐった。風に撫でられる音とは違う、異質の音。ゆっくりと此方に歩み寄る、足音の響きが聞こえてきた…

2015-04-12 01:19:13
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#rsbs日誌 「いやはや…御目出度い日じゃな。空は晴れやか。風はあるが真に心地が良い…海鳥達も機嫌よく、翼を広げておる」酷く老獪な気配を漂わせた、紺の第一種軍衣と揃いのコートを着込んだ小さな少女。胸には…蒼く輝く薔薇が一輪挿されて居た。しかし…人ならざる紅い瞳を彼女は持っていた

2015-04-12 01:20:08
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#rsbs日誌 「御機嫌よう…貴女も艦娘、ですかな…?」壮年の男性は特に驚く事もなく、そっと静かに囁いた。「そうでもあるし、そうでもない…『帝殿』。わしは嘆願に参った。一つお話を聞いては頂けぬか?」少女の言葉に付き人が鋭く反応した。無理もない事だ。己の主の身分を知っているのだから

2015-04-12 01:20:20
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「…いやはや。是でもお忍びなのですがね」困った様に笑う壮年の男性を庇う様に付き人が立った。「お退きなさい。お話の邪魔です」「しかし!」「此処で命を失ったのならば、所詮その程度と言う事です。それに私は継承権が低い…代りは幾らでも兄弟に居ます」壮年の男性は淡々と呟いた

2015-04-12 01:21:13
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「中々豪胆な御仁であられるなぁ…?」くすくすと少女は嗤い、壮年の男性は微笑んだ。「その様な身の上ですから。して…なんでしょうか?嘆願と言いますのは」少女は静かに、指を伸ばした。その先にあるのは港町であり、人々であり…艦娘であった。「わしに一つ、提督の椅子をおくれ」

2015-04-12 01:21:25
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌  「ほう…それはそれは…またどうして?」「それを今からお話しする。帝殿や…お前様は艦娘がどの様にして産まれたか…存じておられるかな?」少女の問い掛けに男性は僅かに小首を傾げる。「詳しくは聞き及んで居ませんがね…概ね、古代からの呪術や神道、科学等で…と」

2015-04-12 01:23:07
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「概ね間違っては居らん様じゃな…」「少なくない犠牲の上に成り立った…とも聞いていますね」「ほう…では少しばかり真実を語ろうか。是こそが艦娘誕生の犠牲と真実の欠片じゃよ」そう呟くや、少女は軍服の留め金に指を掛け、一つずつ外していくではないか。「一体、何を…!?」

2015-04-12 01:23:18
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 言葉を紡ぐ暇さえ無く、少女は柔肌を晒した。雪の様に白い肌の上を、縦横無尽に駆け巡る紅い紅い傷跡。そして縫合痕。それはぞろぞろと…まるで百足の様に肌の上を這いずり回っては蠢いていた…「か、は…!?」余りの惨たらしさに壮年の男性は吐き気を覚えた。「目を背けてはならぬ」

2015-04-12 01:24:16
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「旦那様!」懐から銃を抜く付き人に、少女は手を掲げた。途端、彼らはまるで目に見えぬ腕に突き飛ばされたかの如く、吹き飛んだ。「まだ話は終っておらん。会話の邪魔じゃ。物騒な物は仕舞っておれ」ぜい…ぜい…と荒い呼吸を繰り返す壮年の男性の両頬に、少女は手を添える。

2015-04-12 01:24:34
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「わしを見よ。わしの眼を見よ。わしの見てきた物を見よ…お前様にはその義務がある…日ノ本の王の血族としての義務が…」紅い紅い瞳を、壮年の男性は見つめた。刹那、頭に衝撃が走った。目の前を駆け巡るは…殺戮にも程近い人体実験と、児戯にも等しい研究者達の戯れ…穢される少女…

2015-04-12 01:24:46


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﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 飛び散る血飛沫に、溢れ出る臓物。引き裂かれる筋に暴かれる純潔。泣き別れる骨と肉。生きたまま切り出される己の心臓。埋め込まれる鉄。流し込まれる漆黒の悪意。爆ぜる肉体。死ねぬ体。蝕む心。悲鳴、号泣、嗚咽、殺意…赤と黒の入り混じった地獄。蛍光灯が照らすテロテロとした死…

2015-04-12 01:26:56
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 余りにも残酷。余りにも暴虐。余りにも悲痛…そして、余りにも自慰が過ぎる科学者達のエゴ…血と臓物と死で溢れた狂った花園の中で怯える少女達…その中に…『目の前の少女』もまた居た…雪の様に透き通った肌。血の様に紅い瞳。死の淵を思わせる様な漆黒の髪。正に、彼女その物…

2015-04-12 01:27:08

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