【はやぶさ物語2010】寮美千子

2010年の小惑星探査機「はやぶさ」の地球への帰還の物語。2010年6月13日22時51分、60億kmの旅を終え、地球に大気圏再突入。
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寮美千子 @ryomichico

「あきらめるな、はやぶさ。 きっと方法を探してやるから」 どうして、どうしてだろう。 どうして地球のみんなは、 そんなに一生懸命になれるんだろう。 こんなボロボロのぼくを、 まだ信じることができるんだろう。 >【はやぶさ物語】@ryomichico

2015-06-13 12:10:21
寮美千子 @ryomichico

「はやぶさ。太陽の風を使おう!」 「えっ?」 「太陽風の輻射圧で、姿勢を制御しよう」 思いもよらない、すばらしい方法だ。 この方法なら、 少しも燃料を使わないで姿勢制御ができる。 なんてすごい人たちなんだ! >【はやぶさ物語】@ryomichico

2015-06-13 12:11:17
寮美千子 @ryomichico

太陽風の嵐が吹き荒れたあの日、 ぼくの翼を散々痛めつけたあの風が、 こんどは、ぼくを助けてくれることになった! >【はやぶさ物語】 @ryomichico

2015-06-13 12:11:56
寮美千子 @ryomichico

地球帰還軌道に乗ってから1年後。 ぼくは、地球から最も遠いところにいた。 地球と太陽の距離の2倍半。 なつかしい地球は、 星の海にまぎれた小さな点でしかない。 帰りたい。地球に帰りたい。 ぼくが生まれた星に。 >【はやぶさ物語】@ryomichico

2015-06-13 12:14:21
寮美千子 @ryomichico

ところが、 最後に1基だけ動いていたイオンエンジンが、 とうとう息絶えてしまった。 ぼくは、すべてのエンジンを失った……。 あと半年、あと半年まともに動いてくれれば、 地球に戻れるのに! >【はやぶさ物語】@ryomichico

2015-06-13 12:15:30
寮美千子 @ryomichico

2009年11月4日 イオンエンジンすべて停止。 終わった、と思った。 だれもが帰還は無理だと思った。 管制室のボスでさえ、 もうこれでおしまいと思ったその時だった。 イオンエンジンの設計担当者が、 驚くべき発言をした。 >【はやぶさ物語】@ryomichico

2015-06-13 12:16:10
寮美千子 @ryomichico

「まだ動く2基の部品を組み合わせて動かしましょう」 「無理だ。その2基は、つながってないぞ」 「実は……もしもの時のためにダイオードを1つ、 組み込んでおいたんです」 「なんだって、聞いてないぞ!」 「すいません。黙ってやりました」 >【はやぶさ物語】@ryomichico

2015-06-13 12:18:14
寮美千子 @ryomichico

「バカヤロー!よくやった!」 隠された秘密の部品、たった数グラムのダイオード。 それが、ぼくの命を救った。 上司に黙ってまで、 ダイオードを組み込む担当者のその執念が、 ぼくを救ってくれたんだ。 どこまでも、あきらめない心が! >【はやぶさ物語】 @ryomichico

2015-06-13 12:19:41
寮美千子 @ryomichico

2基のエンジンを組み合わせた クロス運転は成功した。 ぼくは帰れる。 やっと地球に帰れるんだ! >【はやぶさ物語】@ryomichico

2015-06-13 12:20:49
寮美千子 @ryomichico

「カプセルを、なんとしても地球に無事に届けたい」 「もちろんです。それがぼくの使命ですから」 「けれど、はやぶさ。 安全なところまでカプセルを運んでもらうと、 おまえの体は、大気圏で燃え尽きてしまうことになるんだ」 >【はやぶさ物語】@ryomichico

2015-06-13 12:22:25
寮美千子 @ryomichico

「はやぶさ。 ほんとうなら、また宇宙の軌道に乗せて、 新しい探査の旅に出してやりたかったんだが……」 「……いいんです。ぼくは、いいんです。 ぼくは、星のかけらを届けるために、 生まれてきたんだから」 >【はやぶさ物語】@ryomichico

2015-06-13 12:23:26
寮美千子 @ryomichico

ああ、地球だ。 地球が近づいてくる。 ぐんぐん大きくなる。 なつかしい地球。青い惑星。 命の満ちる星。 カプセルの着陸地点は、 オーストラリアのウーメラ砂漠だ。 >【はやぶさ物語】@ryomichico

2015-06-13 12:26:46
寮美千子 @ryomichico

日本時間午後7時51分 大気圏突入3時間前。 ぼくはカプセルを切り離した。 「さあ、行くんだ。 星のかけらを運んでくれ。頼んだぞ」 祈るような気持ちで、ぼくは伴走した。 >【はやぶさ物語】@ryomichico

2015-06-13 12:28:26
寮美千子 @ryomichico

ミッション終了。 もうすぐ、電池も切れる。さよならだ。 そう思ったとき、声が聞こえた。 管制室からの声。 「はやぶさ。最後の指令だ。 こっちをごらん。地球を振り返るんだ。 写真を送ってくれ、地球の写真を」 >【はやぶさ物語】@ryomichico

2015-06-13 12:29:32
寮美千子 @ryomichico

「はいっ」 ぼくは渾身の力を振り絞って、カメラを地球に向けた。 そして、夢中でシャッターを切った。 最初の5枚は真っ黒だった。 次の写真で、地球が撮れた。 送ろうとして、途中で力が尽きた。 >【はやぶさ物語】@ryomichico

2015-06-13 12:30:45
寮美千子 @ryomichico

これが、ぼくが見た最後の地球の姿。 >【はやぶさ物語】@ryomichico pic.twitter.com/g0sb8MfUvb

2015-06-13 12:32:34
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寮美千子 @ryomichico

そしてぼくは、流星になった。 ばらばらになって、 燃えながら地球に降っていった。 ただいま、地球。 ただいま、みんな。 あきらめないで、 ぼくを信じてくれてありがとう。 さようなら! >【はやぶさ物語】@ryomichico pic.twitter.com/wPfumlLaXl

2015-06-13 12:39:06
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寮美千子 @ryomichico

はやぶさのカプセルからは 2000個近くの微粒子が見つかり、 太陽系の起源を語る 小惑星イトカワのものだとわかった。 月以外の天体の固体表面からの 人類初のサンプルリターンとなった。 ありがとう、はやぶさ。 きみこと、忘れない。 >【はやぶさ物語】@ryomichico

2015-06-13 12:42:22
寮美千子 @ryomichico

「はやぶさ2010」 作曲・歌:清田愛未 作詞:寮美千子  映像提供:国立天文台はやぶさ観測隊 youtu.be/oZdsayDuo1w   @ryomichico

2015-06-13 12:45:51
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