「馬鹿」の起源・・・法的安定性を損なう「馬鹿」の所業

「馬鹿」は、古代中国の強国・秦を滅亡に導いた大事件だった。法的安定性を損なうことは国を亡ぼす。 今、日本は「馬鹿」をやろうとしているのだろうか?絶対に避けなければならない。
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shinshinohara @ShinShinohara

「馬鹿」の起源をご存じだろうか。秦の始皇帝の死去後、絶大な権力を握った趙高は、朝廷に鹿を連れてきた。鹿を趙高は「馬だ」といった。鹿だ、と答えた人間は皆殺しにした。趙高の権力を恐れた秦の大臣たちは口をそろえて「馬でございます」と答えた。この瞬間、秦の法治は崩壊した.

2015-06-17 12:25:15
shinshinohara @ShinShinohara

秦は春秋戦国時代の強国の中でも独特の統治だった。「法治」。その他の国は、優れた王や大臣が現れると栄えるが、その人物が死んだ途端に国力が低下する、という盛衰を繰り返した。孔子は「礼(儀式化)」によって国を治めることを提案し、法治国家へのヒントを提示したが、まだ十分ではなかった。

2015-06-17 12:26:10
shinshinohara @ShinShinohara

法治で国が栄えることを示したのが管仲。ルールを明確に定め、君主の気分で罰せられることがないようにし、豊かな生活を送るにはどう行動すべきかを全国民に示した。これにより斉は中華一の強国にのし上がる。しかし管仲の事業は十分理解されず、死後、あっさりと法治は失われ、斉は弱体化していった。

2015-06-17 12:27:10
shinshinohara @ShinShinohara

秦は意識的に法治国家となった。商鞅は秦国の法律を明確に定め、国民はおろか、総理大臣に至るまで法に従うよう定めた。商鞅は自ら定めた法律により死罪となるという皮肉な結果を招いたが、秦はこの後、着実に国力を増した。君主や大臣、武将が誰になろうと。

2015-06-17 12:27:57
shinshinohara @ShinShinohara

秦の法治主義を完成させたのが韓非子。のちに始皇帝となる秦王はその著作を読み、いたく感激した。法によって国を統べることにより、秦は並ぶものなき強国となった。そのほかの国が君主の能力によって栄枯盛衰を繰り返したのと比べて、好対象であった。

2015-06-17 12:28:20
shinshinohara @ShinShinohara

なぜ法治主義だと栄えることができるのだろうか?信賞必罰のルールが明確だからだ。他の国では、君主の気分次第で罰せられたり褒められたりして、庶民はそのつど惑乱していた。君主が入れ替わるたび、それまでの努力が水の泡になったりしたのだ。

2015-06-17 12:28:54
shinshinohara @ShinShinohara

秦の強国ぶりは、大臣でさえ法に従わなければならぬ、という法治主義によって達成された。君主が少々愚かでも、大臣がパッとしなくても、法に従って行動すればそこそこのパフォーマンスが得られるよう、法が設計されていた。秦は法治国家だったからこそ、強国にのし上がれたのだと言える。

2015-06-17 12:29:29
shinshinohara @ShinShinohara

国際政治経済学者のスーザン・ストレンジが指摘したのも、まさにこのことだ。秦以外の王国は、ストレンジが指摘する「関係性権力」で統治されていた。君主の気分で栄えたり衰えたり。君主の優劣で盛衰が決まるので、国全体としての継続的発展ができなかった。

2015-06-17 12:30:30
shinshinohara @ShinShinohara

しかし秦は法治構造を構築し、その構造の中で人々がどうふるまうべきか、ルールを明確にした。こうすることで君主が入れ替わっても庶民に迷いがなくなり、今まで通り商売ができるようになった。ルールさえ明確であれば、努力を重ねることができ、ますます栄える。これが構造的権力だ。

2015-06-17 12:31:36
shinshinohara @ShinShinohara

現代の民主主義国家は、すべて法治による構造的権力で統治している。どうふるまえば犯罪となり、どうふるまえば正々堂々と豊かになれるのか。そのルールが明確だから、人々は迷いなく努力を続けられるのである。だから民主主義国家では、法的安定性をことのほか重視する。

2015-06-17 12:32:00
shinshinohara @ShinShinohara

冒頭に戻ろう。趙高は「馬鹿」事件により、秦の法治主義を葬り去り、権力者の気分で左右される権力主義に転換させてしまった。このため、秦の人々は何に従うべきか、惑乱するようになった。始皇帝の死後、わずかな年数で秦が崩壊したのは「法的安定性の喪失」があったからだといえる。

2015-06-17 12:32:24
shinshinohara @ShinShinohara

秦ののちに成立した漢は反省に立ち、法治を採用した。その後、漢は400年もの平和と繁栄を築いた。以後、どの王朝も法治をとった。秦末期のあまりに些末な法律への反省もあり、老荘思想を一部導入しおおらかな法律にしたという違いはあれど、法治は国を栄えさせるのに必須だという共通認識となった。

2015-06-17 12:33:59
shinshinohara @ShinShinohara

法治を選択し、法的安定性の維持に努めれば、愚かな君主・大臣が現れても国力を大きく損なわずにすむ。これが、秦とその後の王朝が教えた教訓である。欧米ではモンテスキューが「法の精神」で訴えた。ルールが明確だから、人々は迷いなく努力を続けられる。継続した努力が、国を栄えさせるのである。

2015-06-17 12:34:33
shinshinohara @ShinShinohara

しかし法的安定性を損なうと、人々は何で罰せられるか分からなくなる。何かの秘密を暴いた罪で囚われても、その秘密が何なのか明かされないまま、罰せられる恐怖があれば、人々は萎縮する。法が法を否定するような矛盾が起きると、法的安定性が失われ、人々はどう生きていくべきか、困惑する。

2015-06-17 12:35:15
shinshinohara @ShinShinohara

人々が困惑すれば、どう努力すれば財産を失わずに済むのか、分からなくなる。権力者のご機嫌を損なわないように、という「関係性権力」で国が支配されるようなる。愚かな君主になれば、北朝鮮そっくりになる。君主の気分次第で処刑されてしまうのだ。

2015-06-17 12:35:38
shinshinohara @ShinShinohara

現在、安全保障関連法案について、憲法学者の大多数が違憲だと述べている。これに対し高村氏は砂川判決を根拠として合憲だとするが、それを支持する憲法学者はごく少数にとどまるようである。与党議員は「合憲」で口をそろえる。何かに怯えるように。

2015-06-17 12:36:18
shinshinohara @ShinShinohara

趙高が「鹿」を「馬」だと言い張ったのと似てはいまいか。並み居る政治家たちが「馬でございます」と口をそろえるのも。「馬鹿」がまかり通れば、失われるのは法的安定性である。法的安定性が失われた時、強国であったはずの秦はあっという間に滅びた故事を、私たちは忘れるべきではないのではないか。

2015-06-17 12:37:10
shinshinohara @ShinShinohara

法治を放棄した後、秦ではすぐに陳勝・呉広の乱が勃発する。自ら法的安定性を損ねておきながら、庶民には些末な法律を押し付ける矛盾に我慢しきれなくなった庶民が、全国で蜂起した。リーダーが法を守らないのに、なぜ庶民が守らねばならぬのだろう?関係性権力の脆弱さはここにある。

2015-06-17 12:37:38
shinshinohara @ShinShinohara

憲法が権力者を縛るのは、法的安定性の要諦だからだ。もし権力者が憲法を無視し、権力の好むままに法律を乱造すれば、結果として権力者の気分で国が支配されるようになり、法的安定性が揺らぎ、法律を守って行動することがバカバカしくなる。反乱が起きるのは、権力が法治を否定することから始まる。

2015-06-17 12:38:27
shinshinohara @ShinShinohara

日本でも「馬鹿」事件は起きてしまうのか。我々はどう行動すべきか。「馬鹿」は法治を損ない、国を亡ぼす。戦争で自分の国を守る前に、国が内部から瓦解するのである。今や国は法治によってのみ維持されていることを、失念してはいけない。法的安定性を損なうことは、国の自殺行為である。

2015-06-17 12:39:38

コメント

八代泰太 @3914kcorkcolc 2015年6月17日
そもそも日本国憲法が作られた頃の「戦争」と、現在の「戦争」じゃ想定されている武器の射程から威力まで全く違うのに、よくもまあ一回も改正しないまま70年も解釈だけで辻褄合わせてきたもんだし、未だに改正反対なんて言ってる人達の気が知れないね。鹿を指して馬というのは馬鹿だけど、当の鹿が鹿じゃない何かに成り果てた状況で、あれは鹿なんだと言い張り続けるのも馬鹿の所業だよ。
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星五98体の地方妖怪 PGERA @PGERA_RX 2015年6月17日
始皇帝の生きてた時代から既に治安や不満が相当くすぶってたんですが、それは・・・。法治というが、当時始皇帝は焚書や儒者等をぶっ殺しまくる事件を起こしたりしてる。元より秦はかなりの安定とは程遠い政治体系だったと思うが。
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星五98体の地方妖怪 PGERA @PGERA_RX 2015年6月17日
と、言うか悪いんだがこの理屈だと南北戦争時代無茶苦茶な強権を振るっていたリンカーンとかどうするんだ?彼は自分を批判する新聞を取り締まったりしたぞ?
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星五98体の地方妖怪 PGERA @PGERA_RX 2015年6月17日
後、法治を言うんでしたら議会で暴力行為を行いなんら反省の色も出さず居直り安部総理から「もう二度とやらないと約束できるか?」と言う問いに「二度と強行採決を行わないと約束できるか?」と逆に問うた岡田代表率いる民主党と言う「戦後民主主義最大の恥知らずのならず者共」をなぜ馬鹿と言わんのか私にはさっぱり分からん。国会議員でありながら暴力で自分の主張を通そうとする行為は議会と有権者への最大の侮辱ではないのか?
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右曲がり @right_curve 2015年6月17日
意見と述べた憲法学者が突然に失踪とか、そういう話は出さないんですか? 意見を違えた与党議員が不審死とか、そういう話は出てこないんですか?
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右曲がり @right_curve 2015年6月17日
上の方の「意見」は「違憲」でした 大変失礼
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絶望党員 @zetuboutouin 2015年6月18日
立憲主義を排して、何でもかんでも「違憲合法」で押し通しても「法治主義」であることは間違いない。まとめに出てきた、「秦」は立憲主義ではなったし、憲法もなかったけど、「法治主義」だった。「アベニクシー」はわかるけど、もう少し有効な批判しないと利敵行為になるよ。
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絶望党員 @zetuboutouin 2015年6月18日
そもそも、「馬鹿」のエピソードって、王都に劉邦の軍勢が迫って秦の滅亡が避けられなくなった時点での話なんだけどねえ。それを「趙高は「馬鹿」事件により、秦の法治主義を葬り去り、権力者の気分で左右される権力主義に転換させてしまった。このため、秦の人々は何に従うべきか、惑乱するようになった」と言うのは曲解も甚だしい。
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絶望党員 @zetuboutouin 2015年6月18日
「馬鹿」のエピソード時点ではすでに法治もクソもない極限状態に置かれていた。その状況下で、自分についてくる人間がどれくらいいるかを測るために趙高は「鹿を馬」と言って敵味方を峻別したのである。法治とはなにも関係ない。
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ちんぴら御坊 @ishin681023 2015年6月18日
いやん馬鹿~ん~ンフ~♪ そこはおへそなの~♪
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漫遊人 @manyujin 2015年6月18日
このまとめの主旨、権力者の主観的意思が、法の意思を超えるとき法治主義は崩壊するものと解釈します。一連の安保法案の混乱の原因は、高村氏の放言にある。
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Np @npnp1804 2015年6月18日
政府が自衛隊は「戦力」(鹿)ではなく「実力」(馬)なのでokでございます、と主張し続けてはや数十年、いったい我が国はいつ滅亡するのでしょうかねぇ…?百年後?二百年後?いやはや何とも気の長い話ですなぁ…
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欠点’s @weakpoints 2015年6月18日
現状では最高裁で違憲審査するという「法治」がある以上、また現状で合意点を見出す機運が無い以上、事態が行き着いてしまうまで他の選択肢が無いのです
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ロイミロ(6136########) @hsgwkyt 2015年6月18日
っていうか、法治の形に固執するからこそ「憲法の解釈の変更」をするのであって、法治にこだわらないなら「憲法?関係ないね」とばかりに自由な立法をするわなw
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smw @Shi_MeiWo 2015年6月18日
でも「ばか」に「馬鹿」は完全な当て字(中国古典を引くなら「ばろく」と読むはず)だよなぁ。そもそもの「鹿を指して馬と為す」は「権勢を持って道理を捻じ曲げる」って意味だし。
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Tokyo23hour @Tokyo23hour 2015年6月19日
秦が戦国時代最強になったのは、王とその周辺に権力を集中させることに成功したためで、その理由は法治だではありません。楚攻略時の秦王政(始皇帝)と王翦将軍再任のエピソードは、その時代には王権が法をしのいでいた(法治として不完全である)ことを示しています。実際に法家の思想では、法を立てるのみならず、その運用に注意して人治の隙を与えないことを重視します。このように法治と人治はデジタルに切り替わるものではないので、ここで崩壊というポイントはありません。それと礼による統治は人治です。
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🌈白石草 @hamemen 2015年6月28日
必読です。自公の議員さんにも、読ませてください。
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舶匝(はくそう @online_cheker) @online_checker 2015年8月17日
律令の絶対的法定刑主義の起源に触れる。
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Fukushima☢Watch @yuima21c 2015年10月7日
一押し!優れた法治主義論
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