派遣法改正案、出井智将『派遣新時代』と、出井氏との対話、その後の考察
この新書全体は、主に派遣労働者や、これから派遣で働くことになるかもしれない労働者を読者として想定して書かれており、これらの労働者にとって、法改正によって大きな改善が図られる、という方向性で論述が行われている。
2015-06-26 11:42:17「今回の派遣法改正は、従来の正社員保護のために派遣労働を規制するという考えから一転、派遣労働者の保護や正規労働者としての雇用への道筋を明確化したという意味で画期的なものとなります」(p.5)というように。
2015-06-26 11:43:41著者は直接雇用の依頼について、次のように評価している。 「「派遣先への直接雇用の依頼」が法律の条文として明確に定められることは、派遣労働の古語だけでなく、日本の雇用を考える上でも画期的なことです。・・派遣社員と正社員との間には、まさに断崖絶壁のような壁がふさがっていたのです。」続
2015-06-26 11:48:57p.22-24には、正社員として働きたいという希望をもつ派遣労働者の意向に沿う法改正として、 (1)直接雇用の依頼 (2)同じ業務に直接雇用の労働者を採用しようとする場合に、その業務に従事していた派遣労働者を雇用するよう努力する義務 (3)直接労働者を雇用する際の情報提供義務
2015-06-26 11:53:10が設けられることを積極的に評価している。 しかし、派遣先の立場にたって考えた場合、法改正されれば、3年という期間制限に縛られることなく、人を代えれば別の派遣労働者にその業務を任せることができる。その業務を行う者を直接雇用する必要性は薄れる。その点で、直接雇用の可能性は低くなる。
2015-06-26 11:55:07従来の専門26業務についても、同じ労働者に業務を行ってほしいという意向が特に派遣先企業にない場合には、従来の専門26業務という業務の縛りを特に気にすることなく、3年ごとに新たな派遣労働者に柔軟に業務を行ってもらうことができる。
2015-06-26 11:58:41だから、法改正は、3年の区切りで直接雇用の道を開く可能性もあるが、一方で、別の派遣労働者に容易に置き換えられる可能性も新たに生み出し、直接雇用の道をより狭くする可能性もある。後者の可能性について、著者は触れない。
2015-06-26 12:00:12派遣労働者にとって、法改正はこういう良い点がある、という論調の中では、「企業が派遣社員を受け入れる期間の上限を事実上なくす」というポイントはスルーせざるを得なかったのではないか。 派遣先企業にとって法改正のメリットは、同書では、ほとんど触れられていない。
2015-06-26 12:04:45言い換えれば、正社員雇用を望む派遣労働者にとっても、派遣で働き続けたい労働者にとっても、法改正はこんなメリットがあるんですよ、という政府答弁には、やはり、「ではなぜ、業務ごとの3年という期限を事実上撤廃するのか」という問いが重要だ、ということだろう。
2015-06-26 12:07:57@mu0283 あえて政府案の立場を説明するならば、「人単位にして派遣労働者が少なくとも最低3年は同じ職場で働けるようにすることが、キャリアップになる」という論理なのでしょう。JILPTの小野さんも。一方で、そのことが労働市場全体にもたらす影響を心配している(た)のが阿部先生。
2015-06-26 13:43:33@mu0283 有識者研で、製造業派遣の業界代表は「恒常的で熟練を要する業務は、常用労働者を雇い入れるのが合理的な企業行動だから、人単位にしても常用代替は起こらない」と発言しているのですが、マツダ事件の事実関係を見ると、どうにも説得力がない。
2015-06-26 13:48:59出井氏との対話
@mu0283 ご感想ありがとうございます。意図的に触れなかったわけではないですが、一般に派遣先が3年仕事してくれた人を直接雇用せずにわざわざ別の人と入れ替えるということが今の就業環境からは考えにくいと思ってます。ただ直接雇用とは言っても、あくまでも直接雇用だけなので、(続く)
2015-06-26 16:26:03@mu0283 本人が望む待遇かどうかは分かりません。あと派遣労働者はなんらかの就労リスクを持っている方も多いので直接雇用に応じない人もいます。そういった意味で直接雇用されていくのは全体の半分程度になるのではないかと思います。
2015-06-26 16:28:24@tomodei コメントありがとうございます。3年就業継続した派遣労働者の半数が直接雇用されていくというのは、高めの見積もりのように思うのですが、それは措くとして、3年間就業継続ができ、派遣先が直接雇用したいと思えるような人材を派遣元が失うのは、収益源を失うことになりませんか。
2015-06-26 18:16:23@mu0283 たしかに収入源を失うことになりますが、志を持って人材ビジネスを経営している会社はちゃんと直接雇用には前向きなところが多いです。朝起きることもままならなかった子たちが、何かを見出し卒業して行ってくれるのは、たとえようのない喜びです。しかしながら確かに収入源としか
2015-06-26 18:27:15@mu0283 見ない業者も散見され、非常に残念に思います。今回、派遣からのEXITが作られることは非常に大きな一歩だと考えています。
2015-06-26 18:29:00人材派遣会社がビジネスを維持・発展させていくことと、派遣労働者が次の道に進めること、企業が派遣を使い勝手よく使えることをそれぞれ可能にするには、「回転率」というと語弊があるかもしれませんが、労働者にはこれまで以上に派遣という働き方に入ってきてもらう、という方向になるでしょうか。
2015-06-26 18:32:47@mu0283 言い方は悪いかもしれませんが、そういう事だと思います。労働者が望む働く方に移行するための足がかりになるのが人材ビジネスに課せられた使命になると信じています。
2015-06-27 08:19:59@tomodei その場合に私が懸念しているのは、出井さんも新書の最後で指摘していらっしゃるように、「派遣を経て企業に新卒採用」という流れが大きくなることです。安定雇用を得られない若者に道が開ける側面もあるでしょうが、同時に、
2015-06-27 08:49:58@tomodei 現状のような新卒採用にかかる手間とコストとリスク(長期にわたる採用活動、内定辞退のリスク、ミスマッチ採用のリスク、早期離職のリスク等)を嫌って、企業が派遣の利用に切り替える流れが大きくなるのではないかと。それは若者にとって、安定雇用を得られない可能性を高めます。
2015-06-27 08:56:27