山本七平botまとめ/【1990年代の日本/潜在化する意識の転換⑤】「なるなる論」から「する論」へと「なる」危険性/大戦争を「した」のではなく、いつの間にか大戦争に「なっていた」戦前の日本

山本七平『1990年代の日本』/1990年代の日本/潜在化する意識の転換/なるなる論/235頁以降より抜粋引用。
1
山本七平bot @yamamoto7hei

①明治の最も大きな論争の一つといえば「征韓論」だが、反対者は決して 「征韓などをすればこうなる、こうなるとああなる」 という形で反対したわけではない。<『1990年代の日本』

2015-06-26 19:38:56
山本七平bot @yamamoto7hei

②「そんなことはすべきではない。今の日本が全力をあげて行わねばならぬことは国内の整備である」であって、まずこれを行うべきだの「する論」なのである。 そして大正に「なる論」的な傾向が強くなって来たとはいえ、必ずしも決定的ではなかった。

2015-06-26 20:08:57
山本七平bot @yamamoto7hei

③しかし、世界的な大恐慌で戦後の民主主義のパイロット・プラントが機能しなくなると、強力に出て来たのが軍部の「する論」、当時の言葉でいえば「断固行う」であり、これに対する反対は「なるなる論」なのである。

2015-06-26 20:38:59
山本七平bot @yamamoto7hei

④「中国との戦いは泥沼のようになる、すると英米は助ける。助ければこうなる、こうなるとああなる」であって、こういう人の見通しは、相当正確に当っている。 だが「では、どうするか」はない。 そうなると「なるなる論」はこの前に無力なつぶやきに過ぎなくなってしまう。

2015-06-26 21:08:57
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤それは結局「軍部があんなことをしていて、日本はどうなるか」であっても、軍部の暴走を止めるにはどうするか、でもなければ、日本の困窮を救うため、そうでなくこうすべきだでもなかった。

2015-06-26 21:39:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥一方「断固行う」の「する論」の軍部は、その見通しに関する限り「なるなる論者」より的確でなく「断じて行えば鬼神も避く」といった調子で、ここからは奇妙なことに「そうすればこうなる」の「なる論」になってしまう。

2015-06-26 22:08:56
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦そのため明確な目的もなく、到達すべき目標も明らかでなく、従ってそこへ到達する方法論などは全くなかった。 軍部は目標を明示し、そこへ至る方法論を示し、その方法論に基づいて組織を再編成するなどという事は、それを煩いまでにしつこく下級幹部に言いながら、首脳部には全然これがなかった。

2015-06-26 22:38:58
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧大戦争を「した」のでなく、いつの間にか大戦争に「なっていた」のである。

2015-06-26 23:08:59
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨「なるなる論」から「する論」へと、はっきりした意識の転換がないまま入っていき、表現だけは勇ましいがその後は「なる論」になる。 これはいわば「する論」に「なる」という形である方向へ進む事が、いかに危険かを示している。

2015-06-26 23:38:58