オカルト探偵あきつ丸 -深淵の呼び声-

竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬい二次のオカルト探偵あきつ丸シリーズです。 今回は民俗学方向から捕らえたお話。 是非ご堪能くださいませ! 続きを読む
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竹村京 @kyou_takemura

「あきつ丸どの、お疲れ様です。船長が呼んでいるので船橋までご足労願います」 「自分、腹が減ったでありますが」 これはいつものおちょくりではない。事実、数時間の単独航海と戦闘であきつ丸の体力はかなり消耗している。#落ちぬい二次

2015-07-03 00:18:49
竹村京 @kyou_takemura

「もう少し時間がかかります。レトルトでよろしければ後回しにさせますが」 「パック飯は嫌でありますなあ。仕方ない、船長殿にお呼ばれするであります」#落ちぬい二次

2015-07-03 00:20:02
竹村京 @kyou_takemura

不承不承といった様子で船内通路を進む。船橋では船長はじめ大勢の船員たちが盛大な拍手であきつ丸を迎えた。急に呼び出してこき使ったという認識は一応持っているだけに、あきつ丸はこの意外な出迎えに面食らったようだった。#落ちぬい二次

2015-07-03 00:22:30
竹村京 @kyou_takemura

「あんた、その、なんだ。ありがとうよ、目が覚めたよ」 宮濱船長が照れくさそうにあきつ丸に話しかける。 「はて。礼を言われる覚えなどないのでありますが?」#落ちぬい二次

2015-07-03 00:24:22
竹村京 @kyou_takemura

「とぼけるなよ、弱い者は弱いなりに戦う方法があるっての、ありゃあよかった」 「ああ、その事でありましたか」 ぽん、と手を叩く。 宮濱船長は一言ずつ確かめるように口を動かした。 「女々しい話だが、今じゃ俺たちは日陰者だっていじけてたんだ」#落ちぬい二次

2015-07-03 00:25:21
竹村京 @kyou_takemura

深海棲艦との戦争が始まってからは危険を冒してまで日本の領海を侵犯する外国の漁民や公船は激減した。おかげで比較的安全とされている海域での船団警備と救助が海保の主な仕事になっている。#落ちぬい二次

2015-07-03 00:27:15
竹村京 @kyou_takemura

ある意味では平和になったが、深海棲艦との戦争の主役である海軍の発言力は増大し、海保の存在感はどんどん小さくなっていった。そのせいでかつては海上警備の最前線を担っていた海保の気概は徐々に失われつつあった。#落ちぬい二次

2015-07-03 00:28:15
竹村京 @kyou_takemura

「だが、あんたの戦いを見てて思い知らされたよ。なあ、お前ら!」 船橋にいる隊員たちに呼びかけると、彼らも声を揃えて力強く同意した。その顔には戦いの前にはなかった活力が満ちていた。 「礼を言う。あんたのおかげで俺たちは海保の誇りを取り戻せた」#落ちぬい二次

2015-07-03 00:29:24
竹村京 @kyou_takemura

その言葉に、あきつ丸も満足そうに頷く。 「やはり船長殿もそう思うでありますか。弱い弱いと侮られていた方が、いざという時の騙し討ちがやりやすいと!」 「…………は?」#落ちぬい二次

2015-07-03 00:30:49
竹村京 @kyou_takemura

「気持ちの良いものでありますからな、馬鹿にしきっていた相手にしてやられた時の愕然とした顔を見るのは!」 はっはっは、と高らかに笑うあきつ丸。船員らはぽかんとしているが、やがてその表情は呆れ顔に変わってゆく。 彼らの心中を船長が一言で代弁した。#落ちぬい二次

2015-07-03 00:32:36
竹村京 @kyou_takemura

「あんた、いい性格してんな」 苦虫を噛み潰したような顔の男たちと上機嫌のあきつ丸を乗せ、やしまは一時の平穏を取り戻した海をゆったりと渡ってゆくのだった。#落ちぬい二次

2015-07-03 00:33:51

あとがき&おまけ

学者先生の向かう先

竹村京 @kyou_takemura

学者先生が向かっていたのは、きっと南緯47度9分 西経126度43分とか、グリーンランド沖にあるとされる北の深淵とか、あの辺りじゃないでしょうか。深海棲艦の大規模泊地の伝承が変形してルルイエとかゲル=ホーになったとか、あるような気がする #落ちぬい

2015-07-03 00:36:26

実はそうなんです

竹村京 @kyou_takemura

落ちぬい一周年が6/30で、なんと落ちぬい二次の一周年は7/17だったりする。たった17日後に二次を発表した早漏君がいるんですってよ奥様!#落ちぬい

2015-07-03 03:17:27
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