ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ10101517:ニチョーム・ウォー #7

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニイイーッ!」答えるかのように視界内へ走り込んで来たのはシルバーキーの合流相手だ。だが助けではない。KBAM!セントールの足元を飛来した炸裂スリケンが抉ると、鹿めいた半人半獣のバイオニンジャの巨体はバランスを崩して転倒した。「グワーッ!」騎乗ニンジャが転がり落ちる。 25

2015-07-06 16:36:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シルバーキーは一瞬の逡巡ののち、全力でその事故ポイントめがけ走り出した。転倒したセントールを追ってくるのは金色渦巻緑装束のニンジャだ。たった今地面に投げ倒されたディスカバリーと、どこか似ている。サブジュゲイター。「手こずらせおって!失敗遺伝子の寄せ集めどもが!」26

2015-07-06 16:38:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」サブジュゲイターに追随し、両道路脇建物群の屋根を跳びわたってくる没個性なニンジャ達!「イヤーッ!」後方にも接近ニンジャの声、走りながら振り返れば、やはり同様に没個性なニンジャ達が二人着地!そして真上の屋上!「死んだ、えらそうなやつ」奇怪な多眼ニンジャが顔を出す!27

2015-07-06 16:45:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おれ、すごくみえる、そして、テレパシー。だから、ぜったいに、にがさない」多眼ニンジャは笑った。「褒めてつかわします」サブジュゲイターは肩で笑い、起き上がれずにいるセントールを踏んで乗り越えると、身を起そうと呻くディスカバリーに近づいた。シルバーキーは走りながら手をかざした。28

2015-07-06 16:51:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その瞬間、シルバーキーの時間感覚が泥めいて鈍化した。ニンジャアドレナリンの過剰分泌に伴う主観時間の増大。彼はまず、後にして来たヤモトを思った。無事を祈るしかない。少なくともヨロシサンはディスカバリーを追い込む事に必死だ。サブジュゲイター。白熱するようなニューロン密度を感じる。29

2015-07-06 16:56:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『人々、起きろ!掲げろ!旗を掲げろ!お前の……旗を……』空の色が黒く消し飛び、レディオの音がエコーめいて遠ざかる。追い来るニンジャ達がスリケン投擲の姿勢。シルバーキーは口を動かす。叫ぶ。「ディスカバリー=サン……応えろ……俺に!」ディスカバリーが顔を上げた。彼は手をかざした。30

2015-07-06 16:59:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

距離は離れていた。だが二者の手は直線で繋がった。その瞬間、シルバーキーは己の肉体を残し、ディスカバリーのニューロンに衝突した。彼は人間のそれと似て非なる奇怪なニューロン組成に慄き、バリアめいた自我の壁で正気を守010100011砂漠の只中で、彼とディスカバリーは向かい合った。31

2015-07-06 17:03:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「手順はぶっつけ本番だ。うまく行くかどうかもわからねえ」シルバーキーは言った。ディスカバリーは肩をすくめた。「とっととやれよ。ダメならもう駄目って事だ」「ああ」シルバーキーは頷いた。「とにかく、うまくやるさ……」二者は互いを見た。砂漠は瞬時に遠ざかった。 32

2015-07-06 17:05:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シルバーキーはニチョーム全域の全ヨロシDNA所持者の位置を感じ取った。これがディスカバリーの能力だ。波乗りめいて、シルバーキーはその力に己のユメミル・ジツを重ね合わせる。ヨロシDNA所持者は現在、一人のニンジャによってニューロンを無線接続されている。サブジュゲイターに。 33

2015-07-06 17:09:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヨロシDNA所持者……クローンヤクザ……ハイタカ……シデムシ……ドラグーン……337を総攻撃にかかるヨロシサン側のニンジャ達……そしてサブジュゲイターと共に追い来た没個性ニンジャのうちの何人か……サブジュゲイターはそれらに干渉が可能。なんたる強大かつ支配的なジツであろう。 34

2015-07-06 17:13:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サブジュゲイターのニューロンの迷宮はディスカバリーのそれによく似ている。とても……似ている。シルバーキーは足元に不快なざわつきを感じる。見下ろせば脛から下あたりまでが「ヨロシサン」の無数のカタカナに喰われ、分解を始めている。ニューロン・リンクが長引けば命にかかわる。急がねば。35

2015-07-06 17:16:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

行き当たりばったりの攻撃を実行するにあたり、彼は松、竹、梅のプランを考えていた。最上の松は、サブジュゲイターのニューロンに相乗りし、少なくともニチョーム内の敵対ヨロシサン存在全てを戦闘不能にする事。竹は、サブジュゲイターを破壊しサヴァイヴァー・ドージョーの者らを復帰させる事。36

2015-07-06 17:20:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが、サブジュゲイターのニューロン迷宮はただそれだけで危険だった。ディスカバリーに重なり合うだけで相当なリスクを伴う。彼は松と竹のプランを放棄した。「だがよ」彼は呟いた。「梅で十分だ。任せてくれよな」シルバーキーはサブジュゲイターに攻撃をしかけた。「イヤーッ!」 37

2015-07-06 17:22:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「「「「「アババババーッ!」」」」」」シルバーキーを含めたその狭い地点の全てのニンジャが同時に叫び、痙攣した!「アバーッ!」多眼ニンジャのヴューが落下し、頭からアスファルトに叩きつけっられた。「アバーッ!アバーッ!」シルバーキーは悪魔払いの対象じみてその場で仰向けに撥ねた。38

2015-07-06 17:24:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバーッ!」ヤグラ337の地上階で戦闘するルイナーは、相手にしていた敵ニンジャが転倒痙攣するさまを見、作戦の成功を知った。おなじ視界内で、フォレスト・サワタリが壁に手を付き、嘔吐していた。39

2015-07-06 17:27:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバーッ!」キュアの足元でペイシェントが血と吐瀉物を吐いて転がった。「アナヤ!」キュアは不快をあらわにし、椅子から飛び離れた。「これは!」『ザリザリ……申し上げます!』社内専用回線がキュアにコールをかけた。『タマ・リバー上空をデモンストレーション輸送していた輸送機が……』40

2015-07-06 17:31:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何ですって!」『不測の事態です。カ、カンゼンタイが……休眠停止処理が施されていた筈の……それが……』「何ですって!」『スガモ・プ』ザリザリザリザリザリ……ブツン。「スガモ・プリズンがどうしたというの!」キュアは再接続要求を繰り返した。 41

2015-07-06 17:34:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「誰だ!何が!どうしてこんな事になったか―ッ!」キュアは地団駄を踏み、復帰した通信機に口汚く罵った。「貴様らッ!誰がセプクするのじゃッ!」ヨロシ・ジツのエラーはコンマ数秒、それもニチョーム区域内に収まる程度の規模であったが、カンゼンタイの強い感受性は図らずもその例外となった。42

2015-07-06 17:38:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが今我々が見届けるのはそうした枝葉のインシデントではない。ジツのエラーはすぐに過ぎた。血を吐きながら痙攣するのは今や二人。シルバーキーと、サブジュゲイターである。ディスカバリーは頭を振って起き上がった。そしてセントール。「ニイーッ……」器用に身を起こす。 43

2015-07-06 17:43:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「嫌な霧……晴れたぞ!」ディスカバリーは瞬きして、思わず笑顔になる。すぐにシルバーキーの窮状に思い至り、セントールに飛び乗った。「急げ!」「ニイイーッ!」「グワーッ!」セントールはペイシェントの頭を蹴り飛ばし、ギャロップしてシルバーキーに近づく。ディスカバリーが拾い上げる。44

2015-07-06 17:48:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバッ……梅だ……」抱えられたシルバーキーが呻いた。「少なくとも今ので……ヨロシ・ジツとやらは……当分は……」「よくやった。骨のある奴だ」ディスカバリーが答えた。彼は後方、ペイシェントに助け起こされるサブジュゲイターを振り返った。「よォ兄弟……お互いインガなもんだよな」45

2015-07-06 17:53:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニイーッ!」セントールが一度ブレーキをかけ、ヤモトを抱え上げた。「よかった。頼む」シルバーキーが言った。「だけど……こッから……アマクダリの……」彼は意識を失った。 46

2015-07-06 17:55:47