小説【パラレル☆ナイトメア】

小山慶一郎メイン。 ステージから落ちて意識を失って―。 目覚めたのは、車が空を飛ぶ平行世界≪パラレルワールド≫?! 続きを読む
0
前へ 1 2 ・・ 7 次へ
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 025/172 「…いい?本当に掴まっててね?」 「分かった!」 彼女は足元のペダルを踏んだ。 「うおぁっ!!」 “ボート”は小さく左右に揺れてバランスを保ちながら、 重力に反して跳び上がる。 俺は思わず、衝撃で突起を離した右手で、 彼女の身体に抱き付いた。

2015-07-09 06:24:35
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 026/172 「まっ、マジでごめんっ!」 「いい!危ないからそのままっ!!」 車体は外に飛び出す。 飛行車の隙間を縫って、上下左右に揺れながら、 ぐんぐんスピードを上げる―。 ふと足下を…見ちゃった… 「っ…!」 た、高っ!! 助けてください神様っ!!

2015-07-09 06:24:43
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 027/172 「うあぁあぁあぁ…」 自分でも退く位、情けない声が出た。 空は分厚い黒い雲に覆われて、昼か夜かも分からない。 その代わり、煤けて汚れた壁に、 派手なネオンサインが輝いている。 不健康な排気ガスの臭いが、 車体が揺れる度に肺に舞い込んで来る。

2015-07-09 06:24:52
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 028/172 ボートは、不安定なままどんどん加速する。 俺は彼女に抱き付いた腕に、無意識に力を入れていた。 「…やべっ」 彼女はそう呟くと、更にスピードを上げる。 「やっ、ちょっ…ごめんなさい!勘弁してぇ…」 「バカっ!捕まってもいいの?!」 彼女が叫ぶ。

2015-07-09 11:25:14
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 029/172 「後ろ見て、う・し・ろっ!」 俺は彼女に抱き付いた侭、恐る恐る振り向いた。 その瞬間。 キュィーン、という耳障りな音と共に、 光の線が俺の頬を掠めた。 「っ!」 ピリッと頬が痛む…撃たれた?! 背後には、同じような“ボート”の集団がいた。

2015-07-09 11:25:20
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 030/172 数は10台程。 どれも覆面を被った黒尽くめの男が二人乗りしている。 キュィーン… 彼女はブワッと車体を急降下させ、レーザーを避けた。 しかし、レーザーはどんどん放たれる。 彼女はそれを、急上昇と急降下を繰り返し避ける。 カーチェイスは続く。

2015-07-09 11:25:25
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 031/172 「きゃっ!」 彼女の小さな悲鳴の後、車体が急に傾いた。 「うわっ!」 振り落とされないよう、 俺は咄嗟に彼女の身体を支えながらハンドルを握る。 …いや俺操縦できないってば! ボートは更に蛇行する。 と、その時。 背後から凄まじい衝突音―。

2015-07-09 14:33:30
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 032/172 彼女が体勢を立て直し、またハンドルを握るから、 俺は慌ててそれを放した。 ゆっくり振り返る。 先程の黒尽くめの団体の前に、 巨大なネットが広がっていて、 蛇行していた彼らは、まるで魚みたいに、 そのネットに引っ掛かって、クラッシュしていた。

2015-07-09 14:33:39
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 033/172 『はーい、そこのフライボート、停まろっかぁ?』 ボワンとしたスピーカー越しの声。 「うっわ、面倒臭っ…」 彼女がスピードを落とすと、 すぐ隣に、ワゴン車みたいな真っ黒の飛行車が張り付く。 スモークが貼られた窓が開く。 「停まれっての。」

2015-07-09 14:33:46
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 034/172 え…?! 「まっすー?!」 まっすーが俺をちらりと見る。 「…馴れ馴れしく呼んでんじゃねぇクズ」 「やだっ!何でよ?!助けてよまっすー!」 「たった今助けてやっただろっ!!」 バコン!と音を立てて、ワゴン車の後部ドアが開いた。 「…乗れ。」

2015-07-09 14:33:51
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 035/172 「おいリエ、何でまだこいつといるんだよ?」 「うるっさいなぁ、兄貴には関係ないでしょっ!」 「兄貴?!」 えっ、俺はまっすーの妹と婚約してるの…はぇっ? 「どこ行こうとしてたんだよ、あんなスピードでっ!」 彼女は少し俯いて溜息を吐いた。

2015-07-09 15:56:31
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 036/172 「…兄貴が教えてくれた科学者んとこ。」 「は?」 「私にも事情があんのよっ!  このバカ男をその科学者のとこに捨てたら、  …兄貴の言う通りに、するから。」 まっすーは、俺と彼女の顔を交互に見る。 「…信用できない。」 何が何だか分からない。

2015-07-09 15:56:38
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 037/172 「ねぇまっすー!」 「だから!馴れ馴れし」 「俺、絶対彼女に手出さないから!」 鋭い視線。 「俺―別の世界のまっすーと…約束っ!  大事な約束があるんだよ!  兎に角その科学者に、急いで会いたいんだ!」 「…遂にクスリ始めたか。」 「ち、違う!」

2015-07-09 15:56:46
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 038/172 もうっ!1日に2回も薬物疑われるって、 一体全体どんな奴なんだよ、この世界の俺はっ! 「…本当だな?」 「えっ」 「本当に絶対手出すなよ。」 「もちろん!」 「その約束破ったら…」 まっすーは、俺の頬に冷たい何かを当てた。 「殺すかんね?」

2015-07-09 15:56:51
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 039/172 手にしていたナイフを仕舞いながら、まっすーが続ける。 「で、エリ。お前はあいつのとこに残れ。」 「嫌だよ!科学者と一緒に暮らすなんて!」 「それがこいつと一緒に行動できる条件。」 彼女は、暫く俯いて考える。 「…分かった、残ればいいんでしょ。」

2015-07-09 18:05:09
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 040/172 「えっ、残るの?!」 「いいのっ…お金持ちのイケメンらしいし?」 彼女はニッと微笑む。 「兄貴、ついでに安全なとこまで連れてってくんない?」 「残念だけど、俺そんなに暇じゃないの。」 ワゴン車が急加速する。 「この先の歓楽街抜けたとこまで。」

2015-07-09 18:05:14
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 041/172 「この辺は物騒だから…。」 まっすーは片手でハンドルを切る。 「帰りはここ通んじゃねぇぞ。」 「もう、本当過保護っ。」 重力から半分解放されたみたいな感覚と、 視界を通り過ぎて行く極彩色の派手な楼閣。 まるで夢の中にいるみたいな、非現実感。

2015-07-09 18:05:22
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 042/172 やがて車は、ゆっくりと空中で停止する。 「こっから先は自分で行けんだろ。」 「さんきゅ、兄貴。」 彼女がボートに乗って目配せするから、 俺も彼女の後ろに乗った。 「あと…これ、何かあった時の為に。」 まっすーが、小さな絆創膏を彼女に渡す。

2015-07-09 20:14:56
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 043/172 「…あぁ☆さっそく使うね。」 彼女はそれをくしゃくしゃ開封して、俺の頬に貼った。 「さ、しっかり掴まってね?」 「う、うん。」 ボートのエンジンが煙を噴いて、 乱暴に浮き上がった。 まっすーと視線が合う。 「絶対リエちゃんは俺が守るから。」

2015-07-09 20:15:11
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 044/172 「ん。」 無愛想にそれだけ言うと、 まっすーは直ぐに視線を逸らしてしまった。 「ありがと、まっすー!」 後部ドアが開くと、車体はまた濁った空気の中に放たれる。 「さぁっ、仕切り直して行くよ!掴まって☆」 気付くと、この浮遊感にも随分慣れた。

2015-07-09 20:15:21
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 045/172 まっすーのワゴン車が、どんどん背後に遠くなって、 先程より車の少ない空を、軽やかに飛んで行く。 「慶ちゃん…高いとこ苦手?」 「えっ、何で?」 「すっごい足が竦んでるから。」 彼女はクスクス笑う。 「リエちゃんのこと、尊敬する。」 「へ?」

2015-07-09 21:39:00
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 046/172 「俺より全然たくましい。」 「それって、褒めてる?それとも可愛げないって貶してる?」 「褒めてんだよ!この世界に来て、  リエちゃんいてくれて、本当に良かった。」 彼女は、ハンドルをぎゅっと握り直す。 「リエでいいよ。ちゃん付けなんて気味悪い。」

2015-07-09 21:39:07
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 047/172 「了解。改めてよろしく…リエ。」 車体はふわり、楼閣を見下ろす高さまで上昇する。 「ちょ、ちょっ!」 「下じゃなくて、上見て、上!」 恐る恐る目を開く。 「うあ…」 スモッグを抜けたそこに広がっていたのは、 柔らかいオレンジの朝焼けだった。

2015-07-09 21:39:14
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 048/172 「あっちゃ、朝飯買って来れば良かったかな。」 リエは空中でボートを停めて縁に腰掛けると、 俺に隣に座るように促す。 や、高い… 「大丈夫、落ちそうになったら私が支えるから。」 僅かに揺れるボートの上、 出来る限り下を見ないように座った。

2015-07-10 07:09:26
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 049/172 街中よりも幾分空気が美味しい。 朝焼けの下、遠く向こうに、 スモッグを纏った灰色の摩天楼が続いている。 「…すっごい世界だね、ここ。」 「そう?」 「うん。まずこんな風に空飛ぶなんて、夢みたい。」 「…普通だから、ピンと来ないけど。」

2015-07-10 07:09:36
前へ 1 2 ・・ 7 次へ