小説【パラレル☆ナイトメア】

小山慶一郎メイン。 ステージから落ちて意識を失って―。 目覚めたのは、車が空を飛ぶ平行世界≪パラレルワールド≫?! 続きを読む
0
前へ 1 2 3 ・・ 7 次へ
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 050/172 リエはポケットを探って、キャラメルをくれた。 口に放り込むと、ふわり甘味が弾けて、 舌の上で柔らかく溶けて広がる。 「んー♡美味しい!」 「…本当別人。慶ちゃん甘いもの苦手なのに。」 「えっ、そうなの?」 同じ“俺”でも別人なんだ、この世界では。

2015-07-10 07:09:44
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 051/172 「でも驚いた、リエがまっすーの妹なんて。」 「別に、血が繋がった兄弟じゃないよ。」 「そうなの?」 「同じスラムで育ったの。  ま、“兄弟同然”って言うのは妥当かな。」 「この世界のまっすーは、警官か何か?」 「自警団。…政府はアテにならないから。」

2015-07-10 10:59:40
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 052/172 どうやらこの世界は、相当無秩序みたい。 こんな鮮やかな朝焼けの下でも、 真っ黒なスモッグの中から、時々サイレンが鳴り響いて、 サーチライトのような光が漏れている。 ふと隣を見ると、リエは目を閉じて、 ひんやりした朝の空気を深呼吸していた。

2015-07-10 10:59:47
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 053/172 風が黒く長い髪をぱらぱらと揺らす。 白い頬は朝日の中で、一層透き通っていて、 長い睫毛に、光の粒が弾んで消えた。 「共通点は“女好き”ってとこかな?」 リエはふっと目を開くと、俺を見た。 「え?」 「今、ヤらしいこと考えながら見てたでしょ。」

2015-07-10 10:59:53
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 054/172 「っ違うよっ!」 「いいよ別に…この世界ではフィアンセなんだから。」 顔を俺の方に向けたまま目を閉じる。 華奢な肩、白い頬、桃色の唇―。 「…だ、駄目っ!!」 「何で?」 「まっすーと約束したしっ。」 リエは少し唇を尖らせて、立ち上がった。

2015-07-10 10:59:59
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 055/172 俺も、それに倣って立ち上がる。 「もう、休憩はお終い。」 エンジンが少し乱暴な音を立てて、 機体はまたスモッグの中へ突入した。 「きゃっ!!」 突然、鋭い光が横切る。 ―さっきと同じ、レーダー銃? また黒尽くめの集団が、俺達を追って来た。

2015-07-10 11:00:08
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 056/172 「何?!待ち伏せでもしてた訳っ?!」 リエはそう叫びながら、 彼らを振り切るように、上下左右に揺れながら飛ぶ。 「慶ちゃん掴まっててっ!」 「言われなくても掴まってるよっ!!」 機体は乱暴に180度方向を変えると、 一気にスピードを上げた。

2015-07-10 13:25:37
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 057/172 「もう!兄貴に送って貰った意味無いじゃん!」 目の前には、あのネオン鮮やかな繁華街。 ボートは楼閣の隙間を縫うように飛行する。 黒い集団は、リエの操縦のお陰で随分遠くなっていた。 それでもしつこく追って来る彼ら―。 …この世界の俺、何したんだよ!

2015-07-10 13:25:43
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 058/172 機体は大きく旋回して、巨大な日本式の赤い楼閣を回る。 「すっげー…何だよこの建物。」 昔アニメ映画で見たみたいな、複雑な作りに、 様々な装飾が施された壁面、瓦屋根。 えっ?! 「危ないっ!!」 目の前には白い壁と、そこに開いた大きな窓―。

2015-07-10 13:25:49
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 059/172 ガシャーン!! 色々な物が転がったり割れたりする音。 ゆっくり目を開くと、そこは派手な装飾が施された和室。 障子には美しい牡丹の花が咲き乱れ、金色の欄間が光る。 床の間には日本刀や壺、幾つかの鞠が飾られている。 「うわ、ちょっ…!」

2015-07-10 17:03:41
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 060/172 「あーあ…このビードロ気に入ってたのにぃ…」 部屋に飛び込んで来た紅い着物の背中が、 しょんぼり床に散らかった破片を拾う。 「あの…ごめんなさい。」 俺はその背中に言う。 「反物にお茶零れちゃってる…」 「あの、本っ当に…」 彼が振り向く。

2015-07-10 17:03:47
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 061/172 「いーよ、お気に入りの鞠のコレクション、無事だし♡」 …えぇ?! 「モノ多過ぎて片付けなきゃって思ってたから、  ちょうど良かったのかも。」 彼が顔の横でパチンと指を鳴らすと、 袴姿の男性が2人やって来た。 「この部屋、片付けといて☆」

2015-07-10 17:03:53
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 062/172 「て…手越?」 「へ?!…何で俺の苗字なんか知ってるの?」 彼は、薔薇と髑髏が描かれた豪華な打掛を翻して振り向いた。 「慶ちゃん知ってる人?」 「や、あの…元の世界で。」 「俺、苗字なんて使ってないんだけど…」 怪訝な顔のまま、長い廊下に出た。

2015-07-10 17:03:59
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 063/172 「ここが俺のメインの部屋…入って。」 そこは、先程よりも更に豪華で、 和洋折衷の時代劇みたいな洋室。 「お兄さん、この郭のNo.1?」 「まぁ、一応♡」 リエが茶色いふかふかのソファに座る。 「郭…って?」 「あぁ、えっと…遊郭のこと。」

2015-07-10 18:27:54
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 064/172 「えぇっ?!」 そんな…何て言うか…卑猥な… 「あ、お兄さん今ヤらしいこと考えたっ!」 気付くと、手越の茶色い目が、 凄まじい至近距離で俺の顔を覗き込んでいた。 「そんなエッチな店じゃないから。  お客さんと一緒にご飯食べて、歌を歌って…」

2015-07-10 18:28:01
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 065/172 「俺に会いに来てくれる人たちを、  ただ幸せにしてあげるだーけ♡」 …ナチュラルに会話にウインク挟んでくる辺り、 何か、ほぼそのままだな、手越は。 「あ、さっきのボートだけど…」 手越が壁を指さす。 「隣のピットで修理して貰ってるから。」

2015-07-10 18:28:06
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 066/172 「パーツ、随分傷んでたし。」 「そんな、悪いよ!」 リエが立ち上がろうとするのを、笑顔で制止する。 「俺、ボート趣味なんだ。  だからいっぱいパーツのスペアあるから♪」 袴姿の男性が、コーヒーを3つ運んでくる。 「さ、どうぞ。」

2015-07-10 18:28:11
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 067/172 コーヒーを飲みながら…素朴な疑問。 この手越が相手するのは…男?女? 「だから、そんな変なお店じゃないんだってばっ。」 視線をコーヒーに落としたまま、手越が呟く。 「へ?!」 「男性ないし女性と…ってお店ではありません!」 「す、すみません。」

2015-07-10 18:28:17
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 068/172 俺が知ってる以上に妖艶な手越を見ながら、コーヒーを一口。 …と、手越がはっと窓に目を向ける。 「お兄さん達、誰かに追われてる?」 「え?」 「何か空が騒がしい。」 リエが慌てて窓の外に身を乗り出して眺める。 「ったく、しつこいなあいつらっ!」

2015-07-10 20:49:08
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 069/172 「あ、あのっ!」 リエが慌てながら何かを伝えようとする。 「祐也、でいいよ♡」 「祐也っ!急いでボート…」 「まだ修理終わってないと思うけど…」 そんな会話をしてるうちに、 いくつかのエンジン音が近付いてくる。 「取り敢えず、そこに隠れて。」

2015-07-10 20:49:14
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 070/172 「…何の用です?」 「ここにこの男がいるだろっ!」 乱暴な男の声と、対照的に冷静で甘い手越の声。 俺とリエは、狭いクローゼットの中に隠れていた。 「探させてもらうぞ!」 「ちょっと!困るっ…自警団呼びますよ?」 沈黙の後、部屋は静かになった。

2015-07-10 20:49:21
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 071/172 「もう平気だよ。」 クローゼットの扉が開く。 木刀を持った手越が、ふわっと微笑んでウインクした。 「ありがと手越ー!助かった!!」 俺は思わず手越に抱き付く。 「うぁ、ちょ…そ、そりゃよかった」 手越は俺の腕を避けると、乱れた打掛を直した。

2015-07-10 20:49:28
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 072/172 「うあっ!SGエンジン!ライトも新しくなってる!!」 リエが興奮気味にボートを見ながら声を上げる。 「ごめんね、全部俺の中古品だけど…」 「全然っ!元のオンボロが嘘みたい!!」 リエがエンジンを吹かすと、 最初より幾分か柔らかい音が鳴った。

2015-07-10 22:04:10
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 073/172 「じゃ、次は遊びに来て?」 「ありがとね、手越。」 「だから…祐也でっ!」 ボートがピットからゆっくり空に出る。 少し耳を赤くしながら、手越が手を振るから、 俺は片手でリエに掴まって、片手を大きく振った。 幸い、黒い集団の姿は見えない。

2015-07-10 22:04:17
はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

#平行悪夢 074/172 「あれ?」 出発して数分、リエが小さく呟く。 「え、何?」 「あれ…兄貴の車だ。」 リエの指さす先に、黒いワゴン。 「やば、戻って来たの怒られる…。」 リエはボートのスピードを緩め、 ワゴンを避けるように大きく旋回する。 『…逃げんな。』

2015-07-10 22:04:25
前へ 1 2 3 ・・ 7 次へ