【時を越えた願い】

困難に恐れず立ち向かう姿が人々を惹きつける
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

吹雪「司令官、それは…」 瑠奈花「見ての通り、笹の木だ」 身長に似つかわしくない長い笹の木を抱えた瑠奈花が宿毛湾泊地の広場にやってきた。今日は毎年恒例、七夕祭りの日である 瑠奈花「季節に合った行事くらいやれって、上からのお達しだ。重…」

2015-07-09 12:41:17
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吹雪「まあいいじゃないですか」 瑠奈花「そうだ、こういった行事は楽しまないといけないな まあ、短冊に願い事を書いて飾るのと、少し食事が豪華になるくらいしかないがね」 広場に笹の木が設置された。まだ飾りがあるわけでもなく、少し貧相だ

2015-07-09 12:41:58
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瑠奈花「疲れた…吹雪、短冊を皆に配っておいてくれ。飾り付けは妖精に任せる。私は少し用があるのでな」 吹雪「え、用事って」 瑠奈花「夕方には戻る。頼んだぞ」 瑠奈花は大量の短冊を吹雪に押し付けると、さっさと行ってしまった

2015-07-09 12:42:53
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しばらくすると、フライトリバティーが飛んでいくのが見えた 吹雪「えっ、飛空艇使うんですか!?ほんとに帰ってくるのかなぁ」 吹雪は溜め息を漏らした。こういう特別な日だからこそ、瑠奈花と共に過ごしたいのだが

2015-07-09 12:43:44
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〜吹雪の部屋〜 吹雪「うーん…」 吹雪は机に突っ伏して悩んでいた。たった今短冊を配ってきたばかりなのだ。自分の願い事は何にしようか… 吹雪「別に深く考えるものじゃないけど…“司令官の助けになれますように”とか…なんか違うな…」 考えてたら、なんだか眠くなってきた

2015-07-09 12:44:54
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2015-07-09 12:45:23
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吹雪「…あれ?」 気がつくと吹雪は、草むらに倒れていた。さっきまでは泊地にいたはずなのに 吹雪「あ、あれ?ここどこだろう?」 周りは暗く、月明かりが吹雪の顔を照らしていた。ふと空を見ると、そこには綺麗な天の川が。

2015-07-09 12:45:55
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だがそれ以上に、吹雪には気にかかることがあった。吹雪が今いるのはどこかの山の高台らしいのだが、遠くを見ると何かが燃えている 吹雪「…もしかして、泊地が襲撃された!?急がなきゃ!」 こんなところで寝ている場合ではない!吹雪は高台から飛び降り、駆け出した

2015-07-09 12:46:52
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吹雪「これは!?」 燃えているのは家だった。何軒もの家が激しく燃え盛っている。泊地ではなく、どこかの村のようだ。吹雪には全く見覚えがない 吹雪「あれは…?」 吹雪の目の前を、一人の少年が歩いていた。子供は燃え盛る家の中に飛び込もうとしている

2015-07-09 12:47:35
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吹雪「ま、待って!危ないよ!」 吹雪はあわてて、少年を取り押さえた。まだ中学生くらいの少年だ 少年「離して!家の中に父さんと母さんがいるんだ!」 吹雪「ええっ!?」 吹雪は改めて燃える家を見た。奥の方で何かが蠢いているのが見える

2015-07-09 12:48:53
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少年「父さん!母さん!」 吹雪「違う!あれは人じゃない!」 奥に見える“何か”に吹雪は見覚えがあった。神話の魔物ボムを模した兵器。自我を持って動く爆弾のようなもの。あれは深海棲艦の兵器だ だとすれば、これはただの火災じゃない!

2015-07-09 12:49:50
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吹雪「虚空の風よ、非情の手をもって人の業を裁かん!ブリザラ!」 吹雪は魔法を唱え、氷塊がボムを直撃した。ボムは力を失ったのか、火災も鎮火した 少年「お姉ちゃん、一体…」 吹雪「簡単な魔法だよ…!?」 吹雪は海の方から誰かが歩いてくるのを見た。あの影は…

2015-07-09 12:50:48
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吹雪「深海棲艦だ!君、逃げよう!」 少年「で、でも!」 吹雪「いいから!」 吹雪は少年の手を掴み、高台の方へ逃げ出した。艤装がない今、魔法と素手だけで戦うには限界がある。しかもこの少年を守りながらでないといけないのだ

2015-07-09 12:52:06
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吹雪「はぁ…はぁ…ここまでくれば大丈夫…」 少年「父さん…母さん…」 少年は一人泣き崩れていた。彼の様子を見て吹雪は少し後悔した。もしかしたらこの子の両親も連れて行けたかもしれなかった 「吹雪!無事か!?」 吹雪「えっ?」

2015-07-09 12:52:58
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後ろからいきなり声をかけられて吹雪は驚く。そこには同じく中学生くらいの少年少女が3人。当然吹雪の知る顔ではない 吹雪「えっと…」 少年「みんな!」 「吹雪!いきなり村に戻るから心配したのよ」 少年「…うん、ごめん」

2015-07-09 12:53:48
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吹雪は理解した。彼らが「吹雪」と読んでいたのはこの少年のことらしい。少年もまた「吹雪」という名前なのだろう 「その姉ちゃん、誰だ?」 吹雪「えっ」 どうしよう、と吹雪は思った。この少年と自分が同じ名前なら混乱してしまうかもしれない 吹雪「えっと…春雨です」

2015-07-09 12:54:51
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春雨。とりあえずとっさに思い浮かんだ名前を述べた。なぜ春雨なのかは吹雪にもわからなかった 「ふーん」 少年「このお姉ちゃんが僕を助けてくれたんだ」 「そうなの。ありがとう!」 吹雪「い、いやそんな…それより、何があったの?」

2015-07-09 12:55:31
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「わかんねえよ、何がなんだか」 「わたし達、四人で山に遊びに行ってたの。今日は七夕だから」 吹雪「七夕…」 「そしたら、海の方から村に火の玉みたいなのが飛んでいくのが見えて…」 「それであの有様さ」

2015-07-09 12:56:18
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吹雪「多分深海棲艦が侵攻してきたんだ…大丈夫、すぐに艦娘が助けに来てくれるよ」 「シンカイ?かんむす?なんだそりゃ」 吹雪「え?えっと…」 少年「父さん…母さん…」 「どうしたの?」 少年は相変わらず泣いている。少女はその様子を見かねて彼に寄り添った

2015-07-09 12:58:07
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吹雪は彼らに事情を説明した 「じゃああんたは吹雪の両親を見捨てたのか!?」 吹雪「そんな!あの時は危なかったのよ!深海棲艦がすぐそこまで迫ってたから!」 吹雪は昂る少年たちをなだめるように言った 吹雪「いい?とにかく、近隣の司令部に連絡して、助けを求めるのよ!」

2015-07-09 12:58:49
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「さっきから何言ってんの?」 吹雪「もしかして艦娘を知らない?いやでも、あれだけ普及してるのにそんなことは…」 吹雪は混乱した。いくら子供とはいえ、今時艦娘を知らない人がいるものか 少年「僕、もう一回村に戻る!」 吹雪「ええ!?」

2015-07-09 12:59:57
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「無茶よ!このお姉さんの言う通りなら、村に危ない奴らがいるんでしょ!?」 「それに吹雪、お前の両親は…」 少年「…わかってる」 吹雪「え?」 少年は拳を握りしめて俯いた。吹雪には涙を必死に堪えているのがわかった

2015-07-09 13:01:10
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

少年「父さんも母さんも、多分もう死んじゃってると思う。だったらせめて…ちゃんと埋めてあげなきゃ」 吹雪は絶句した。気持ちはわかるが…こんな年端もいかない少年が人を、しかも両親を埋葬しようというのか しかも、おそらくは焼死体だ。吹雪ですらその光景を見るのは躊躇うだろう

2015-07-09 13:02:14
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少年「お姉ちゃんお願い!さっきの魔法みたいなのであいつらを足止めして!力を貸して!」 吹雪「う…」 「俺からも頼む」 別の少年も吹雪に頼んできた 「春雨の姉ちゃん、あいつらと戦えるんだろ?姉ちゃんが足止めしてる間に俺らで吹雪の両親を運び出すよ」

2015-07-09 13:03:29