【時を越えた願い】

困難に恐れず立ち向かう姿が人々を惹きつける
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「私からも!」 「ぼ、僕からもお願い!」 正直言って、稚拙すぎる案だ。子供故の発想というべきかもしれない。それに吹雪自身も、艤装無しで複数の敵と戦えるとは思えなかった。だが… 吹雪「…わかった。やってみる。でも私が逃げてって言ったらすぐに逃げるのよ」

2015-07-09 13:04:45
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少年の悲痛な叫びを聞いてしまった吹雪には、どうしても断ることはできなかった 少年「お姉ちゃん…ありがとう」 吹雪「ふふ。じゃあ、しっかり作戦を立てて行こうね。こっそり村に近づけるルートとかある?」 「それなら…」

2015-07-09 13:05:07
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2015-07-09 19:34:30
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

熱く燃え盛る村を、深海棲艦の尖兵がうろついていた。彼女らは、逃げ遅れた人々の死体を山積みにし、燃やしている。特に目的はなく、ただ殺戮を楽しんでいるだけのようだ 吹雪「無念の響き、嘆きの風を凍らせて、忘却の真実を語れ!ブリザガ!」 深海棲艦「!?」

2015-07-09 19:35:12
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突如、二人の深海棲艦が凍りつく!そしてすぐさま、物陰から一人の人影が飛び出し、凍った深海棲艦をバラバラに砕く! 「何者だ!」 吹雪「吹雪型一番艦、吹雪!罪のない人々を傷つける不届き者は、私が成敗します!」 吹雪はテアーズ・カジを構える!

2015-07-09 19:35:49
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吹雪の目の前には、四人の重巡級と、空母ヲ級に似た深海棲艦が立っている。おそらくあのヲ級が、敵の親玉だろう 「ふん、お前ら!奴を始末しろ!」 「お任せを」 四人の重巡が、鈍い輝きを放つ8inch連装砲を撃ちながら向かってきた。だが吹雪に砲撃は当たらない。瑠奈花の修行の賜物だ

2015-07-09 19:36:30
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吹雪は脳内に、憧れの艦娘の姿を思い浮かべ、彼女の様に拳を振るった 吹雪「いやぁーッ!」 手刀だ!流石に“彼女”のように、首を跳ね飛ばすまではいかなかったが、気絶させるには十分だ。迫り来る深海棲艦を次々と気絶させてゆく!

2015-07-09 19:37:26
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「ほう、やるな」 吹雪「あなたも痛い目に遭いたくないなら、ここから出ていきなさい!」 だがヲ級似の深海棲艦は不敵に笑う 「威勢のいい小娘よ、だがこれならどうだ」 敵は腰から、小さい筒のような物を抜く

2015-07-09 19:39:10
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吹雪「嘘…」 それは独特の起動音を発し、エメラルドの光を放つ、神秘の武器ライトセーバー。瑠奈花が持つあの剣と、まさに瓜二つだ 吹雪「なぜライトセーバーを…でも」 これは好機だ。今まで何度もライトセーバー使いの瑠奈花と鍛錬を続けてきた。培った力を試す機会がついにやってきたのだ

2015-07-09 19:40:03
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吹雪「望むところです!」 対ライトセーバーの格闘術ならお手の物、緑の光刃は吹雪には当たらない。だが吹雪の格闘も有効打を与えられずにいた。敵の利き腕を手刀で狙うも、すぐにかわされる 吹雪「痛っ!」 光刃が吹雪の腕を掠めた!すぐに吹雪は距離を取り、間合いを離す

2015-07-09 19:40:50
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瑠奈花のものとは太刀筋がやはり異なる。流石に鍛錬と同じとはいかない 吹雪(危なかった…もう少しずれてたら腕を斬られてた!) 「ここまで対等に戦うとは…この武器の存在は地上はおろか、深海にも知れ渡ってはいないはず…」 敵も困惑している様子だ。吹雪は当然その隙を見逃さない!

2015-07-09 19:41:29
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吹雪「そこだッ!」 「ぐおおっ!?」 すかさず吹雪は腹に蹴りを入れる!敵は大きく仰け反って膝をついた 吹雪「太刀筋が甘いですね。私の知り合いの方がより洗練されたライトセーバーの使い手ですよ」 「や、やはりこの武器を知っている…!?どこで漏洩したのだ…」

2015-07-09 19:42:20
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「…どうやら私の方が不利のようだ。今回は引かせてもらおうか」 吹雪「…。」 退却する深海棲艦を吹雪は黙って見送った。追撃してもいいが、今の目的は敵の殲滅ではない。それにまた攻めてきたとしても、今度は近くの司令部が守ってくれるはずだ

2015-07-09 19:43:01
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今はあの少年達が心配だ。彼らは無事だろうか… 吹雪は踵を返し、少年達の元へ戻った

2015-07-09 19:43:25
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2015-07-09 19:43:47
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少年「ここに埋めてあげよう」 埋葬場所に選んだのは、かの高台だった。村を見渡せるこの場所で、みんなを見守ってくれるように、との願いらしい 吹雪も協力して遺体を埋め、木の枝を線香代わりに立て、冥福を祈る。既に朝日が昇り、周りは明るくなり始めていた

2015-07-09 19:44:27
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少年「お姉ちゃん、助けてくれてありがとう」 吹雪「ううん、みんなも無事でよかった」 吹雪は少年を憂いた。この年にして、彼は孤児になってしまったのだ 少年「これからどうしよう…」 吹雪「大丈夫だよ」

2015-07-09 19:44:57
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少年「え?」 吹雪「きっとすぐにでも助けがやってくる。寂しいかもしれないけど、もう少し頑張って」 「姉ちゃんはどうすんだ?」 吹雪「みんなを守ってあげたいけど、私はそろそろ行かなきゃ」

2015-07-09 19:45:24
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吹雪「私の知り合いの言葉にこんなのがあるの。“過去でも未来でもなく今を見つめろ”。大変かもしれないけど、今生きているこの瞬間を大事にするの」 「難しいことはわかんないわ」 吹雪「そのうちわかるようになるよ。辛くて苦しい時でも、過去を振り返らないで」

2015-07-09 19:46:11
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吹雪「きっとご両親も、一生悲しんで生きることは望んでないから…ね?」 少年「…うん、わかった」 吹雪「じゃあ、気をつけて…さよなら」 少年「ばいばい!」 少年は精一杯の笑顔で吹雪に別れを告げた

2015-07-09 19:46:38
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2015-07-09 19:46:58
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子日「…ちゃん、吹雪ちゃん!」 吹雪「ふぇっ!?」 暁「あ、やっと起きたわ」 子日の呼びかけで目が覚めた。あのまま部屋で寝てしまったらしい。短冊は白紙のままだ 吹雪「夢…?最近妙にリアルな夢を見るなぁ…」

2015-07-09 19:47:31
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子日「吹雪ちゃん、もう夜だよ」 吹雪「えっ」 吹雪は窓の外を見て仰天した。もう真っ暗。時計は8:12を指している 吹雪「そんなぁ!願い事どうしよう!いいや、後で考える!」 吹雪は寝癖のついた頭をそのままに、無我夢中で広場へ駆け出した 暁「慌ただしいわねぇ…」

2015-07-09 19:48:12
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〜広場〜 瑠奈花「お、吹雪か。寝ていたそうだな」 広場についた吹雪を迎えたのは瑠奈花だ。広場はまだ賑わいを見せていた 吹雪「あれ、帰ってきたんですね」 瑠奈花「夕方には帰るって言っただろ」 瑠奈花も白紙の短冊を持っている。これから願いを書くのだろうか

2015-07-09 19:48:57
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吹雪「どこに行ってたんですか?」 瑠奈花「両親の墓参りだ。ちょうど七夕の日に亡くなったのでな…」 吹雪「そうでしたか…」 瑠奈花「フライトリバティーがあって助かった。あれなら日帰りでパッと行き来できるからな」

2015-07-09 19:49:47